概要
腎結核とは、結核菌を原因として引き起こされる病気です。結核菌は肺に障害を来すことが多いですが、肺以外にも病変を形成することがあります。なかでも腎臓を含む泌尿器系は、リンパ節や胸膜に次いで頻度の高い臓器です。発展途上国でみることの多い結核ですが、先進国である日本でもまだまだ遷延している病気です。そのため、腎結核に遭遇することは日本においてもありえます。
腎臓は尿を形成する器官であり、解剖学的に尿管や膀胱ともつながっています。そのため腎結核を発症すると、尿を伝わり下部尿路系にも結核菌が広がることがあります。この場合、背部痛や血尿、頻尿など多岐に渡る泌尿器関連の症状をみます。
腎結核の治療では、抗結核薬の多剤併用療法が基本になります。腎結核を無治療のまま放置すると、治すことのできない腎障害を引き起こし、透析を余儀なくされることもありえます。こうした状況を避けるためにも、早期に腎結核を発見し治療を行うことが重要です。
原因
腎結核とは、結核菌を原因として引き起こされる病気です。結核は空気感染をする病気であり、第一の感染先としては肺であることが多いです。肺に感染した結核菌はその場で留まることもありますが、血液の流れに乗じて全身各臓器に運ばれることもあります。また過去の感染が再活性化して播種することもあります。具体的には脊椎に運ばれることで「脊椎カリエス」と呼ばれる病気が発症しますし、中枢神経に運ばれると「結核性髄膜炎」が生じます。これら病気と同じように、結核菌が血行性に腎臓へと運ばれることがあり、腎結核が発症します。
血行性病変を伴いやすいかどうかは、患者さん自身の免疫力などが大きく関与します。ステロイド使用中、エイズ、高齢、がんなどの状況においては血行感染を来しやすくなります。
腎臓は尿を産生する臓器ですが、尿管や膀胱など各種泌尿器系臓器と交通を持ちます。さらに腎臓を細かく観察すると皮質、腎盂、糸球体、間質などそれぞれの役割を担う部位に分けることができます。腎結核は、主に尿が産生されて排泄される通り道の腎盂、尿管、膀胱に感染することが多いですが、それ以外の場所にも感染を起こします。
症状
腎結核では、腎臓を含む泌尿器系に感染をしますが、最初は症状がないことが多いです。偶然、尿検査で膿尿や血尿を指摘されることがあります。進行すると、背部痛、側腹部痛、頻尿、血尿、残尿感、排尿時痛などが出ることがあります。
また、腎結核では、まれに結核でみるような全身症状も呈します。すなわち、体重減少や食欲不振、微熱などです。さらに肺結核が活動性を示しているときには、慢性的な咳や血痰なども随伴症状としてみることがあります。
検査・診断
腎結核は泌尿器系症状をもとにして疑われるため、尿検査が行われることになります。泌尿器感染を反映して尿の中に膿を認め、かつ結核菌を特別に探す染色法や培養検査、PCR法を行うことで腎結核を診断します。
肺を含めて腎臓以外にも結核が潜伏していることがあります。こうした状況をさらに評価するために、胸部単純レントゲン写真や喀痰・胃液検査、インターフェロン-γ遊離試験なども行われます。
腎結核では病気が進行することで、泌尿器系において狭窄などの形態学的な変化をみるようになります。これらの状況を把握するために、超音波エコー、CT、尿路造影検査などの画像検査が行われます。腎機能障害の程度を評価するための血液検査や蓄尿なども検討されます。
治療
腎結核の治療では抗結核薬が使用されます。一般的にイソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトールの4剤を中心に2か月ほどの初期治療を行い、その後イソニアジドとリファンピシンの併用を行います。
多剤を長期間併用するのは、結核菌が薬剤耐性を示さないように治療するためです。薬剤を中途半端に使用すると耐性を示すことになり、治りにくくする恐れがあります。そうした事態を避けるために、状況によっては医療従事者の前で薬剤を服用してもらうこともあります。
腎結核により腎機能障害が引き起こされていることがあります。腎機能を正確に把握しながら慎重に治療薬容量を調整することが重要です。腎結核を放置することで腎不全に陥り、透析を余儀なくされることもあります。こうした事態を避けるためにも、適切なタイミングで治療をおこなうことが大切です。
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