ししんけいえん

視神経炎

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概要

視神経炎とは、視力に対して重要な役割を担う視神経に炎症が生じる病気です。視神経炎の原因は明らかでない場合がある一方、多発性硬化症や抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎の一症状として発症することがあります。また、SLEやシェーグレン症候群などの自己免疫疾患や、ウイルスや梅毒などの感染症に関連して発症する場合もあります。

日本における視神経炎の発症は20〜30歳代に多く、成人人口10万人あたり2人弱であると報告されており、白人人種に比較して少ないと考えられています。視神経炎を発症すると視力低下や視野異常、目の痛みを自覚します。

視神経炎を引き起こす原因は多岐にわたるため長期的な予後は異なりますが、失明に至る危険性が高いものもあります。したがって、視神経炎は、適切な原因決定を行ったうえで治療介入を行うことが重要です。
 

原因

視神経は、眼球の後ろにあり、脳と眼球をつないでいる神経で、眼球から得られた視覚情報を脳へと伝達するにあたり重要な役割を果たしています。視神経の表面は、電気的な活動をより効果的に行うために、ミエリンと呼ばれる構造物で覆われています。

しかし、なんかしらの原因をきっかけとしてミエリンが破壊されてしまう場合があり、この現象を「脱髄」と呼びます。脱髄が生じると電気信号が伝わるスピードが著明に低下し、情報伝達機構に障害を認め、その結果、視神経に炎症が生じます。視神経炎には、特発性視神経炎、多発性硬化症に関連したもの、抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎などがあります。

特発性視神経炎は、炎症を起こす原因が明らかでないものを指します。20代以降の女性にみられることが多く、比較的急速な経過から視力障害が起こりますが、基本的には一過性です。しかし視神経炎を繰り返し、かつその他の神経症状を伴うことがあり、多発性硬化症という病気を発症することがあります。

抗アクアポリン4抗体と呼ばれる自己抗体が悪影響を示し視神経炎を来たしている場合、抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎を発症します。アクアポリン4は中枢神経系に多く存在しているため、抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎では視神経を中心とした神経性病変を生じます。その他、SLEやシェーグレン症候群などの自己免疫疾患を原因として視神経に炎症を生じます。また、ウイルスや梅毒などの感染症が原因となることもあります。
 

症状

視神経炎では、数日以内の比較的急速な経過から視力低下を来たします。視力低下に先立って目の痛みが起こることがありますが、視力低下を自覚したときには痛みは消失している場合もあります。痛みのタイプも激痛であったり、鈍痛であったり、目の奥が痛いなどさまざまです。

視神経炎では、視野の中心部が暗くて見えにくいという症状が出現します。また、赤や緑を中心として色の識別が困難、チラツキがわかりにくいといった症状がみられることもあります。
その他、原因疾患によっては、その原因疾患に付随した視覚障害以外の症状がみられます。たとえば、多発性硬化症であれば、手足の脱力やしびれ、神経症状が再発するといった特徴も伴います。抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎では、失明に至る危険性が高く、難知性のしゃっくりや吐き気、片麻痺、さらには呼吸循環機能といった生命維持の基本となる機能に障害がおよぶこともあります。多発性硬化症と比較すると神経障害の程度は強く、重篤な後遺症を来たしやすいことも知られています。 
 

検査・診断

視神経炎では、視力検査や視野検査、眼底検査といった眼科的な検査が重要です。視力検査では視力の低下を確認し、視野検査では視野の中心を重点とした視野障害を確認します。
眼底検査では、視神経の障害程度を予測することができ、その他の部位における炎症所見や出血を確認することも可能です。

その他、中心フリッカー値の想定も行います。この検査では光の点滅を観察し、チラツキを感じなくなる点滅頻度を確認しますが、視神経炎ではチラツキの感じ方が低下します。その他、対光反射の観察も行われます。さらに、経過や随伴症状をもとにして、原因疾患を特定するために、血液検査(各種自己抗体や感染症マーカーなど)、MRIなどの画像検査を適宜行います。
 

治療

視神経炎では、ステロイドパルスによる初期治療を検討します。しかし、視神経炎が特発性視神経炎として発症している場合、基本的には経過観察によって症状の改善が期待できます。
多発性硬化症や抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎においては、症状が増悪し、後遺症を残す可能性が伴うため、ステロイドパルス療法を第一選択として行います。

ステロイドパルス療法後は一定量のステロイドを継続しつつ、他の免疫抑制剤(たとえばアザチオプリンやシクロスポリンなど)を使用しながら減量を行います。しかし抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎ではステロイドパルス療法が奏功しないことも多く、血漿交換療法が選択されることもあります。

視神経炎には原因疾患がいくつかあり、長期的な予後も異なります。したがって、原因を見極めるとともに、適切なタイミングでの治療介入を行うことが重要です。