ドライアイとは、目の表面が涙に守られなくなり、目の乾燥などのさまざまな症状を引き起こす病気です。日本では、約800万人以上もの人がドライアイにかかっているともいわれており、年々増加傾向にあります。
ドライアイは目が乾燥しやすい生活習慣のほか、加齢や病気など、さまざまな原因が折り重なって発症します。ドライアイを発症した場合、どのような治療が必要になるのでしょうか。
通常、目の表面は一定の厚みの涙(涙液層)で覆われており、目の乾燥を防いだり、目に酸素や栄養を供給したりする役割を担っています。しかし、何らかの原因で涙液層の安定性が低下すると、目の表面が涙液層で守られなくなります。
さらに、乾燥した目の表面が瞬きにより摩擦を受け、症状が悪化するという悪循環を生じるのです。
ドライアイの原因は多岐にわたり、さまざまな要因が折り重なって発症すると考えられています。そのため、病院でドライアイの治療を行う場合はドライアイの検査を行ったうえで、それぞれの患者に適した治療を行います。
治療方法は目薬を用いた点眼治療が中心となりますが、点眼治療で効果が不十分な場合は、外科治療を行うこともあります。また、まれにドライアイを引き起こす病気が原因となっていることもあり、そのような病気が見つかった場合は原因疾患の治療を行います。
ごく軽いドライアイであれば、市販の目薬でも症状が和らぐことがあります。市販の目薬は手軽に手に入れることができるため、まずは市販の目薬を試した後、効果がない場合に眼科を受診する人が多いともいわれています。
しかし、病院で検査を行わなければ正確な診断はできないため、より効果の高い治療を受けるためには早い段階で病院を受診することが大切です。
ドライアイの治療方法は、大きく分けて点眼治療、外科治療、生活習慣・環境の改善の3つがあります。病院では、まずドライアイの検査を行い、目の状態を確認したうえで治療方法を決定します。
ドライアイの診断基準は時代とともに変化しており、現在は2016年に作成された基準が用いられています(2020年7月時点)。現在は以下の2つに当てはまるものをドライアイと定義しています。
涙液層破壊時間(BUT)とは、瞬きをせず目を開けた状態で、涙の層が乱れるまでの時間のことです。BUT検査は目に染色液を少量点眼して、顕微鏡で涙液層の状態を観察することがよく行われます。強い痛みはなく外来で簡単に受けることができます。
点眼治療は目薬を用いた治療で、ドライアイ治療の中心となります。病院で処方されるもののほか市販薬としても手に入れることができますが、それぞれ成分や分量が異なります。
病院で処方される点眼薬には人工涙液、ヒアルロン酸製剤、ジクアホソルナトリウム、レバミピドなどがあります。それぞれ、涙の水分量を増やしたり、涙の成分にはたらきかけて分泌や産生を促したりする効果があります。
市販の目薬は涙に似せた成分や角膜を保護する成分が中心となります。
点眼治療では、効果のない重度のドライアイに対しては涙点プラグと呼ばれる器具を用いた外科治療を行うことがあります。
涙点プラグは、まぶたの縁にある涙の出口(涙点)を塞ぎ、涙の排出を遮断する治療です。涙の排出が遮断されることで目の表面に涙がたまりやすくなります。
ドライアイは、目が乾きやすい動作や環境によって症状が悪化することが分かっています。症状が軽い場合は、生活習慣や環境を変えるだけで症状が改善することもあります。
ドライアイを引き起こしやすい生活の例には以下のものがあります。
コンタクトレンズは、裸眼の状態に比べて目が乾きやすくなります。装着時間を短くしたり、眼鏡に変えたりするとよいでしょう。
仕事やネットゲームなどで画面を凝視していると、瞬きが減って目が乾きやすくなります。また、運転時も集中するため、瞬きが減りやすくなります。適度に休憩したり、意識的に瞬きをしたりするなどの工夫をするようにしましょう。
冬場や空調が効いた部屋は空気が乾燥して目が乾きやすくなります。加湿器を利用し、空調の風が直接当たらないような工夫をするとよいでしょう。
ドライアイの治療は目薬による治療が中心となり、重症で効果が不十分な場合は外科治療が検討されることもあります。ごく軽いドライアイは生活の改善や市販の目薬で改善が見られることもありますが、症状が長く続く場合は病院で専門的な治療を受けるようにしましょう。
順天堂大学 医学部 眼科学教室 准教授
順天堂大学 医学部 眼科学教室 准教授
日本眼科学会 会員日本角膜学会 会員日本眼炎症学会 会員
1981年5月、千葉県船橋市生まれ、茨城県取手市育ち。2006年順天堂大学医学部医学科卒業。2008年東京大学医学部附属病院初期臨床研修医終了。2012年順天堂大学大学院眼科学にて医学博士号ならびに日本眼科学会認定眼科専門医取得。2012年からハーバード大学医学部スケペンス眼研究所へ留学。留学中にはボストン大学経営学部Questrom School of BusinessでMBA取得。2019年11月より順天堂大学医学部附属病院眼科准教授として、臨床、研究、教育、経営に携わる。専門は、ドライアイ、角膜移植免疫、モバイルヘルス、IoMT、AI。趣味は硬式テニス。
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