概要
僧帽弁狭窄症とは、左心房と左心室の間にある“僧帽弁”と呼ばれる弁が十分に開かなくなる病気のことです。
私たちの心臓は、左心房・左心室・右心房・右心室という4つの部屋に分かれています。それぞれの部屋の出口には“弁”が存在し、血液が通るときに開いて通り終わるときに閉じ、逆流防止弁として機能しています。
左心房は、肺で新鮮な酸素を受け取った血液が心臓に戻ってくる部屋であり、左心室は左心房から流れ込んだ新鮮な酸素を持つ血液を全身に送り出すポンプ機能を担う部屋です。僧帽弁は、左心房から左心室に血液が送られるときに開き、左心室が血液を全身に送り出す際には閉じて左心房への逆流を防ぐはたらきがあります。
そのため、僧帽弁狭窄症を発症すると左心室に新鮮な酸素を持つ血液がうまく送られなくなるため、肺に血液がうっ滞*したり、重症な心不全を引き起こしたりすることがあります。
一方で、この病気は症状がないケースも多く、治療を必要としないケースも少なくありません。しかし、何らかの症状がある場合は薬物療法が必要となり、重症な場合は僧帽弁を人工弁に取り換えたり、開きにくくなった僧帽弁を広げるカテーテル治療が行われたりすることもあります。
*血液のうっ滞:静脈の血が正常に流れず、溜まっていること。うっ血とも呼ばれる。
原因
僧帽弁狭窄症は、左心房と左心室の間に存在する僧帽弁と周辺の組織が変性し、十分な開閉ができなくなることで発症する病気です。
僧帽弁狭窄症の多くは、幼少期のリウマチ熱が原因で発症します。リウマチ熱にかかると後遺症として心臓の弁の組織が変性し、発症から20年ほど経過してから僧帽弁狭窄症を引き起こすと考えられています。しかし、近年ではリウマチ熱の引き金となる溶連菌感染症に対する抗菌薬を用いた治療方法が確立しているためリウマチ熱の発症自体が減少しており、医療体制が整った国や地域では僧帽弁狭窄症の発症は少なくなっているのが現状です。
そのほか、加齢によって僧帽弁にカルシウムが沈着することによって発症するケースがあります。
症状
僧帽弁狭窄症を発症すると、左心房から左心室へ血液が流れにくくなるため、血液がうっ滞して左心房に負担がかかるようになります。その結果、心房細動と呼ばれる不整脈を引き起こすことがあります。
また、血液が左心室に流れず左心房にとどまり、さらには肺にもうっ滞が生じるため、いわゆる心不全が生じます。
自覚症状としては、体を動かすと息切れをしやすくなり、次第に着替えなどの軽い動作のみでも息苦しさを感じるようになります。さらに、肺の血圧が高くなるため細い血管が破裂して喀血(咳などとともに血液が排出される症状)がみられることもあります。
また、心房細動が生じた場合には血栓(血液の小さな塊)ができやすくなり、脳梗塞を引き起こすことがあるため注意が必要です。
検査・診断
僧帽弁狭窄症が疑われる場合は、以下のような検査が必要になります。
エコー検査
僧帽弁狭窄症の確定診断をするうえで必須の検査であり、重症度を判定して治療方針を決めるためにも必要な検査です。エコー検査では、僧帽弁の状態や開く範囲、左心室から左心房への血液の逆流の有無などを評価することが可能です。
心電図検査
僧帽弁狭窄症の合併症の1つである心房細動などの有無を調べるために心電図検査を行うのが一般的です。
また、心電図検査では心臓にかかっている負担の程度を評価することも可能です。
胸部X線検査(胸部レントゲン検査)
心臓の大きさや肺のうっ血の有無などを調べるために胸部レントゲン検査が行われます。
心臓カテーテル検査
血管にカテーテルと呼ばれる細い管を心臓まで通過させ、心臓内の圧力や機能などを調べる検査です。左心房から左心室への血液の流入量や左心室から左心房への逆流の程度などを評価することができます。
しかし、体への負担が大きな検査であるため、重度な症状があり手術を検討している場合など限定されたケースでのみ行われる検査です。
治療
僧帽弁狭窄症は、自覚症状がまったくないケースでは、悪化しないかどうか定期的な経過観察が必要になります。
一方で、中等症の段階から動くと息苦しいなどの症状が出始めることが多く、重症なケースでは重篤な心不全症状などが現れます。息切れなど何らかの症状がある場合は、重症度に応じて以下のような治療が必要になります。
薬物療法
息切れなどの症状がある場合は、脈を遅くして心臓への負担を軽減する作用のある薬を用いた薬物療法が行われます。また、心房細動を合併している場合は血栓が作られにくくする薬の内服が必要となります。
カテーテル治療
薬物療法のみでは十分な効果が得られない場合は、先端に風船のような構造が内蔵されたカテーテルを僧帽弁まで至らせ、膨らませて狭くなった僧帽弁を拡張する治療が行われます。
手術
カテーテル治療が困難な場合やカテーテル治療のみでは改善の見込みが低い場合などには、狭くなった僧帽弁を人工弁に置き換える手術が必要となります。
胸を大きく開いて行う手術となるため、年齢や全身状態によっては実施できないことも少なくありませんでしたが、最近では骨を切らずに小さな傷で行う低侵襲心臓手術(MICS)による弁置換手術をすることが可能になっています。
予防
僧帽弁狭窄症は、幼少期の溶連菌感染症などをしっかり治し切らずにリウマチ熱を発症することが主な原因であると考えられています。そのため、僧帽弁狭窄症を予防するには、溶連菌感染症などリウマチ熱を起こし得る感染症の治療をしっかり行うことが大切です。
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岡本 一真 先生 (静岡県)
国立大学法人 浜松医科大学 外科学第一講座 教授
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