横浜市立大学口腔外科で准教授を務める私が、同大学現教授の藤内祝先生に出会ったのは、北海道大学歯学部を卒業して名古屋大学口腔外科の入局試験を受けた1989年のことでした。
藤内先生は当時名古屋大学口腔外科の医局長で、入局後最初に配属された研究グループである腫瘍グループでは直属の上司にあたり、先生から様々な指導を受けました。
この名古屋大学での出会いから、2017年現在に至るまで、藤内先生とは30年近くに渡って一緒に働かせていただいています。
私は高校卒業後、歯科医師を目指して歯学部に入学しました。歯学部を卒業する直前になって、歯学部ではなかなか学ぶ機会のなかった口腔外科的な処置、手術など口腔外科領域でより幅広い知識を身につけたいと思いました。また高齢化社会を迎えるにあたり全身疾患などの知識を得ることも必要と考えました。そして口腔外科を学びたいと考えた私は名古屋大学口腔外科の門を叩きました。
藤内先生は昔から真面目で人あたりが良く、教えることが好きで部下を大切にする先生でした。名古屋大学在籍時から藤内先生の指導を受けた私は、口腔外科的な知識や技術のみならず、上司、同僚、部下への接し方、仲間への気遣いなど、「後進の育成」について学ぶことができました。そして、チームのリーダーでありながら独りよがりにならず、常にスタッフのことを考えながら行動する藤内先生に憧れ、「私自身も部下を指導する立場になったら、藤内先生のような上司になりたい」と思うようになりました。その後2001年から念願であったアメリカへ2年間留学し、帰国後も名古屋大学で臨床と研究に明け暮れていましたが、2006年のある日、転機が訪れます。
藤内先生が横浜市立大学口腔外科の教授になり、2006年名古屋から横浜へ移られましたが、2006年の年末になり藤内先生から「横浜市立大学口腔外科の准教授の席が空くので、こちらに来ないか」という連絡が届きました。当時は名古屋大学で講師を務めていましたが、じっくりと考えた末に横浜市立大学に行くことを決断し、2007年7月から横浜市立大学口腔外科准教授に就任しました。
私は口腔がんを専門にしていることから主に口腔がん患者の診療を行っていますが、「どうすれば命を救えるか?」「口腔がんの治療の質をいかに保つか?」「治療後のQOLの維持するための治療法は何か?」ということを考えて日々の診療にあたっています。
私が名古屋大学に入局した当時、藤内先生が進行口腔癌に対し臓器温存療法である超選択的動注化学放射線療法を開始したことから口腔がんの「切らずに治す」治療を知ることになりました。超選択的動注化学放射線療法は進行口腔癌に対する臓器温存療法として注目され、現在では日本各地から多くの患者さんが横浜市立大学口腔外科で治療を受けています。またこの治療法の有用性については国内・外の学会あるいは論文等で発表することによって日本のみならず世界各地から問い合わせ、手術・治療の見学に来るようになりました。藤内先生は口腔がんの「切らずに治す」治療の世界的なトップランナーとなっています。
以前進行舌癌の患者さんで、この動注化学放射線療法による治療を行ったものの、残念ながら遠隔転移で亡くなってしまった患者さんがいました。その後ご主人から、遠隔転移で亡くなったことは残念ですが、本人は「口の中を切らなかったことは本当によかった。」と仰っていたということを聞きました。どうしても「切りたくない」という患者さんは多く、切らずに口腔がんを治す方法としてこの治療法は患者さんにとって有効な治療法であると確信しました。
横浜市立大学で准教授の立場になった現在、後進が育っていくことに何よりも喜びを感じますが、これは私が若いころ藤内先生から指導を受けたことが影響していると思います。後進の先生方にはぜひ、自分の進みたい分野を見つけて、取り組んでいただきたいと思っています。
名古屋大学の口腔外科に入局した時は歯科医院の開業の道を考えたこともありましたが、気づけば今でも大学病院で臨床と研究、教育に携わっています。考えると不思議ではありますが、恩師との出会いが影響しているのは確かです。
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横浜市立大学附属病院
横浜市立大学 小児科学教室(発生成育小児医療学) 教授
伊藤 秀一 先生
横浜市立大学 形成外科学 教授
前川 二郎 先生
横浜市立大学 保健管理センター教授・センター長
小田原 俊成 先生
横浜市立大学大学院 医学研究科がん総合医科学主任教授、横浜市立大学附属病院 臨床腫瘍科・乳腺外科 部長
市川 靖史 先生
横浜市立大学附属病院 病院長
後藤 隆久 先生
横浜市立大学医学部 医学教育学主任教授
稲森 正彦 先生
大船中央病院 泌尿器科 医員、横浜市立大学 医学部 泌尿器科学 客員研究員
山中 弘行 先生
横浜市立大学附属病院 がんゲノム診断科
加藤 真吾 先生
横浜市立大学 消化器・腫瘍外科学
石部 敦士 先生
横浜市立大学附属病院 消化器・肝移植外科
秋山 浩利 先生
横浜市立大学 大学院 医学研究科 消化器・腫瘍外科学 教授
遠藤 格 先生
横浜市立大学 大学院 医学部 医学研究科 眼科学教室 准教授
西出 忠之 先生
公立大学法人 横浜市立大学 がん総合医科学 、横浜市立大学附属病院 臨床腫瘍科 准教授
小林 規俊 先生
横浜市立大学附属病院 脳神経外科 主任教授
山本 哲哉 先生
横浜市立大学 リハビリテーション科学教室 主任教授
中村 健 先生
横浜市立大学附属病院 一般外科 診療教授
利野 靖 先生
横浜市立脳卒中・神経脊椎センター 血管内治療センター長/脳血管内治療科担当部長
中居 康展 先生
横浜市立大学大学院医学研究科 神経内科学・脳卒中医学 主任教授、横浜市立大学附属病院 脳神経内科・脳卒中科 部長
田中 章景 先生
公立大学法人 横浜市立大学 医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学 主任教授、横浜市立大学附属病院 副病院長
田村 功一 先生
横浜市立大学附属病院 小児科 助教
魚住 梓 先生
横浜市立大学 総合診療医学 准教授
日下部 明彦 先生
横浜市立大学 学長、横浜市立大学 医学部皮膚科教授、横浜市立大学 大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学教授
相原 道子 先生
横浜市立大学附属病院 元児童精神科診療部長/准教授、開花館クリニック 副院長
竹内 直樹 先生
横浜市立大学医学部 医学教育学 講師
飯田 洋 先生
横浜市立大学医学部産婦人科学教室 主任教授
宮城 悦子 先生
横浜市立大学附属病院 集中治療部 部長
髙木 俊介 先生
横浜市立大学 放射線科 指導診療医
高野 祥子 先生
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