院長インタビュー

シームレスな医療を提供し、高齢化社会に挑む 獨協医科大学 日光医療センター

シームレスな医療を提供し、高齢化社会に挑む 獨協医科大学 日光医療センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]院長インタビュー

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栃木県日光市にある獨協医科大学 日光医療センターは、2006年の開設以来、地域の基幹病院としての役割を担ってきました。2023年の新築移転を機に眼科を新設し、急性期からリハビリまで切れ目のない医療を提供する同センターの役割や今後について、病院統括管理者である安 隆則(やす たかのり)先生に伺いました。

当センターは前身の国立珪肺労災病院より移譲を受け、獨協医科大学病院、埼玉医療センターに続く獨協医科大学3番目の附属病院として誕生しました。2006年に病床数50床でスタートした当初より、国際観光都市・日光における基幹病院としての役割を担っております。また、獨協医科大学創立50周年の節目となる2023年1月には日光市高徳から森友へと移転・リニューアルを果たし、より充実した医療をご提供できるようになりました。

栃木県北西部に位置する日光市はこの30年間で人口が半減し、2045年には2人に1人が65歳以上になるといわれています。急速に高齢化が進む日光市は、近い将来やって来るであろう日本の未来を象徴しているかのようです。こうした背景を踏まえ、2023年の移転を機に新たに眼科と救急・総合診療科を立ち上げ、高度治療室(HCU)を新設するなどして診療体制の充実を図りました。また地域の医療機関と連携(日光ヘルスケアネット)することによって、限られた医療資源の中で質の高い医療を提供するべく力を尽くしています。

病院長に就任した2019年以降、“断らない救急”を掲げて救急車を積極的に受け入れ、年間2,000件の受け入れを目指して取り組んでいます。さらに救急室のすぐ隣にヘリポートを備えるなどして、救急患者さんに対して迅速な対応ができる体制を整えています。

日光市民の多くを占める高齢者は、1人で複数の病気を抱えていることが少なくありません。また、日光市は日本有数の国際観光都市であり、全国各地から修学旅行生が訪れ、海外からのゲストもたくさんいらっしゃいます。このため1人の患者さんの全身を診て、適切な治療につなげられるようにと“救急・総合診療科”を新設し、総合的な診療を行うとともに人材の育成にも努めています。

急性期医療、高度医療を提供する当院を語るうえで欠かせないのが、24時間・365日体制で緊急対応も可能な心臓カテーテル治療です。心臓や血管の病気は私の専門分野でもあり、難易度が高いとされる狭心症のカテーテル治療、不整脈に対するペースメーカー治療などを実施するとともに、治療後の患者さんの再発予防・重症化予防のためのリハビリテーションにも対応しています。

当院では急性期のリハビリテーションに力を入れており、1日でも早く日常生活に戻れるよう、手術後の患者さんも翌日からすぐにリハビリを行っていただきます。リハビリは「低下した機能を元に戻す」イメージがありますが、急性期リハビリは脳卒中骨折などの病気やけがの後に、治療と並行して行われるものです。当院には心大血管疾患リハビリテーションを統括する私のほかに、運動器、呼吸器、脳血管など各分野を専門にする医師が在籍しており、それぞれの患者さんに適したリハビリ計画をご提案しています。

日光市にはこれまで眼科を標榜する医療機関が十分に足りておらず、眼科にかかりたい患者さんは、わざわざ市外の医療機関に足を運ばなければならないケースが少なくありませんでした。地域の患者さんを地域の中で診ていくためには眼科の開設が急務であると考え、当院は2023年の新病院開設に合わせて眼科の診療をスタートしました。

当院の眼科では高齢患者さんに多くみられる白内障緑内障、硝子体の手術に対応するほか、硝子体注射、網膜光凝固、YAGレーザーなどの処置を行っています。白内障手術ガイドシステム(VERION)や眼科用レーザー光凝固装置など充実した設備をいかして、患者さんのQOL(生活の質)向上を目指しています。

日光市では人口減少と少子高齢化が同時に進行しており、たとえ人口が減ったとしても医療ニーズが減少することはないと考えられます。また、働き世代の少ない日光市の財政は必ずしも潤沢とは言えない現状があります。そうした状況の中、日光市における継続的かつ安定的な医療提供を目指して設立されたのが地域医療連携推進法人“日光ヘルスケアネット”です。

行政主導で設立された組織には日光市内の11の医療機関が所属し、それぞれが決められた役割を担いながら、地域住民の暮らしと健康を支えています。地域全体で病床数1,000床を有し、医療のみならず介護・福祉などをシームレスに提供できる体制が整っており、今後の高齢化社会におけるモデルケースになるのではないかと期待しています。

私は若い頃にカンボジアやタイなどを訪れ、現地での医療活動に従事したことがありました。その後も沖縄、大阪、アメリカなどさまざまな地域で診療や研究にあたり、地域ごとのニーズに合わせて、必要とされる医療をご提供してきました。そうした経験を踏まえて当センターの統括管理者に就任したいま私に課せられた使命は、人口減少や高齢化などさまざまな問題に直面する日光市に暮らす皆さまに、安心して健康的な生活を送っていただくことだと考えています。

当院に入院された患者さんが退院された後、およそ1週間後に担当した看護師からお電話を差し上げていることも、患者さんに安心していただくための取り組みの1つです。また、患者さんからお寄せいただいた投書は全て私たち病院上層部と担当部署が目を通し、皆様のご意見を参考にしさらなる医療サービスの向上にも努めています。今後も地域の皆さまに信頼される基幹病院として、顔が見える・声が聞こえる関係性を大切にしていきたいと考えておりますので、何かお困りのときはいつでもご相談ください。

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