概要
ファンコニ貧血とは、染色体に傷が入りやすいことを背景として、白血球・赤血球・血小板の減少、がんのなりやすさ、内臓の形態異常などを呈する疾患です。染色体に傷が入りやすくなる原因として、遺伝子異常が指摘されています。
難病に指定されており、日本での発症数は年間5~10人ほど、患者数は200名前後であると推定されています。
ファンコニ貧血では、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群、白血病などの血液疾患を発症することがあり、骨髄移植が行われることがあります。臓器のがんが発生した場合には、外科手術や化学療法などが行われます。
ファンコニ貧血の発症には遺伝も関与していることから、遺伝カウンセリングが必要になることもあります。
原因
ファンコニ貧血は、遺伝子に異常が生じることで発生します。細胞が分裂をする際には、遺伝子情報が含まれているDNAも同時に複製される必要がありますが、DNAが複製される段階で、誤ってDNAに傷が入ることがあります。通常、このような傷は修復されますが、ファンコニ貧血の原因となる遺伝子異常が存在すると、この修復がうまくいかなくなります。
DNAがうまく複製されずに傷がDNA上に残ると、アポトーシスと呼ばれる細胞死が誘導されたり、DNAに変異が生じて異常細胞の増殖が誘発されたりします。特に血液系の細胞は増殖が早い分、DNAに損傷が入る可能性も高いため、ファンコニ貧血では血液系に異常を認めるようになります。
症状
ファンコニ貧血では、血小板や赤血球、白血球が減少し、鼻血や皮下出血、倦怠感やめまいなどの貧血症状、感染症にかかりやすい、といった症状が現れます。
また、がんなどにかかりやすくなります。白血病の前段階である骨髄異形成症候群や白血病を発症することがあり、年齢を経るにつれて症状が進行します。血液系以外にも、特に20代以降では、舌がん、咽頭がん、食道がんなどを発症することがあります。
その他、皮膚の色素異常(カフェオレ斑や白斑など)、低身長、耳・眼・手の親指や骨格の異常がみられることがあります。泌尿器系、消化器系、心臓などの内臓に異常を認めたり、水頭症や小頭症などがみられたりすることもあります。
検査・診断
ファンコニ貧血では、血液検査を行い、血小板・赤血球・白血球が減少していることを確認します。血球系の減少を確認することは、重症度を分類するうえでも重要です。
その後、白血球の一種であるリンパ球を用いて、染色体断裂性試験などの特殊な検査を行います。この検査では、DNAの修復に関連した異常を確認します。
その他、遺伝子検査にて発症の原因となる遺伝子異常を確認することがあります。
治療
ファンコニ貧血では、血小板や赤血球の輸血、血球増殖因子(G-CSF)の投与、感染症罹患時の抗生物質・抗ウイルス薬・抗真菌薬の投与などが行われます。
血球減少に伴う症状が強い場合や支持療法では対処できない場合、骨髄異形成症候群や白血病を発症した場合には、骨髄移植が行われます。固形がんを発症した場合には、手術による摘出が治療の基本になります。
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