足だけではなく手や頭、爪など全身に感染する恐れのある白癬菌は、私たちの生活する身近なところに存在しています。白癬菌にはいくつかの種類があり、それぞれ感染しやすい部位や症状も異なります。
最近では、『トリコフィトン・トンスランス』という頭部白癬(しらくも)や体部白癬(たむし・ぜにたむし)の原因となる白癬菌の感染が拡大しており、これらは『新型水虫』として警戒されています。
このようにあらゆる場所に生息し、感染の拡大が恐れられる白癬菌ですが、トリコフィトン・トンスランス以外にはどのような種類の白癬菌があるのでしょうか。また、実際に白癬(水虫)にかかった場合はどのように治療すればいいのでしょうか。
白癬菌の種類や白癬(水虫)の治療法について、引き続き、帝京大学医学部附属溝口病院皮膚科科長 清 佳浩先生にお話を伺いました。
記事1はこちら【足だけではない?白癬(水虫)の種類と症状 】
白癬(水虫)の原因となる白癬菌にはいくつかの種類があります。
人間に寄生する白癬菌を『ヒト好性菌』と呼び、ほとんどの白癬(水虫)の原因となる白癬菌はヒト好性菌です。また、ヒト好性菌に比べると圧倒的に数は少ないですが、白癬菌には動物に寄生する『動物好性菌』や土壌に寄生する『土壌好性菌』も存在します。
主に日本でみられる白癬菌を以下に挙げます。
トリコフィトン・ルブルムは、白癬(水虫)の原因となることが最も多い白癬菌です。
特に足白癬(足水虫)の場合は、トリコフィトン・ルブルムが原因で発症することがほとんどで、主に角質増殖型の足白癬(足水虫)を引き起こします。
トリコフィトン・ルブルムはヒト好性菌で、一度寄生されると再発しやすいという特徴があります。
トリコフィトン・ルブルム 提供:清先生
トリコフィトン・メンタグロフィテスは、トリコフィトン・ルブルムと合わせて足白癬(足水虫)の原因菌となる白癬菌です。主に小水疱型の足白癬(足水虫)を引き起こします。
近年、柔道やレスリングなど格闘技の競技者の間ではトリコフィトン・トンスランスという白癬菌による白癬(水虫)が増えています。
皮膚と皮膚の接触で感染するトリコフィトン・トンスランスは『新型水虫』と呼ばれることもあり、2000年頃から日本での感染報告が増え始めています。主に格闘技などの際、相手に接触しやすい頭部や顔、首、上半身から感染し、頭部白癬(しらくも)や体部白癬(たむし・ぜにたむし)を引き起こします。
また、トリコフィトン・トンスランスが感染しても症状はほとんど出ないことがあります。そのため、感染に気づかずに治療を行わないまま菌を運ぶ保菌者(キャリア)が多数いることが推測されています。
トリコフィトン・トンスランスは感染力が高く、完治しにくいことも特徴で、格闘技などの競技者から競技を行っている施設のスタッフ、家族へと、みるみるうちに広まって、最悪の場合は集団感染が起こるケースも珍しくありません。
ミクロスポルム・カニスは動物好性菌の一種で、主に犬や猫に住みついています。
人間がミクロスポルム・カニスの感染動物に触れると、ミクロスポルム・カニスが皮膚の毛穴に入り込み、やがて体部白癬(たむし・ぜにたむし)を引き起こします。
ミクロスポルム・カニスの感染が発覚した場合、感染動物も治療する必要があります。
白癬(水虫)の検査は、感染が疑われる部位の皮膚をメスやハサミで採って、顕微鏡で観察するという簡単な方法です。
白癬菌の有無は数分で判明し、白癬菌がみつかれば白癬(水虫)と診断されます。
白癬(水虫)に似た症状の皮膚疾患は多く、医師でも視診だけで正確に診断することは困難です。おかしいと思った場合は安易に自己診断せず、速やかに医療機関を受診し、医師のもとで検査・治療を行ってください。
白癬(水虫)に対しては、抗真菌薬による薬物治療が行われます。皮膚に寄生した白癬菌を死滅させることで、症状は治っていきます。用いられる抗真菌薬の形状は主に外用薬(液剤、クリーム、軟膏などの塗り薬)で、白癬(水虫)の種類によって薬を使い分けます。
たとえば、趾間型のようなジュクジュクとした白癬(水虫)や、角質増殖型のようなカサカサとした白癬(水虫)には軟膏、小水疱型のような水ぶくれがあって痒みを伴う白癬(水虫)にはクリームを使います。
また、重症化している場合や、外用薬が浸透しにくい爪白癬(爪水虫)は内服薬で治療します。
爪白癬(爪水虫)の患者さんのなかには、他の薬を服用しているために、内服薬での治療が難しい方もいらっしゃいます。
そのような爪白癬(爪水虫)の患者さんには、レーザー治療を行うことがあります。レーザーの熱で爪を温めることで白癬菌を蒸散させる治療法で、保険適用外ではありますが、麻酔も使用しない安全な治療として注目されています。
白癬(水虫)は、発疹などの症状が治まっても原因となる白癬菌が完全に死滅するまで治療を続けなければなりません。
たとえば足白癬(足水虫)の場合は、発疹がなくなっても約3か月は治療を続ける必要があります。
また、白癬(水虫)の患者さん本人を治療したからといって、白癬菌に感染したペットや、家族も治療を行わなければ再び感染が起こる可能性があります。
このため白癬(水虫)に一度かかった場合は自己判断で治療を中断せず、医師の指示にしたがって、根気強く治療を続けていくことが大切です。
市販薬にも様々な種類の白癬(水虫)の治療薬があるので、市販薬を使って自分で治療しようと考える患者さんが多くいらっしゃいます。
しかし市販薬で白癬(水虫)の完治を目指すのは非常に難しいと考えます。
その理由のひとつに、症状が治まると、まだ白癬菌が死滅していなくても、薬の使用を中断してしまう方が多い点が挙げられます。
また、白癬(水虫)ではないのに、白癬(水虫)だと自己判断して市販薬を使った結果、疾患が悪化するということもあります。
白癬(水虫)を確実に治すためには、やはり医師のもとで治療を続ける必要があるといえるでしょう。
白癬(水虫)であるとわかっていて、市販薬を購入する場合は、白癬(水虫)を治療する以外の作用がないものを選ぶことがポイントです。
『塗るとすっきりする』『痒みをとめる』など、白癬(水虫)の治療目的以外の薬も売られているので、購入の際には注意してください。
白癬(水虫)の患者さんのなかには、酢や緑茶などを使用した民間療法での治療を試みる方がいらっしゃいます。
しかし民間療法で白癬(水虫)が完治するという医学的な根拠はありませんし、場合によっては皮膚を傷めることもあります。
また抗菌力という点において、民間療法は抗真菌薬にはかなわないため、白癬(水虫)だとわかったら抗真菌薬によって治療していくのが望ましいといえます。
皮膚疾患のなかには、症状を軽くすることはできても完治が難しい病気があります。
しかし白癬(水虫)は、通常半年から一年程度の治療期間を要するものの、ほとんどの場合治すことができます。ですから、白癬(水虫)だと診断されたら「治る病気でよかった」と、ぜひ安心してください。
白癬(水虫)の治療で何よりも大切なことは。自分で判断して治療しようとしないことです。
白癬(水虫)が疑われる場合は、まず医師に診てもらい、適切な治療を受けましょう。繰り返しますが白癬(水虫)は治る病気ですから、患者さん自身が根気強く治療に臨むことが大切です。
帝京大学医学部附属溝口病院 客員教授
清 佳浩 先生の所属医療機関
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体が温かくなると痒くなり、身体が冷えたり乾燥していると痛み出します。寝ている時にかきむしっているみたいで(無意識です)一向に良くなりません。皮膚科に通って飲み薬と塗り薬ももらいましたが、使ってはいますが完全には治りません。かきむしっている所はかき餅の表面みたいにひび割れて、つゆが出てきたりしてます。
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去年からです。今、気がついたら足の親指の爪が半分黒っぽくて濁っている。何のサインなんでしょうか?
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