前腕が痛い:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典

前腕が痛い

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 転倒したなど、きっかけがはっきりしていて痛みが強い
  • 動かすことができないほど痛む

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 腕を動かすと痛みが強くなる
  • 痛む方の腕が腫れている
  • 痛めた覚えはないが、ボールを投げたりラケットを使うようなスポーツの習慣がある
  • 日常生活に支障はないが、痛みが慢性化している

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 痛みが短期間で、その後繰り返さない

熊本回生会病院 院長補佐

中村 英一 先生【監修】

腕は日常生活の中で頻繁に使う部位です。腕の中でも、肘から手首までの部分を前腕といいますが、ここに痛みがあると不便を感じる場合も多いでしょう。

  • ゴルフをしたら前腕が痛くなった
  • 前腕がビリビリとしびれて痛い
  • テニスが趣味だが、最近前腕が痛くなってきた

このような症状が現れた場合、考えられることにはどのようなものがあるでしょうか。

前腕の痛みは病気やケガが原因となって起こっている場合があります。

特に骨や筋肉、神経に原因があり前腕が痛むという場合、主に以下のような病気が考えられます。

頚椎(けいつい)症性神経根症・頚椎症性脊髄(せきずい)

首の骨は頚椎という骨がいくつも連なってできています。この骨と骨の間にある椎間板が加齢などによってクッションの役割を果たせなくなり、骨の変形などが起こって上肢にいく神経を圧迫することにより、上肢や首の痛みが出る状態のことを頚椎症性神経根症といいます。

腕が痛む、しびれる、背中に痛みがある、肩がこるなどの症状のほか、進行すると、頚椎症性脊髄症となり神経根がでる脊髄を圧迫して、上肢の症状の他に、下肢のしびれや運動麻痺、排尿障害といった症状が出ることがあります。

末梢神経障害

神経は脳から脊髄を通り、頸椎からでて、末梢神経として手足などにつながっています。頸椎から出た後の末梢神経は、手足に行く途中狭いトンネルを通りますが、そこで圧迫などを受けるとその先神経がつながっている部分のしびれや痛みを引き起こします。

このようなことが肘部(ちゅうぶ)や手首で起こることを、それぞれ、肘部管症候群手根管症候群と呼びます。

末梢神経障害を引き起こすと、手指や手首にビリビリとしたしびれが起こったり、動きにくくなったりします。

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)

一般的には加齢などで肘の腱が傷んで起こりますが、中年以降のテニスをする人に多いため、テニス肘とも呼ばれています。

物をつかんで持ち上げる、タオルをしぼる、といった動きをすると肘の外側から前腕にかけて痛みが出ます。手の甲側に手首をそらすと、腕の外側が痛みます。通常は動かさないと痛みは出ませんが、症状が進行すると安静にしていても痛むようになることがあります。

上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)

手首を手の平側に曲げる筋肉や靭帯が炎症を起こし、痛みを起こします。ゴルフをする人に多くみられることから、ゴルフ肘とも呼ばれています。テニスのフォアハンドを繰り返すことも原因となります。

物を持つときに肘の内側に痛みが出る、肘の内側を押すと痛い、手首を手の平側に曲げると痛みがあるなどの症状が現れます。

腱交差症候群

手首の関節や指を動かしている筋肉や腱は、前腕で交差していますが、この部分で炎症が起こったものです。

痛みや、手を動かすときの違和感、ギシギシと音がするなどの症状が現れます。

骨折

前腕には橈骨(とうこつ)尺骨(しゃっこつ)という2本の細長い骨があります。この骨が転倒など強い力などによって折れると多くは激痛や腫れ、しびれが伴います。

また、骨折には、骨が完全に折れてしまった状態である完全骨折もありますが、ヒビや骨がつぶれた不全骨折や剥がれたなどの剥離骨折もあります。転んだなど心当たりがあり、痛みが続く場合には、痛みが軽度でも注意が必要です。 

激しい痛みや、痛みのきっかけとなる出来事に心当たりがある場合には早めに受診しましょう。また、痛みが続く、特定の動作で痛みが再発するなどの場合にも一度受診が必要です。

受診科目としては整形外科が適しています。

診察の際には、いつからの症状か、きっかけの有無、しびれなどの他の症状が伴うかどうか、などについて伝えるようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。