インタビュー

多嚢胞性卵巣症候群とは―卵子が卵巣から出られなくなる疾患

多嚢胞性卵巣症候群とは―卵子が卵巣から出られなくなる疾患
堤 治 先生

山王病院(東京都) 名誉病院長

堤 治 先生

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この記事の最終更新は2015年03月19日です。

多嚢胞性卵巣症候群という言葉を聞いたことのある方は少ないでしょう。一方、これは産婦人科医にとっては珍しいものではなく、月経不順や不妊を主訴に来院される方によくみられる疾患です。ここでは多嚢胞性卵巣症候群と診断された、もしくはその傾向があると言われた方が知っておくべき知識について解説します。山王病院院長 堤治先生にうかがいました。

多嚢胞性卵巣症候群は、卵巣の内側に小さな卵胞が連なって詰まり、大きく育った卵子が卵巣から飛び出せないという排卵障害です。欧米では多毛などの男性化、肥満などを伴う場合が多いとされますが、日本の女性では無月経や不妊の頻度が高く、多毛や肥満は比較的少ないという特徴があります。

自覚症状としては、以下が挙げられます。

  1. 無月経
  2. 月経が以前は順調だったのに現在は不規則
  3. 不妊
  4. にきびが多い
  5. やや毛深い
  6. 肥満
  7. 糖代謝異常

十分解明されているわけではありませんが、脳下垂体から分泌されるゴナドトロピンという卵巣を刺激するホルモンと卵巣から分泌される女性ホルモンのバランスが崩れ、結果として排卵が障害されます。欧米では男性ホルモン値が高い人、太り気味の人、血糖値が高めの人に多いと指摘されていますが、日本では必ずしもあてはまりません。

  1. ホルモン検査(ゴナドトロピン、男性ホルモン)
  2. 超音波検査

ホルモン検査では、ゴナドトロピンではFSHよりLHが高い場合、男性ホルモンが高い場合が診断の基準です。超音波検査では、卵巣内に小さな卵胞がたくさん見えるのが特徴です。

多嚢胞性卵巣症候群の治療には薬物療法と手術療法があり、まず薬物療法が行われます。また、妊娠希望の有無により治療は異なりますが、妊娠希望の有無にかかわらず、肥満がある場合は減量を勧めます。

低用量ピル(経口避妊薬)を用い定期的に出血(消退出血)をおこします。多毛やニキビに対しても有効な場合があります。

第一にクロミフェン療法という内服治療が行われます。約50%に排卵が見られます。

無効な場合、ゴナドトロピン療法といってFSH製剤を注射します。この場合、卵巣過剰刺激症候群という卵巣が腫れてしまう病態や、多胎妊娠が起きないように注意します。

手術療法としては「腹腔鏡下卵巣多孔術」という手術があります。卵巣表面の小さな卵胞に孔を開けるとゴナドトロピンのバランスがなおり、男性ホルモンレベルが低下し排卵機能が回復します。

男性因子など他の不妊因子がある場合、体外受精をすすめられることも多いと思います。体外受精では通常よりたくさんの卵子がとれることが多く、その中から良い受精卵を選んで移植することで、多くの方が妊娠できるといえます。

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