東京高輪病院は1951年(昭和26年)に「船員保険東京中央病院」という名称で船員のための職域病院として開設しました。2014年(平成26年)に船員保険会から独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)へ移行し、名称も「せんぽ東京高輪病院」から「JCHO東京高輪病院」へ改められました。東京高輪病院では地域に必要とされる病院を目標にしており、地域包括ケア病棟の運営、医療連携・患者支援センターの設置など、近年新たに開始された取り組みが多くあります。また、訪日外国人の受け入れを積極的に行う体制が整っていることも特徴です。今回はJCHO東京高輪病院の特徴や目指す病院のあり方について、院長の木村健二郎先生にお話を伺いしました。
東京高輪病院外観 東京高輪病院よりご提供
当院は病床数239床で稼働をしていますが、2014年10月にそのうち49床を地域包括ケア病棟に転換しました。地域包括ケア病棟とは、在宅療養をされている患者さんや院外あるいは院内で急性期の治療が終了した患者さんを受けいれ、自宅や介護施設への復帰に向けた支援を行う病棟です。
当院は、地域包括ケア病棟を有する病院として、東京都港区の地域包括ケアシステムのモデル事業の一環で「在宅療養後方支援病床の確保及び利用に関する協定」を締結しています。この協定の締結により、急性期病棟に入院するほど重篤ではないものの、在宅療養が困難な患者さんの受け入れや、レスパイト(介護を行う家族の休養を目的に要介護者を一時的にお預かりする)入院の受け入れがスムーズにできるようになると考えています。
地域包括ケア病棟の充実によって、地域の方々に安心して生活していただけるような地域づくりに貢献していきます。
患者支援センターの方々 東京高輪病院よりご提供
当院では2015年に「医療連携・患者支援センター」を設置いたしました。
このセンターでは看護師、ソーシャルワーカー、事務員の多職種が協働し、地域医療機関からご紹介された患者さんの受け入れ、入院ベッド確保のためのベッドコントロール、退院支援などを一括して行っています。ワンストップでこうした取り組みを行うことで、患者さんが来院するところから、退院するまでの流れを円滑にできていると考えています。
また、当院は病院完結型から地域完結型医療の提供を目指しており、訪問看護ステーションや往診医との連携も密接に取れていることが特徴です。
当院に近い品川駅は、羽田空港や成田空港からのアクセスが良く、近隣には多くの外国人観光客が宿泊するホテルや大使館や公館も多数あるため、当院には外国人の患者さんが多く来院されます。また入国管理局からも近く、収容されている外国人が搬送されてくることもあります。
以前は言語や習慣の面から、このような外国人の患者さんの受け入れに積極的とはいえない状況でした。しかし、われわれ日本人も、外国で怪我や病気になったときは非常に心細い気持ちになるはずです。ですから、私は外国人であっても日本人と同じように本邦で充実した医療を安心して受けていただきたいと考えています。
そういった人々に手を差し伸べられるような病院であるために当院では2016年に国際部を設置し、訪日外国人を受け入れるための体制を整えました。
国際部には英語・中国語・ロシア語の会話ができる看護師と事務員が専任で在籍し、患者さんの通訳だけでなく診療に関わる事務的な作業や関係各所との連携などコーディネーター業務を行なっています。
上記3つの言語で、来院される患者さんの90%の言語をカバーすることができます。それ以外の言語に関してはタブレット端末を通して、契約しているオペレーターに通訳をしてもらう仕組みとなっています。
外国人が宿泊しているホテルへの往診を依頼されることもあります。その際は医師とともに国際部のスタッフもホテルに出向き診療を行なっています。
このように外国人の患者さんの診療には、国際部が中心的な存在となって活躍をしています。ジャパンインターナショナルホスピタルズに推奨されたこともあり、今後は国の成長戦略のひとつでもある渡航医療(インバウンド)も積極的に受けいれていきます。
先述のような取り組みもあり、当院は一般社団法人Medical Excellence JAPAN(MEJ)が推奨するジャパンインターナショナルホスピタルズ(JIH)に登録されました。JIHへの推奨は「渡航受診者の受け入れに意欲的で、受け入れ体制や診療・検診内容が十分に整備されているか」が基準となり、2017年現在で全国28の病院がJIHに選出されています。
JIHに選出された病院は、受診・検診目的で訪日する外国人に向け、提供している診療内容について海外へ情報発信を行います。
当院に来院する外国人は、旅行中の思わぬ怪我や病気の治療目的で来る方が多いですが、JIHに選出されて以後、アジアを中心とした地域から、健診目的で来院する方の数が増えています。
今後もあらゆる外国人に充実した医療を提供できるよう、さらなる体制強化に努めていきたいと考えています。
当院の循環器内科は24時間オンコール体制(いつでも救急要請に応えられるよう常に連絡の取れる体制)で診療にあたっています。虚血性心疾患(狭心症や急性心筋梗塞など)のカテーテル検査・治療で実績をあげており、当院の大きな強みとなっています。
消化器に関する疾患においては、消化器内科と消化器外科の連携が非常によく取れています。
内科・外科ともに肝臓・胆道・膵臓の専門医が多く在籍しており、ERCP(内視鏡下で胆管や膵管を造影しながら行う検査・治療)や腹腔鏡下手術(お腹に小さな穴を開け、そこから専用の器具を通しテレビモニターを見ながら行う手術)を積極的に実施しています。
当院は乳線・乳がんを専門とする「よしもとブレストクリニック」(港区・赤坂)と手術連携をしています。手術の流れとしては、「よしもとブレストクリニック」で診療を行い、手術適用となった患者さんは当院において当院の医師と合同で手術を行います。また乳房切除後の乳房再建も外科と形成外科が協働して行なっています。
当院では入院患者さんに対し、土日祝日も休まずリハビリテーションを実施しています。私が院長に就任した際は、リハビリテーションは平日しか実施していませんでした。しかし、リハビリテーションも患者さんにとって大切な治療の一環であり、休みを挟むことで回復が遅れてしまう可能性があります。そこでリハビリスタッフの協力を得て、休日のリハビリテーション実施を開始しました。早期にリハビリテーションを開始し早期に回復を目指することで、患者さんや家族からも喜びのお声を多数頂いています。
地域から必要とされる病院であるために、救急医療の充実にも力を入れています。
当院の救急の受け入れ件数は年間約3,500~4,000件で、そのうちお断りした割合は10%未満と低い割合になっています。お断りを減らすために、お断りした症例の検討会議を開催したり、診療できる疾患については引き受けるよう医師に直接呼びかけたりといった工夫を施しています。
これからも地域のために断らない救急を実現していきます。
当院では地域住民に向けた市民公開講座を年4回程度行なっています。病院の1階外来ホールで開催し、前回は約160名の地域の方々に来ていただきました。医師だけでなく、多職種が協働して講演を行うことが特徴です。
また、住民の方だけでなく、警察署・消防署・入国管理局などの公共機関に対しても講義を行なっています。講義内容は、各機関内で起こりうる感染症や外傷などが中心ですが、心血管疾患(狭心症や心筋梗塞)・腹部の急性外科疾患・生活習慣病・睡眠時無呼吸症候群など多岐にわたっています。公共機関との連携を深めることも、患者さんを円滑に受け入れるために大切なことであると考えています。
木村健二郎先生 東京高輪病院よりご提供
当院は「心のこもった医療を安全に提供します」という理念を掲げています。
この理念のもと、当院の職員には、当院の地域における立ち位置をしっかりと理解してほしいと考えており、私からは常に、外国人を含めた地域の患者さん、地域医療機関、救急隊や入国管理局などの公共機関を大切にして、病院として何をするべきなのか考えてほしいとメッセージを発信しています。
当院は地域の病院として地域に根ざすことで成り立っています。これからも地域医療、地域住民のためにしっかりとした医療を提供していきます。
※2017年4月から土曜日の外来は休診しております。また、小児科と婦人科も現在休診しております。下記病院情報に、一部誤りがありますので、ご容赦ください。
独立行政法人 地域医療機能推進機構東京高輪病院 院長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。