連載リーダーの視点 その病気の治療法とは

いぼ痔の再発を繰り返すのは排便に無頓着だから? いぼ痔の治療法や理想的な排便とは?

公開日

2025年04月03日

更新日

2025年04月03日

更新履歴
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痔には3大疾患と呼ばれる病気があり、その中で患者数が多いのが“いぼ痔(痔核(じかく))”だ。気になる症状があったとしても、受診のハードルが高く、症状を悪化させてしまう人も多いことだろう。そこで今回は、医療法人道仁会 道仁病院(大阪府寝屋川市)の宮﨑道彦病院長に、病院を受診するタイミングや、いぼ痔の治療法・予防法などについて話を伺った。

いぼ痔(痔核)の特徴は?

肛門(こうもん)の病気を総称して“痔”と呼びますが、一般的には「いぼ痔(痔核)、痔ろう、切れ痔(裂肛)」の3つを指すことが多く、これらは痔の3大疾患などと呼ばれています。その中でも多くみられるのがいぼ痔です。

いぼ痔は、肛門周辺の静脈が網の目のように集まっている部分(静脈叢(じょうみゃくそう))に血がたまって腫れた状態を指し、腫れる場所によって「内痔核」「外痔核」「内外痔核」の3つに分類されます。お尻では体の皮膚が肛門を経て腸とつながっています。この、皮膚と腸がつながる境界線を「歯状線」と呼び、歯状線の内側が腫れた状態が内痔核、外側が腫れた状態が外痔核、歯状線をまたぐように内側から外側にかけて腫れた状態が内外痔核です。

PIXTA

内痔核と外痔核の大きな違いは、痛みを感じるか感じないかという点です。これは、歯状線を境に大腸(直腸)の粘膜に痛覚(痛みの感覚)がないためで、歯状線より上にできる内痔核は痛みをほとんど感じませんが、歯状線より下にできる外痔核は強い痛みを伴います。
痛みを感じない内痔核は、出血があったり、患部が肛門の外に飛び出したりしたときに初めて気が付くことが多くなります。

進行度合いを自分で判別できる指標「ゴリガー分類」

内痔核を放置していると、先述したように患部が肛門の外に飛び出てきます。これを“脱出”といい、脱出の度合いを表すものが「ゴリガー分類」です。この分類では、脱出の度合いはI度からIV度の4段階に分けられており、数字が大きくなるほど症状が悪化していることを示します。

I度 排便時にうっ血して(血がたまって)肛門の内部で腫れる状態

II度 排便時に内痔核が脱出しても自然に戻る状態

III度 排便時に脱出した内痔核が押し込まないと戻らない状態

IV度 内痔核が常に脱出している状態

排便の際に飛び出してくる患部を、その都度トイレットペーパーで押し込んでいる方は、III度に該当します。この状態をさらに放置していると、常に脱出している状態となり、普段から痛みや不快さを感じる方が増えます。QOLを保つためにも、早めに受診して治療することをおすすめします。

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脱出を指で戻す(III度)

受診のサインは「出血・脱出・痛み」の3つ

医療機関を受診する目安は「出血・脱出・痛み」の3つの症状です。医療機関では、進行度合いに合わせて、次の4つの中から適切な治療法が採られます。

  • 坐薬や軟膏、内服薬などを用いた治療
  • 専用の小さな輪ゴムを使って痔核を壊死(えし)・脱落させるゴム輪結紮療法(わけっさつりょうほう)
  • 患部に薬液を注射して脱出や出血を抑える注射による硬化療法(硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸注射液またはフェノール注射液)
  • 患部を切除する外科的手術

当院ではゴリガー分類のI度とII度では薬物治療やゴム輪結紮療法、II度とIII度の一部では硬化療法、Ⅲ度、IV度では外科的切除で治療を検討します。なお、外科的切除はI度~IV度のいずれにおいても適用できます。

このように、いぼ痔は進行度合いによって適した治療法が異なりますので、症状が進む前に医師の診察を受けるようにしましょう。とはいえ、肛門の病気には羞恥心が伴うため、受診することに抵抗があるかもしれません。その場合には、市販の軟膏などを使って様子をみて、2週間ほど使っても効果がなかったら受診してみてはいかがでしょうか。

血液をサラサラにする薬を飲んでいる方には注射で治すALTA療法

ALTA療法とは、患部に直接硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸注射液を注射し、患部を硬化させて出血や脱出を抑える治療法で、講習を受けたどの医療機関・医師が実施しても一定の効果が期待できます。また、心筋梗塞や脳血栓などを防ぐために血液をサラサラにする薬(抗血栓剤)を服用している方は、出血が止まりづらくなるため、ALTA療法が有効です。ただし、治療を受けても再発を繰り返す方は、切除などの外科的手術を検討しなければなりません。ただし、外科的切除の際には抗血栓剤の休薬が必要な場合があります。

まずは肛門外科、その次に大腸肛門病専門医の受診を

いぼ痔を診てもらうには、肛門外科のある医療機関を受診するとよいでしょう。ただし、肛門外科だからといって、全ての治療が受けられるわけではありません。外科的切除などは専門とする病院を紹介される場合もあります。そのため、症状が進行している方や、過去に治療をしたものの再発を繰り返している方は、日本大腸肛門病学会が認定している大腸肛門病専門医の診察を受けることをおすすめします。大腸肛門病専門医は認定を受けるために規定された症例数の治療経験を積み、講習やセミナーを受けているため、安心して治療を受けられるでしょう。なお、この資格は5年ごとの更新制です。

ちなみに、大腸肛門病専門医は大腸と肛門に専門分野が分かれています。医療施設のホームページなどで診療実績を確認し、専門医資格を持った医師を探してください。

“排便習慣にこだわること”が予防の第一歩

いぼ痔を予防するうえで大切なのは、排便習慣に配慮することです。硬い便も軟らかすぎる便もいぼ痔の大敵で、表面が滑らかなソーセージのような便になるよう、食生活や生活習慣を整えることが重要です。特にお酒やカフェインはよくありませんので、過剰摂取は避けましょう。

参考までに、便の状態を表す世界的な指標に「ブリストル便形状スケール」があります。タイプが1から7まで7段階あり、以下のように規定されています。

タイプ1:硬いコロコロの便

タイプ2:数珠状のデコボコした硬い便

タイプ3:表面がひび割れしたソーセージ状のやや硬い便

タイプ4:表面が滑らかで軟らかいソフトクリーム状の便

タイプ5:半分固形のやや軟らかい便

タイプ6:泥状の便

タイプ7:固形物を含まない水状の便

ベストの状態がタイプ4で、タイプ3と5は許容範囲です。ぜひ、理想的な便が出るように心がけてください。

虫歯を治しても手入れが悪いとまた虫歯になるように、適切な治療をしても排便に無頓着な方はいぼ痔の再発を繰り返します。お尻は自分の大切な相棒です。せっかく治療したのであれば長く健康的な状態を保てるよう、大切に使っていただけたらと思います。

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