下垂体は、全身のホルモン分泌の司令塔の役割を果たす器官です。そこに腫瘍ができてホルモンが過剰になったり、低下したりする病気が「下垂体腺腫」です。神戸大学大学院医学研究科 糖尿病分泌内科学 准教授の高橋裕先生に、下垂体の働きと下垂体腺腫の概要についてお話を伺いました。
「下垂体」は、脳の視床下部からの指示のもと、環境の変化やストレスなど外界の影響に対して適切に対応するためのホルモンの調節をつかさどる臓器です。ホルモンは全身の血管を通して甲状腺・副腎・性腺はじめ全身の内分泌臓器に働きかけ、どの臓器からどのくらいの量のホルモンを出すかを指示します。下垂体は主に「前葉」と「後葉」に分けられます。前葉からは分泌されるホルモンは以下の6つです。
また後葉から分泌されるホルモンは2つあります。
ホルモンは上記のように身体の様々な機能を調節するだけではなく、心も調節しています。例えば、大人で成長ホルモンが足りなくなると気力や体力が衰え、やる気が失われることがわかっています。また、オキシトシンやプロラクチンには赤ちゃんをかわいがりたいというような母性本能や、人と人の信頼関係、癒しなどの心の状態とかかわっていることもわかっています。このほか、コルチゾールは、ストレスがかかったときに多く分泌されますが、身体だけではなく心のストレスに対する準備を促すことが知られており、ホルモンが心身に及ぼすさまざまな影響や臨床応用が注目を集めるようになってきています。
ホルモンを出す下垂体の前葉細胞の一部が腫瘍になる病気で、ほとんどは良性腫瘍です。ホルモンは必要なときに出て、そうでないときには出ないように適切に調節されなければなりませんが、腫瘍ができると過剰にホルモンが出されるようになったり、正常の前葉細胞が圧迫されてホルモン分泌が低下したりした結果、体にさまざまな不具合を起こします。また下垂体は脳のすぐ下にあるため、腫瘍が大きくなってしまうと視野障害やその他の脳神経の障害を起こすことがあります。非常にまれですが脳組織や他の臓器に転移する下垂体がんもあります。
下垂体腺腫の症状は、機能性下垂体腺腫の場合にそれぞれのホルモンが過剰につくられることによってあらわれる「下垂体ホルモン分泌過剰症」と、比較的大きな腫瘍によって下垂体が圧迫され他のホルモンの分泌が悪くなってあらわれる「下垂体機能低下症」があります。両者が同時に起こることもあります。
奈良県立医科大学 糖尿病・内分泌内科学講座 教授
奈良県立医科大学 糖尿病・内分泌内科学講座 教授
日本内科学会 総合内科専門医・内科指導医日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・内分泌代謝科指導医日本糖尿病学会 糖尿病専門医・糖尿病研修指導医
日本の間脳下垂体疾患診療、研究におけるフロントランナーの1人。厚労省班会議における間脳下垂体疾患診断ガイドライン作成に関わる一方、研究においては成長ホルモン分子異常症による低身長症、成人成長ホルモン分泌不全症における非アルコール性脂肪性肝炎、下垂体機能低下症の原因となる日本初の新たな疾患「抗PIT-1抗体症候群」など新しい疾患概念を次々と提唱してきた。内分泌代謝科の専門医師の育成にも尽力している。現在は分子生物学的アプローチ、疾患特異的iPS細胞を用いた下垂体腫瘍、機能低下症など下垂体疾患の原因解明と創薬を目指した研究を進めている。
高橋 裕 先生の所属医療機関
関連の医療相談が5件あります
食後の空腹感と疲労感、目のかすみぼやけ
3日ほど前から食後なのに1時間半から2時間後くらいに空腹感になります。また同時に疲労感、怠さが合わせて出ます。そのままにすると体が冷えていく感覚になり、ぼーっとする、無気力になります。 そして目のかすみとぼやけもあります。右のみです。 ネットで検索すると糖尿病と出てきました。私の父が糖尿病で今薬を飲んでいます。 私も糖尿病を発症したのでしょうか? ちなみに昨年出産をして、体重が14キロ程減りました。食べ物も甘いものが異常に欲しくなりチョコレートを食べると止まらなくなる、飲み物もお茶よりもジュースが飲みやすくなりよくジュースを飲んでしまいます。
多発性内分泌腫瘍症について
昨年の9月に尿管結石になり内視鏡で手術を受けました。その際に受けた血液検査で甲状腺に関する数値が異常なため詳しく調べるようにと内分泌科を紹介され受診していました。その後検査にて副甲状腺機能亢進症の診断を受けましたが。下垂体に関する数値?も調べることになりできもの(腫瘍)があるとのことで、多発性内分泌腫瘍症と診断を受けました。初めて聞いた病名です。 まずは副甲状腺を全て摘出する手術を受けるようにすすめられています。副甲状腺を切除しても、この病気は治らないのでしょうか?手術をしても良くならないのに手術を受けたほうがいいのでしょうか?身体に傷をつけるのが怖いというのが本音です。手術しなければどうなってしまうのかもわからず不安です。
骨盤のあたりが痛く、痛み止めが効いてきません
産後二ヶ月で、右の股関節が痛くなり整形外科を受診しました。レントゲンに異常はないためリハビリをして筋肉を柔らかくしていこうということになりました。リハビリの先生から骨盤が前後に傾いている、左の方が後ろに傾いているといわれ軽い運動を教えてもらいました。 2日間運動を子供をあやすついでにおこなっていましたら、3日目の朝に左の骨盤のあたりに激痛がありました。痛み止めを飲んでも効かず、子供の世話もありゆっくり休んでいられません。 何かよい体位やストレッチがあれば教えていただきたいです。
下垂体腺腫について
症状としては、 頻脈(100以上)、動悸、暑い(この時期でもストーブなしで半袖短パンで平気)、体重減少(4ヶ月で3kg)、抑うつ、微熱(37.5℃付近の継続)、頭痛、疲労感です。 11/18に内分泌内科にて( )内を基準値とし、 FT3 8.8(2.4~4.5) FT4 1.3(1.0~1.7) TSH 1.35(0.56~4.30) TSHレセプター抗体第三世代 1.4(0.0~1.9) 甲状腺のエコーでは、痛みがなく軽い甲状腺肥大を認めるものでした。 また、橋本病患者に見られる 抗サイログロブリン抗体 292(0~27) 抗ペルオキシダーゼ抗体 600(0~15) でした。 そして12/16に再度内分泌内科にて FT3 8.4(2.4~4.5) FT4 1.3(1.0~1.7) TSH 3.42(0.56~4.30) でした。その医師によると基準値を超えていたFT3が少し下がったので無痛性甲状腺炎とみていいでしょう みたいなことになって放置されていますが、治る気配はありません。 個人的に納得がいかず調べていると、下垂体腺腫のうちのTSH産生腫瘍に辿り着きました。 甲状腺機能亢進が軽度~中等度なのに、TSHは正常値~弱高度 びまん性甲状腺肥大 頭痛、視野障害や視力低下 がTSH産生腫瘍によくある事だと書いてあります。頭痛は2日に1度の高頻度でなっており、眼科には行ってませんが視力は確かに低下しており、視野もこめかみあたりの延長線上は遠近関係なく見えません。 人の視野は若干後ろまで見えると聞いたことあるのでもしかしたら少しずつ欠けて来てるのかな?とも思いました。 両耳側半盲だといきなり半分見えなくなるのでしょうか?それとも外側から徐々に欠けくるのですか? また、FT4は基準値内で基準値のなかではやや高値ではありますが、このFT4の数値とFT3高値の場合でもTSH産生腫瘍の可能性はあるのでしょうか? MRI以外の状態がほとんど全て当てはまるので気になりました。 2月にまた検査がありますがおそらく無痛性甲状腺炎で経過観察になる気がしてます。その場合はこちらから下垂体腺腫の可能性はないのかと聞いてもいいのですか? 下垂体腺腫の中でも症例が少なくて回答しにくいとは思いますがどうかよろしくお願いします。
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