未破裂脳動脈瘤とは、一般的に“脳動脈瘤”といわれるコブ状のものが破裂していない状態を指し、脳動脈血管にできます。未破裂脳動脈瘤が破裂すると、いわゆる“くも膜下出血”を引き起こすため、病気の状態によっては治療が必要になる場合もあります。しかし、未破裂脳動脈瘤があっても、破裂していない状態では症状が現れないことが多く、健康診断や、たまたま受診した脳ドックで発見されることも少なくありません。
今回は、未破裂脳動脈瘤とはどのような病気であるのか、そして検査や治療の内容について、横須賀市立うわまち病院の廣田 暢夫先生にお話を伺いました。
脳動脈瘤とは、脳の中にある動脈の血管にできるコブのことを指し、さらにそのコブが破裂していないものを未破裂脳動脈瘤といいます。
その未破裂脳動脈瘤が破裂した状態が、くも膜下出血です。くも膜下出血を引き起こすと重い後遺症が残る可能性があるだけでなく、最悪の場合には生命に関わることもあるため、非常に危険な病気であるといえます。そのため、未破裂脳動脈瘤が発見された場合には、くも膜下出血を防ぐためにも、医師と相談のうえ患者さんに適した治療を行っていくことが大切です。
未破裂脳動脈瘤は、一般的に症状が現れないことが多く、くも膜下出血が起きて初めて気付かれる患者さんや、たまたま受けた健診で発見される患者さんも少なくありません。しかし、無症状とも言い切れず、まれに症状が現れることもあります。例を挙げると、未破裂脳動脈瘤が目の神経の近くにあり、その神経を圧迫した場合には目が見えにくいという症状が現れたり、コブが大きい場合には頭痛が現れたりすることもあります。
そのため、少しでも異変や気になる症状がある場合には、専門の医療機関を受診するようにしましょう。また、症状がない方でも、脳ドックなどを行っている医療機関で定期的に健康診断を受けることが望ましいでしょう。
未破裂脳動脈瘤には、比較的破裂する確率が低いと思われるものと、比較的破裂する確率が高く、くも膜下出血につながりやすいと考えられるものとがあります。破裂しやすいとされる未破裂脳動脈瘤は、大きさや形、コブのある場所で判断されます。
大きさは、7mmを超えると破裂率が上がるといわれており、カテーテル治療を含む外科的治療の判断基準の1つにもなっています。
形も破裂率に大きく関与しており、コブの上にさらに膨らみが現れることがあります。コブには、まん丸な形をしているものといびつな形をしているものとがあり、いびつな形をしたものは、まん丸なコブと比較して破裂率が高いことも知られています。
コブの場所も破裂率に関わっており、脳の中にある前交通動脈といわれる動脈と内頸動脈、後交通動脈の分岐部にある動脈瘤はほかの場所に比べて破裂率が高いことが分かっています。
これらの大きさや形、場所などの破裂率が上がる事項に該当しない場合は、経過観察をすすめる場合があります。
未破裂脳動脈瘤は先述したとおり、コブの大きさや形、場所により、破裂する危険性が変わるといわれています。そのため、患者さんの病態、そして大きくなりにくいと判断された場合には、経過観察をすすめる医師も少なくはないでしょう。
患者さんが納得して治療を進められることが大切ではありますが、1年に1回程度の経過観察で様子を見ながら過ごされている患者さんもいらっしゃいますので、医師とよく相談のうえ、患者さんごとに適した治療方針を決めていくことが望ましいでしょう。
未破裂脳動脈瘤が疑われる場合には、一般的にMRI(MRA)検査を行い、そのほか場合によってはCT検査を行うこともあります。
MRI検査は、CT検査と比較して組織や病変を識別しやすいという特徴があり、小さい病変まで見つけることができる検査です。また、痛みなどを伴うことなく、脳の断面図を得ることが可能です。
MRA検査とは、MRIの機械を用いて脳の血管を見る検査です。MRI検査と同時に検査をすることも可能で、脳動脈瘤や脳動静脈奇形を診断できるだけでなく、脳血管の閉塞や狭窄を調べることも可能です。
頭部CT検査は、脳動脈瘤や脳出血、脳梗塞などを確認するために行われる検査で、MRI検査と同様に脳の断面図を見ることが可能です。また、頭部CT検査に痛みなどはなく、時間を要することもありません。そのため、患者さんの状態を見て検査が必要であるかどうかを見極めて、必要であると判断された場合には検査項目として取り入れます。
3D-CTA検査は、造影剤を用いてCT検査を行う検査で、立体的な脳血管の構造を調べることが可能です。造影剤によって血管の正確な位置を確認することができるため、脳動脈瘤のサイズや形を細かく捉えることができます。
未破裂脳動脈瘤の治療は、破裂の危険性が低いと判断される場合には、患者さんに経過観察をおすすめする場合もあります。しかし、破裂の危険性があると考えられる場合や患者さんの希望がある場合には手術となり、大きく分けて脳動脈瘤クリッピング術と脳動脈瘤コイル塞栓術の2つを中心に治療を行います。当院では、未破裂脳動脈瘤が破裂する前に治療を行うことを前提として、患者さんのニーズ、そして医師から見た病気の状態を踏まえたうえで治療を行っていきます。
また、近年では、治療時間が短縮されることで体への負担を軽減できるため、フローダイバーターステントという道具を使用する治療法も注目されてきています。しかし、フローダイバーターステントを用いた治療は、経験を要するため、2020年1月現在では限られた施設でしか提供することができません。今後、治療の選択肢を増やすことで、より患者さんのニーズに沿った治療が提供できるように、フローダイバーターステントを用いた治療が提供できる体制を整えていきたいと思います。
未破裂脳動脈瘤があると診断された患者さんは、おそらく大変不安を感じることでしょう。患者さんの中には、「不安だからすぐに治療をしてほしい」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、医師から「今は経過観察でも大丈夫でしょう」と言われることもあるかと思います。その際には、患者さんお一人で治療方法を選択するのではなく、ぜひご家族やパートナーの方とも治療方法について相談していただきたいです。
すぐに治療することを選択されたとしても、未破裂脳動脈瘤における脳動脈瘤コイル塞栓術は、開頭する脳動脈瘤クリッピング術と比較して患者さんの体への負担が少ない治療ではあります。しかし、脳動脈瘤コイル塞栓術や脳動脈瘤クリッピング術の治療そのものが経過観察と比較して患者さんの体への負担になることは言うまでもありません。
そのため、破裂の危険性が低いと思われる患者さんについては、医師から「今は経過観察をしてみましょうか」と治療の提案をされることがあるでしょう。実際に、未破裂脳動脈瘤があっても、長年にわたり経過観察をされている患者さんがいらっしゃるのも事実です。
そのため、医師、そして患者さんを大切に思うご家族やパートナーとしっかりと話し合い、患者さんごとに適した治療方針を選択してください。
※未破裂脳動脈瘤に対する治療の詳細については、『未破裂脳動脈瘤における治療――カテーテル治療を中心に治療内容や治療の適応、横須賀市立うわまち病院の診療体制について解説』をご覧ください。
横須賀市立うわまち病院 第一脳神経外科 部長
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