年を重ねるとともに私たちの体には様々な不具合が生じます。老化が原因となる代表的な眼の疾患には「加齢黄斑変性」があり、欧米では成人の失明原因の第1位となっています。日本でも加齢黄斑変性の患者数は現在約70万人いると推定され、人口の高齢化などに伴い更なる増加が懸念されています。加齢黄斑変性とはどのような病気なのでしょうか。国際医療福祉大学病院眼科部長の森圭介先生にお話しいただきました。
「黄斑(おうはん)」とは、ものを見るための重要な視神経が集中している網膜の中心部分のことを指し、対象物の細かな部分や色を見分ける役割を果たしています。大きさは直径1.5mm~2mmほどと非常に小さく、キサントフィルという黄色の色素が局在しているため黄味を帯びています。
黄斑の中心には中心窩(ちゅうしんか)と呼ばれるくぼみがあり、見ているもの(固視点)の光はこの中心窩に当たります。
このように、黄斑とは網膜の中でも非常によい視力が得られる部分であり、黄斑以外の部分では十分な視力を得ることはできません。このため、黄斑に障害が生じると視力が急激に低下し、障害が進行すると失明に直結します。
欧米では成人の失明原因の第1位(2004年の調査結果より)を占めており、日本でも患者数は推定70万人といわれ、失明原因の第4位となっています。
加齢黄斑変性は早期と後期に分類されますが、この70万人というのは、後期加齢黄斑変性のことです。最新の疫学研究では、早期加齢黄斑変性は、50歳代の16%、60歳代の23%、70歳代では30%にみられ、欧米と大きな差は無くなってきています。実際の症状が現れる後期加齢黄斑変性は、まだ欧米に比べると50歳以上の人口の1%と少なめですが、今後の増加が危惧されています。
日本の加齢黄斑変性は「片眼性(へんがんせい:片眼だけに現れる)」の人が多いという特徴があるため、上記の「失明」には含まれない「片眼のみの失明」に至っている患者さんは多いと考えられます。また、片眼だけに症状が現れるため、気づきにくく受診・発見が遅れやすいことも、日本の加齢黄斑変性ならではの特徴です。
加齢黄斑変性の患者数は、人口の高齢化や食生活の欧米化などに伴い増加の一途を辿っており、まだあまり知られていませんが、日本においてもコモンディジーズ(一般的な病気)であるといえます。
網膜のすぐ下にある網膜色素上皮組織が、加齢に伴う老廃物(ドルーゼン)の蓄積を原因として萎縮し、網膜が障害される病気です。萎縮型加齢黄斑変性では、視力はゆっくりと時間をかけて低下していきます。萎縮型の加齢黄斑変性は、日本人にはあまり多くはみられません。
網膜色素上皮細胞の下には、脈絡膜(みゃくらくまく)という血管に富んだ組織があります。滲出型の加齢黄斑変性は、脈絡膜に異常な血管である「脈絡膜新生血管」が生じ、これが網膜色素上皮の下、もしくは網膜と網膜色素上皮の間に侵入して網膜を障害する病気です。日本人の加齢黄斑変性のほとんどは滲出型です。50歳以上の日本人の加齢黄斑変性の有病率は1.3%、滲出型加齢黄斑変性では1.2%となっています。
新生血管は正常な血管とは異なり、血管から血液成分が漏れ出たり、血管が破れることがあります。血液成分が漏出することによって網膜浮腫(網膜が腫れる)や、網膜下液(網膜の下に液体が溜まる)が起こり、網膜が正常に機能しなくなります。
また、新生血管が破れて出血が起こることにより急激に視力低下が起こることもあります。新生血管が生じる主な原因のひとつには、「喫煙」が挙げられます。これは、タバコの成分であるニコチンに、新生血管を発生させるサイトカインを分泌させる作用があるからです。喫煙と加齢黄斑変性の関係については、次の記事「加齢黄斑変性の原因-食の欧米化や喫煙習慣との関係」で詳しく解説していきます。
国際医療福祉大学 眼科教授
森 圭介 先生の所属医療機関
関連の医療相談が11件あります
細かい物を見ると目が痛い
3月9日に1回目の眼球の治療を受けて、4月6日に加齢黄斑変性 2回目の眼球注射をしてから治療した眼が細かい文字など、眼を酷使するような行動をすると眼の奥から痛みがあります。 治療している病院で瞳孔も開き診察しましたがドライアイによる痛みだと診断されました ドライアイの痛みと違うように感じています、毎回ではないのですが下を向くと痛みが出る時もあります 治療前よりも眩しく、横断歩道の白いラインも目が開けられないほど眩しく感じています 眼球注射1回目よりも眼球の形が正常に近い形まで回復していました 宜しくお願いします
ゆがんで見える
父が右目だけがゆがんで見える言っており、最初は気のせいかなとと思っていたようなのですが、症状が続くのでおかしいと思ったらしく眼科で検査を受けたら加齢黄斑変性と言われたそうです。 新しい血管をつくるのを防ぐため目に注射を行っているのですが完全には治らないと先生に言われたそうです。本当に治らないのでしょうか?それ以外でこれ以上悪くしないようにできることがあれば教えてください。よろしくお願いします。
中心性漿液性脈絡網膜症繰り返し発症による視力低下と今後の対処法
中心性漿液性脈絡網膜症を最初に発症したのは31歳ごろで、右の眼の中心部が見えなくなり会社の近くの眼科医で診察してもらったところ、中心性網膜症と診断され、失明はしないのであまり心配はいらないいわれました。カリクレンを処方されて3カ月くらいで回復しました。その後もデスクワークでPCを終日使って仕事をすることが続き中心性網膜症を繰り返し、仕事も慢性的にに忙しい時期が続いたため左目も同じ症状がでて繰り返し、当初からの眼科医では同じ薬を処方してくれました。50歳ごろ中国上海に赴任して5年間現地駐在中にも何回が発症しましたが、矯正視力左右1.0ぐらいには回復していました。63歳ごろから右目の中心部が見えにくくなり矯正視力0.1ぐらいとなり、左目の矯正視力も0.7となり、だんだん悪化している気がしています。発症当初からかかっている眼科医では昨年2月に眼底を見てもらった結果では特に悪化していることはないといわれていますが、このまま時間が経過すると失明するのではと不安です。もう少し詳しく網膜の状況を調べて現状を把握したいのですが、その方法など最新の情報をご教示いただきたくよろしくお願い致します。
昨日の偏頭痛後、視界に違和感
昨日、約8年ぶりに偏頭痛がきました。目がチカチカし、視界の半分が重なって見えなくなり、次第に頭痛になりました。少し吐き気はありましたが、軽く、吐かずとも治りました。現在は頭痛は無くなりましたが、視界が見えづらいような気がします。文字が重なっていたり、視界の一部が全く見えない訳ではありません。コンタクトをすると、遠くの景色をぼーっと見る分には問題ないですが、近くになると、うまく右目のピントが合わない感じがずっとします。(昨日痛かったのも右目の奥です) 病院を受診すべきでしょうか。また何科を受診すればいいでしょうか。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「加齢黄斑変性」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。