原因
血便はさまざまな病気によって引き起こされる症状です。その原因となる主な病気には以下のようなものがあります。
大腸憩室症
大腸の壁に小さな袋状のへこみ(憩室)ができる病気です。大腸壁が弱くなった部分に腸管内圧がかかり、大腸壁の一部が外側に膨らむことで形成されます。主な原因は、食物繊維不足や加齢による大腸機能の低下と考えられています。通常は無症状ですが、憩室が炎症を起こしたり出血したりすると、腹痛や血便が現れます。
虚血性大腸炎
大腸への血流が不足して大腸の粘膜に炎症が起こる病気です。発症すると突然の強い腹痛と下痢に続いて血便が生じるのが特徴です。高齢者や便秘になりやすい方のほか、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や血管の弾力性が低下する動脈硬化、心臓の病気のある方に多いといわれています。
痔
痔には痔核、裂肛、痔瘻など、いくつかの種類があります。排便時に肛門に過度な圧力がかかったり、固い便で粘膜が傷ついたりすることで出血を生じます。この出血が便の表面に付着することで血便を生じます。
大腸がん
大腸に発生する悪性腫瘍です。初期は自覚症状があまりありません。進行すると血便、便通異常(便秘や下痢)、腹痛などの症状が現れます。赤身肉や加工肉(ハムやソーセージなど)の過剰摂取、喫煙、飲酒、肥満などの生活習慣が発症リスクを高めると考えられています。また、最近は高齢化と食生活の欧米化により患者数が増加傾向にあります。
大腸ポリープ
大腸の粘膜の一部がイボのように盛り上がり、ポリープと呼ばれる病変ができる病気です。多くは無症状ですが、大きくなると血便、便通異常(便秘や下痢)、腹痛などの症状が現れることがあります。一部のポリープはがん化する可能性があるため、注意が必要です。発症リスクには、大腸がんと同様の要因が関与していると考えられており、高脂肪・低繊維の食生活、運動不足、肥満、喫煙、過度の飲酒などが挙げられます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃液の刺激によって胃や十二指腸の粘膜が深く傷つく病気です。粘膜が傷ついて深くえぐれた状態になることを潰瘍といいます。ピロリ菌感染、ストレス、喫煙、飲酒、鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)の常用などが原因となります。発症するとみぞおちの痛み、吐き気、胸やけなどの症状が現れ、進行すると吐血(血を吐く)や血便が生じます。主に黒色便として現れますが、大量出血時には鮮血便になることもあります。
炎症性腸疾患
腸に炎症が起こることにより、腹痛や下痢、血便などの消化器症状を繰り返す病気です。主に潰瘍性大腸炎とクローン病の2つを指します。消化器症状のほか倦怠感、体重減少、発熱などの全身症状を伴うことがあります。また、腸だけでなく関節や目、口、皮膚などにも炎症が起こることがあります。免疫機能の異常により、自分の腸管を攻撃することで発症すると考えられていますが、詳しい原因については分かっていません。遺伝や食生活の関連が指摘されています。
感染性胃腸炎
ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体が胃や腸に感染して炎症を引き起こす病気です。感染経路は主に経口感染で、病原体が付着した手で口を触ったり、汚染された食べ物や水を摂取したりすることで起こります。主な症状には、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、発熱などがあります。多くの場合はウイルスが原因で、この場合通常血便は見られません。しかし、細菌性の胃腸炎では血便が生じることがあります。特に、サルモネラ菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌、黄色ブドウ球菌などの感染では、腸壁に強い炎症が起こり、出血を伴うことがあります。
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