概要
皮膚そう痒症とは、皮膚にはっきりしとした発疹はないものの、かゆみ(瘙痒)のある状態を指します。しかしながら、痒みは引っ掻き行動を引き起こすため、二次的に掻き傷(掻破痕)や湿疹をつくったり、皮膚がごわごわして厚くなったり(苔癬化)することがあります。
これらの軽度な変化までを皮膚そう痒症の症状の一部として含むこともあります。かゆみが全身にあらわれる汎発性皮膚瘙痒症と、陰部など一部のみに症状がでる限局性皮膚瘙痒症に大きく分類されます。妊娠中の女性や高齢者に多いとされています。
原因
原因としては以下のものが代表的です。
汎発性皮膚瘙痒症の原因
- ドライスキン(乾燥肌)
- 代謝疾患(肝疾患、腎疾患など)
- 内分泌疾患(糖尿病、甲状腺機能異常症、痛風など)
- 悪性腫瘍
- 血液疾患(多血症、鉄欠乏性貧血など)
- 環境因子(機械的刺激、湿度など)
- 薬剤
- 寄生虫症
- 食品(魚介類、豚肉、そば、トマト・ほうれん草等の野菜類、チョコレートなど)
- 妊娠
- 心因性(ストレス、過労など)
限局性皮膚瘙痒症の原因
外陰部皮膚瘙痒症の原因
肛囲皮膚瘙痒症の原因
症状
皮膚に明らかな発疹がないにもかかわらず、強いかゆみがあることがこの病気の特徴です。かゆみによるひっかきで、二次的に掻破痕や軽度の湿疹、苔癬化を伴うこともあります。特に高齢者では、皮膚の水分や皮脂の分泌が少なくなるため、冬季に皮膚が乾燥してかゆみが起こることが多く(老人性瘙痒症)、就寝時に悪化しやすいとされています。
限局性皮膚瘙痒症があらわれる部位としては、陰部や肛門周囲が多いですが、耳、眼、鼻、頭部、手足などに症状が限局することもあります。
検査・診断
皮膚に目立った発疹がないにも関わらず、強いかゆみを訴えることから診断がつきます。皮膚そう痒症の多くは加齢や体質の変化によって起こる良性の病気です。しかしながら、なかには腎疾患、肝疾患、糖尿病、悪性腫瘍、薬剤などが原因となることもあります。医師の診察により、これらの病気が疑われる場合は、血液検査や画像検査など全身検索が必要となる場合もあります。
また陰部に生じた場合は寄生虫やカンジダ症などの検査が必要になることもあります。
治療
原因となる病気の治療
かゆみの原因となっている病気(糖尿病など)が存在する場合は、その治療が第一となります。原因となっている病気が改善することで、かゆみの症状も同時に改善されることがあります。
塗り薬での治療
皮膚そう痒症の多くはドライスキンが原因であり、乾燥を予防するための保湿剤の塗布は十分に行う必要があります。保湿剤にはヘパリン類似物質添加外用剤、尿素を含んだ軟膏、ワセリンなどさまざまな種類がありますが、症状のある皮膚の状態や、自身にあった保湿剤を使用することが重要です。またかゆみによる引っ掻きにより、二次的におきた湿疹に対しては部分的にステロイド剤を塗り治療していくことも必要になります。
飲み薬での治療
かゆみに対しては、かゆみの原因となるヒスタミンという物質を抑える抗ヒスタミン薬の内服が行われることが多いですが、効果は限定的です。また腎障害や肝障害のある患者さんのかゆみに対しては一部のκオピオイド受容体作動薬が用いられることがあります。
ストレスを避ける
皮膚そう痒症は精神的要因も大きく、ストレスや不安などで症状が悪化するとされています。これらを取り除くことで症状が緩和されることがあります。
生活環境の改善
日常生活においてお酒やコーヒー、香辛料などの過剰摂取を避ける、乾燥を避ける(特に冬季)、低刺激性の衣服着用など心がけることも重要です。また入浴については、皮膚の清潔を保つだけでなく、入浴時にタオルで強くこすらない、刺激の強い石鹸の使用を避けるなど生活環境の改善も治療の一部となります。
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