歯が抜けた:医師が考える原因と対処法|症状辞典
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
大阪大学大学院 歯学研究科 教授、大阪大学歯学部附属病院 小児歯科 科長
仲野 和彦 先生【監修】
歯が抜ける原因には、けがや病気などが挙げられます。
このような場合には、原因としてどんなことが考えられるでしょうか。
歯が抜ける原因には、以下のような病気が挙げられます。
歯周病は、歯茎や歯を支える“歯槽骨”が溶ける病気です。
口腔内には約700種類もの細菌が存在しています。歯周病を引き起こす細菌は10種類ほどありますが、いずれも酸素の少ない場所で生息するものばかりです。そのため、歯茎に炎症が起きて歯と歯茎の間にある溝が深くなる(歯周ポケット)と、酸素が届きにくい歯周ポケットの奥深くで歯周病菌が増殖し、細菌から排出される毒素によって歯槽骨が溶けます。
発症初期には無症状で経過するものの、進行すると膿が出たり歯がぐらついたりして、最終的には歯が抜けます。
低ホスファターゼ症という病気によって歯が抜けることもあります。
低ホスファターゼ症は指定難病の1つで、骨の石灰化に重要な“アルカリフォスファターゼ”と呼ばれる酵素に生まれつき異常があることで骨が弱くなる病気です。発症年齢は乳児から成人まで幅広く、症状も人によって異なります。
アルカリフォスファターゼの値が低いと歯の根の表面(セメント質)が正常に作られず、歯を支える骨と歯の接着が不十分になる場合があります。そのため、歯が生え代わる年齢よりも前に歯が根ごと抜けてしまう場合があります。
低ホスファターゼ症では、骨の痛みや骨折、低身長、けいれん、筋力の低下といったさまざまな症状が現れることがあります。また、低ホスファターゼ症は遺伝する病気ですが、重症から軽症までさまざまです。日本では、世界に先駆けて根本的な治療ができるようになっていますので、早期発見によって適切な治療を受けることが重要です。
子どもの歯(乳歯)が4歳未満で抜けてしまった場合は、低ホスファターゼ症の可能性も考えられるため早急に歯科医院を受診しましょう。
また、歯周病がある場合は、なるべく早めに受診して適切な治療を受け、歯の脱落を予防しましょう。歯周病は発症初期には無症状で経過するため、気付かないうちに進行するケースが少なくありません。気になる症状がない場合でも、定期的に歯科検診を受けることが重要です。
スポーツや交通事故などが原因で歯が折れたりずれたりする場合はありますが、日常生活上の原因によって歯が根ごと抜けることはほとんどありません。このような場合は、何らかの病気が原因であることを念頭に受診を検討しましょう。