医師を志した理由は、ひとつではありません。さまざまな出来事が私を医師に導いたと思っています。なかでももっとも大きなきっかけは、中学生のときに行われた「和田心臓移植」でした。
それは、1968年に実施された札幌医科大学の和田寿郎教授(当時)による日本初となる心臓移植です。心臓移植が行われた札幌医科大学の近くに住んでいたこともあり、加熱する報道を見ながら「医療は心臓まで取り替えることができるんだ」と驚いたことを覚えています。当時の私にとっては非常に衝撃的な出来事で、自分も将来、何らかの形で医療に関わりたいと思うようになりました。
医療の中でも、漠然とではありますが、外科の道に進むことを決めていました。私を医師へと導いた心臓移植の影響もあり、手術を手がける外科の分野に惹かれたのです。
なかでも、医学部に進学後は、さまざまな授業を受けるうちに脳を専門にしたいと思うようになりました。脳の分野には治療が難しい病気が多く、医学の中でも学びがいがあると思ったのです。自分の医師人生をかけるにふさわしいという思いもあり、最終的に脳神経外科を専門にすることを決めました。
家族の中に医師はいませんでしたが、通っていた小学校の同級生のご両親の中には、医師が少なくありませんでした。その方たちの影響は少なからず受けていると思います。
たとえば、仲のよい同級生のお父さんは、消化器外科の医師でした。先生の娘さんと私が幼い頃から仲がよかったこともあり、勉強を見てくれるなど、非常に可愛がってくださったのです。医学部に進学後も、自分のところにきて学ぶよう進言してくださいました。実際に、当時先生が勤めていた病院に通いながら、手術技術を教わったこともあります。
知識や技術を学んだことはもちろんのこと、医師として技術を磨き続ける姿勢など、その先生には大きな影響を受けました。医師になり40年近くになりますが、今でも感謝している恩師のひとりといえるでしょう。
医師の仕事に従事するなかで、何よりも親の教えを大切にしてきました。それは、「困っている人を助けるために精一杯努力しなさい」というものです。実際に、私の親は周囲の人々を助けるために努力を惜しまない芯の強い人でした。そのような姿を見ながら、いつの間にか身についていた教えを、医師になってからも大切にしてきたのです。
医師として当たり前のことかもしれませんが、何よりも患者さんを救うために全力を尽くすことを心がけてきました。それは、自分が治療することができる患者さんだけにとどまりません。自分が治療することができない病気を抱えている場合には、手紙を書くなどの手間を惜しまず、専門とする先生に紹介するなど手を尽くすようにしています。
また、患者さんに対して、とにかく親切に接するようにしています。必要があれば、ときには患者さんを注意することもあります。「患者さんのために自分ができることであれば何でもする」という心構えで、常に患者さんと向き合うようにしています。
医師になってから、印象的な患者さんにたくさん出会いました。患者さんとの出会い一つひとつがかけがえのない財産であると思っています。
最近のエピソードをひとつご紹介します。病院のある集まりの際に、若い看護師さんに「先生、私のことを覚えていますか?」と聞かれました。話を聞くと、彼女は昔、私の患者だったというのです。良性の脳腫瘍で治療を受け、その治療がきっかけで看護師を志したと話してくれました。
驚くと同時に、非常に感動したことを覚えています。医師としての自分の行動や姿勢が、患者さんの人生に影響を与えたことを知り、胸が熱くなりました。
どんな仕事にも大変な面があると思います。それは医師も例外ではありません。実際に、医師を続けることには、エネルギーがかかると実感する日々です。しかし、私は医師を選んでよかったと思っていますし、大きなやりがいを感じています。
私たちが関わる患者さんたちは、基本的になんらかの病気を抱える方たちです。病気という困難を抱える方たちを、治療によって直接助けられるところにやりがいを感じながら医師を続けてきました。
今後は、後進の育成に努めながら、約40年間の医師人生で築いてきたネットワークを利用して、診療体制の構築などにも貢献していきたいと思っています。これからも、困っている人を助けるために精一杯の努力を惜しまず、医師人生に邁進していくつもりです。
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北海道大学病院
北海道大学大学院 医学研究院 内科系部門 内科学分野 血液内科学教室 教授
豊嶋 崇徳 先生
北海道大学大学院医学研究院 免疫・代謝内科学教室 教授、北海道大学病院 病院長、北海道大学 副学長
渥美 達也 先生
北海道大学大学院 医学研究院 循環病態内科学 教授、心不全低侵襲先進治療学 教授(兼任)、心不全遠隔医療開発学 教授(兼任)、心不全医薬連携開発学 教授(兼任)
安斉 俊久 先生
北海道大学病院 がん遺伝子診断部 部長・教授、同 腫瘍内科 (兼任)、同 腫瘍センター (副センター長、兼任)
木下 一郎 先生
北海道大学大学院医学研究科外科学講座 消化器外科学分野Ⅱ 教授、北海道大学病院 消化器外科Ⅱ 科長
平野 聡 先生
北海道大学病院 乳腺外科 教授
山下 啓子 先生
北海道大学 大学院医学研究院機能再生医学分野整形外科学教室 教授
岩崎 倫政 先生
北海道大学大学院医学研究院小児科学教室 教授
真部 淳 先生
北海道大学大学院医学研究科放射線医学分野 教授
白土 博樹 先生
北海道大学病院 病院長、北海道大学大学院医学研究院 腫瘍内科学教室 教授
秋田 弘俊 先生
北海道大学病院 婦人科 講師
小林 範子 先生
北海道大学大学院医学研究科眼科学分野 教授
石田 晋 先生
北海道大学 名誉教授、豊水総合メディカルクリニック 、一般社団法人北海道呼吸器疾患研究所
西村 正治 先生
北海道大学 大学院医学研究院内科学講座
辻野 一三 先生
北海道大学病院 国際医療部准教授 /臨床研究開発センター国際共同開発推進室長
ピーター・ シェーン 先生
北海道大学大学院医学研究院 心臓血管外科学教室 教授
若狭 哲 先生
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