千葉県柏市にある“おおたかの森病院”は、柏市や流山市を中心に地域医療を支えている中核的な病院です。外科や整形外科、心臓血管外科、循環器内科など19の診療科を擁し、24時間365日体制で救急患者を受け入れている同院の役割や取り組みについて、病院長の松倉 聡先生に伺いました。
当院がこの場所で開院したのは2005年8月です。病院を立ち上げた際の病床数は133床でしたが、2008年にアネックス西棟を、2020年にはアネックス東棟を増設するなどし、現在は288床を擁しています(2024年6月時点)。院内の施設としては手術室が4室、血管造影室が2室、内視鏡センターが3室あり、2020年にはICU(集中治療室)もオープンするなど、機能を充実させ発展していきました。
当院があるおおたかの森地区は、住みたい街ランキングの上位に選ばれるほど暮らしやすい街で、子育て世代を中心に注目されています。医療の面から見たこの地域の特徴は、地域の病院がそれぞれ得意な分野に特化し、分業制のように協力し合って患者さんを診ていることです。
たとえば、当院では循環器や消化器に関する診療に強みがあるため、救急隊の方や周辺の病院から循環器疾患や消化器疾患の患者さんが紹介されることが多い一方で、当院からも近隣の病院が得意としている病気の患者さんを紹介しています。このように、それぞれの病院が得意な分野で専門性を高め、お互いに患者さんを紹介し合うことで、地域ぐるみで手厚い医療サービスを提供しています。
当院は二次救急病院に指定されており、東葛北部地域(松戸市・野田市・柏市・流山市・我孫子市)において、入院や手術を要する重症患者さんへの救急医療を担っています。手術室やICU、各種検査機器などの設備を整え一刻を争う病気の治療を迅速に対応していることから、年間の救急搬送件数は4,000件*を超えています。
中でも循環器の救急では、心筋梗塞に対する心臓カテーテル治療などの緊急手術に対して24時間体制で対応が可能です。消化器の救急も同様で、吐血や下血など急な消化管出血に対する緊急内視鏡検査を24時間行うことができるように体制を整えています。
また大動脈瘤破裂などに対しての緊急手術も行っており、ときに県外からもドクターヘリなどで患者さんが搬送されてくることがあります。こういったことから当院の役割の重要性を認識し、日々使命感をもって救急医療に対応しています。
*2023年1~12月救急搬送件数実績:4,019件
当院の循環器内科では、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患や不整脈、閉塞性動脈硬化症など、さまざまな循環器疾患を診療しています。特に虚血性心疾患に対するカテーテル治療を得意としており、難易度の高い症例にも積極的に取り組んでいます。
また、当院は日本循環器学会の左心耳閉鎖システム認定施設のため、“経皮的左心耳閉鎖術(WATCHMAN)”を実施できることも特徴です。経皮的左心耳閉鎖術は抗凝固薬を服用できない心房細動患者さんに対する治療の1つで、県内では当院を含めて6つの医療機関が認定施設となっています(2024年4月時点)。
そのほか、学会活動にも力をいれています。カテーテル治療は医師の経験や技量による差が大きいことから、国内だけでなく世界から注目される分野です。そのなかで当科はカテーテル治療の実績などが評価されており、国内外の学会での講演やライブデモンストレーションによる実技披露のほか、他院の医師への実技指導なども行っています。
外科では、主に救急疾患や肝臓・胆道・膵臓の病気(肝胆膵疾患)を診療しています。救急疾患では消化管穿孔や出血、消化管壊死、炎症疾患などが多く、24時間365日外科手術などの治療が可能な体制を整えています。
また、消化器では肝胆膵疾患の治療を得意としていて、消化器内科と連携をしっかり取ることによって適切な治療につなげています。特に膵臓がんは診断と治療が難しく特殊な手術を行うこともあることから、経験が豊富な当院に他院からの紹介を含めて多くの患者さんが訪れています*。診察の際には1人の患者さんに時間をかけて病状を説明し、まずは不安を解消してもらえるように努めております。
*2023年1~12月の手術実績:肝胆膵領域189件、うち悪性疾患38件
当院の強みの1つである心臓血管外科では医師が常にホットラインを携帯しており、ほかの医療機関からの問い合わせや手術の依頼に迅速に対応しています。
中でも大動脈瘤破裂などの緊急手術に関しては、県外からのドクターヘリの搬送も搬送受け入れています。2023年1~12月の手術件数は心臓・胸部大動脈が69件(ステント3件を含む)、腹部大動脈が21件でした。
また、大動脈瘤の破裂を予防する治療法の1つであるステントグラフト治療も行っています。ステントグラフト治療は脚の付け根から血管内に管を入れてX線で確認しながら人工血管を患部に設置し、大動脈瘤の破裂を予防する治療法です。当科では、瘤のある部位や体の状態などさまざまなことを考慮して、患者さん一人ひとりに合った治療を検討していますのでお気軽にご相談ください。
当院では、地域医療連携のネットワークづくりに積極的に取り組んでいます。その取り組みの1つが“柏ハートネット”で、地域の参加病院と柏市医師会、柏市消防局が協力して立ち上げました。当院の循環器内科のほか、柏市立病院の循環器内科や東京慈恵医科大学附属柏病院の循環器内科などが参加しており、相互に連携しながら緊急性の高い心疾患に対応しています。
また、東葛北部地域に属する5つの市の医療機関が連携して消化管出血(GIB)に対応する“5市GIBネットワーク”にも、当院は24時間365日体制で緊急内視鏡検査に対応できる医療機関として立ち上げから参加しています。消化管出血は緊急性が高く、出血を止めることができなければ、出血多量で患者さんは命を落としてしまいます。そのような事態を避けるため、地域が連携して緊急ネットワークを構築することはとても大切だと考えています。
当院は設立当初から専門性が高い医療サービスを提供し、地域医療に貢献することを目指しています。地域の方が安心して医療にかかれるように、同時に大学病院に引けを取らないしっかりとした医療を提供できるように、各専門医や指導医などをそろえております。
1人でも多くの患者さんを助けたいという気持ちで、地域の医療機関との連携やネットワークづくりにも積極的に取り組んでいます。今後も地域住民の皆さんが、住み慣れたこの街で最期まで自分らしい暮らしを続けられるよう尽力してまいりますので、ご支援よろしくお願いいたします。
医療法人社団誠高会 理事長、おおたかの森病院 病院長
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