インタビュー

マイコプラズマ肺炎の出席停止期間は?―予後・予防接種・流行についての知識

マイコプラズマ肺炎の出席停止期間は?―予後・予防接種・流行についての知識
尾内 一信 先生

川崎医科大学 名誉教授、川崎医療福祉大学 医療福祉学部 子ども医療福祉学科 特任教授

尾内 一信 先生

この記事の最終更新は2015年11月11日です。

マイコプラズマが主に引き起こす感染症は、マイコプラズマ肺炎です。ここまでは、マイコプラズマ肺炎の症状や治療法を中心に、川崎医科大学小児科学教授の尾内一信先生にうかがいました。最後に、マイコプラズマ肺炎についての4つの疑問、出席停止期間・予後・予防接種・流行について尾内先生にお答えいただきました。

学校に行くとマイコプラズマはうつる可能性があります。現行の法律では出席停止期間は定められていませんし、教科書にも掲載されていません。分かっていることとしては短期間の接触では感染しないことです(濃厚な飛沫感染がポイントです、詳しくはこちらから)。有効な抗菌薬を使うと菌は概ね5日くらいで減るため、6日目からは学校に行ってよいという指導が行われています。

出席停止期間に定めがなく、教科書にも掲載されていない理由としては、マイコプラズマ肺炎がなかなか研究として成立しない点があります。マイコプラズマ肺炎は潜伏期間が長く非常にゆっくりと進む病気であるため、いつ発症したのかも分かりにくく、研究対象を定めることは難しくなります。どの程度の期間でどの程度の菌量になるのかも、なかなか分かりにくいといった特徴があります。

マイコプラズマ肺炎の予後はとても良好です。自然治癒する例も当然多くあります。もちろん、合併症を起こして重症になるケースもあるため、抗菌薬を用いて早期に治療を開始することはとても大切です。抗菌薬を使うメリットとしては、早く症状がよくなることに加え、治療することによって「うつさない」ということも挙げられます。

現状、マイコプラズマ肺炎には予防接種はありません。日常生活をしている中で、「かかる人はかかる」というのが特徴です。また、再感染もありえます。すなわち、一度かかった人がもう一度かかることもあるのです。このように終生免疫を獲得しない感染症という点も特徴です。

ただし、感染した人が抗菌薬を使わなくても自然によくなるケースや、一つ前の感染では肺炎だったのに今回の感染では気管支炎で済む(軽い症状で済む)といったケースもあります。このように、免疫が何年間かつくことはあるのですが、それがどれだけ持続するのかということは、現在よくわかっていません。

2011~2012年にかけて、マイコプラズマ肺炎が大流行したことがあります。その当時は非常に多くの人たちが感染し、感染者数は例年の10倍以上であったとも考えられています。その後いったんは流行がおさまりましたが、以前は4年に1回ほどのペースで大きな流行が起きていました。それを根拠に「4年ほどの免疫が残っているのではないか」と言われていたこともありました。もし4年ほど免疫が残っているという仮説が正しければ、2015~2016年にはマイコプラズマ肺炎がまた流行するかもしれません。実際2015年の7月頃からマイコプラズマ肺炎の流行の兆しが見られています。

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  • 川崎医科大学 名誉教授、川崎医療福祉大学 医療福祉学部 子ども医療福祉学科 特任教授

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  • 川崎医科大学 名誉教授、川崎医療福祉大学 医療福祉学部 子ども医療福祉学科 特任教授

    日本小児科学会 監事日本感染症学会 感染症専門医・指導医日本化学療法学会 抗菌化学療法指導医Global Pediatric Pulmonology Alliance(GPPA) 理事

    尾内 一信 先生

    山口大学医学部卒業後、米国オクラホマ州立大学医学部小児感染症科、国立呉病院母子医療センター等を経て、2022年より現職。感染症、アレルギー疾患を主体に診療を重ねながら、後進の指導にも力を注いでいる。

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