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大腸がんの特徴と検査・治療――直腸がんを中心に解説

大腸がんの特徴と検査・治療――直腸がんを中心に解説
清松 知充 先生

国立国際医療センター 消化器外科診療部門長、大腸肛門外科診療科長

清松 知充 先生

目次
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大腸がんは発生する部位によって大きく“結腸がん”と“直腸がん”に分かれます。このうち、直腸がんは肛門(こうもん)付近に発生することから排便機能に影響が及ぶ可能性があります。さらに、直腸のある骨盤内には膀胱や子宮、前立腺などの排尿機能や性機能に関わる臓器が密集していることから、手術の難易度が高いとされています。今回は、直腸がんの手術を積極的に行う国立国際医療センター 大腸肛門外科 診療科長の清松 知充(きよまつ ともみち)先生に、直腸がんを中心に、大腸がん・直腸がんの概要、注意すべき症状、検査、治療についてお話を伺いました。

大腸は、小腸からつながりお腹の中をぐるりと大きく回る全長2mほどの臓器で、大きく結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)と直腸に分かれます。このうち大腸がんは、上行結腸、S状結腸、直腸に発生しやすいといわれています。

イラスト:PIXTA/加工:メディカルノート
イラスト:PIXTA/加工:メディカルノート

大腸の主な役割は、小腸から送られてきた内容物から水分や電解質(塩分など)を吸収して、便を形成することです。小腸で栄養が吸収された内容物は、水分を多く含んだ液状で結腸に送られてきます。その後、結腸で水分や電解質が吸収されて、大腸のゴールにあたる直腸に進んでいくにつれてだんだんと固形の便が形成されていきます。便は直腸に到達すると、一時的に貯留されます。そして便がある程度たまると、その圧力によって便意を起こし、肛門を開放して排出するという高度な機能を備えています。

肛門の近くにがんができる“直腸がん”では、肛門を含めて腸管を切除しなければならない場合があり、そうなると“永久人工肛門(ストーマ)*”が必要となります。一方で、根治性(治る可能性)を維持しながら、肛門の機能を温存する手術ができるケースもあります。難易度の高い手術ではありますが、当科ではロボット支援手術を用いて可能な限り肛門温存を目指した直腸がんの手術を積極的に実施しています。

*永久人工肛門(ストーマ):肛門の代わりに腹部に生涯設置する便の排泄口。手術で腸管の一部をお腹の外に出して造設する。

直腸に近い部分のがんには、“肛門管がん”もあります。大腸がんの中でも患者さんの数は少なく、“扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん”というものと、直腸がんと同じ“腺がん”というものと2つのタイプがあります。扁平上皮がんは欧米に多いタイプのがんであり、その原因として子宮頸(しきゅうけい)がんなどと同じHPVウイルス(ヒトパピローマウイルス)が考えられています。

 同じ肛門管がんであってもタイプによってがんの性質が大きく異なり、治療法も変わってきます。扁平上皮がんは放射線がよく効くために化学放射線療法(放射線に抗がん薬を組み合わせた方法)のみで手術をせずとも完治する可能性が十分にあります。腺がんのタイプでは手術療法が基本となりますが、その場合でも術前の化学放射線療法でがんの縮小を図ることで、肛門を温存できるケースもあるため、専門的な観点から治療計画を立てることが重要です。当院はエイズ治療・研究開発センター(ACC)でHIV感染症の診療を行っている関係で、ウイルス感染に起因する肛門管がんに対して、その専門性を生かした診療にあたっています。

大腸がんが疑われたら、大腸内視鏡検査で病変の有無を確認し、腫瘍(しゅよう)が見つかった場合には組織を採取し、病理検査で確定診断を行います。また、大腸がんはがんの大きさにかかわらず、リンパ節や肺、肝臓などに転移する可能性があります。そのため大腸がんの診断後は、広い範囲を撮像できる造影CT検査(造影剤を使ったCT検査)で全身への転移の有無を速やかに確認することが重要です。

直腸がんでは、前述の大腸がんのような遠隔転移検索に加えて、骨盤内で直腸と近接する膀胱や子宮、前立腺などにがんが浸潤して(広がって)いないか、また側方リンパ節(骨盤内の横側にあるリンパ節)が腫大していないかなどを調べる精密検査も大切です。これにはCTよりも空間分離能*が高く詳細な情報を得られるMRI検査が有用です。

当院では、直腸がんの診断においてより精度の高い評価を目指すために、従来よりも薄いスライス厚で解像度の高い撮像ができる高性能のMRI装置を使用しています。従来のMRI検査では映し出せなかった異常も映し出すことができ、より詳細に骨盤内の全体像をつかむことができます。

*空間分離能:どれだけ小さいものまで描出できるかを示す能力

早期の大腸がんであれば内視鏡治療の適応となりますが、がんが深くに浸潤している場合には広がっている可能性のある腸管とリンパ節を取り除く手術を行います。なお、直腸がんの手術では、密接している臓器や肛門機能への影響を考慮しながら根治を目指す必要があり、手術の難易度がより高くなります。

直腸の長さは約20cmあり、上から直腸S状部、上部直腸、下部直腸という3つの部位に分かれ、上部直腸と下部直腸の間には“腹膜反転部”があります。

イラスト:PIXTA/加工:メディカルノート
イラスト:PIXTA/加工:メディカルノート

腹膜反転部より上の領域(直腸S状部・上部直腸)はお腹の中から見える範囲にありますが、下部直腸は骨盤内の筋肉や脂肪に埋もれていて、膀胱や子宮、前立腺などの臓器と極めて近接している領域です。通常がんをきれいに取り除くためには、がんの周りに“のりしろ(余白部分)”をつけて切除する必要がありますが、これらの臓器と密接している下部直腸では“のりしろ”を十分に確保することが困難です。一方で、取り残しによる局所再発(一度手術でがんを切除した場所に起こる再発)を防ぐためにむやみに切除範囲を広げてしまうと、排尿機能や性機能、肛門機能を失う恐れがあります。

そのため、こうしたケースでは術前に化学放射線療法を行い、がんをある程度小さくさせてから手術を行います。また、がんが小さくなることで、肛門をより温存しやすくなることにもつながります。このように、いかに臓器の機能を残しながら治る確率を高めるかが、直腸がんの治療では最も重要なポイントです。

なお、肛門を温存するか、永久人工肛門にするかは患者さん一人ひとりの考え方に合わせて決定することが大切です。以前は肛門ギリギリの直腸がんの場合には肛門ごと切除して永久人工肛門となる手術が主体でしたが、当院では化学放射線療法とロボット手術を組み合わせることで積極的に肛門温存を行っております。ただ肛門を温存できたとしても、直後は排便がかなり頻回になるなど手術前と同様の排便コントロールが難しくなることもあります。こうしたリスクを十分にご説明しご理解いただいたうえでもぜひ肛門を温存したいという考えの方もいれば、排便回数が増えるのであれば体力的にも永久人工肛門でよいという考えの方もいるでしょう。患者さんがそれぞれの病態に応じて納得して治療を受けられるよう、術後に想定し得る状況について十分に説明することを医師として心がけています。

大腸がんは早めに治療をすれば治る可能性が高いため、早期発見が重要です。毎年検診を受け、便潜血検査*で陽性だった方はしっかりと大腸内視鏡検査大腸カメラ)を受けるようにしましょう。また、血便が出たら放置せず、内視鏡検査を受けられる医療機関を受診することをおすすめします。特にもともとがある方は、出血を痔のせいだと思い込まず検査を受けることが大切です。

そのほか、便の通り道が狭くなることで排便に腹痛を伴ったり便が細くなったりするのは直腸がんによくみられる症状のため、こうした違和感がある場合は早めに医療機関を受診していただきたいと思います。

*便潜血検査:目では確認できないような便中のごく微量の血液を検出する検査。

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