インタビュー

高血糖による意識障害―糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群

高血糖による意識障害―糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群
矢島 賢 先生

北多摩西部保健医療圏糖尿病医療連携推進協議会 会長、国家公務員共済組合連合会立川病院 内科医長

矢島 賢 先生

菅野 一男 先生

かんの内科 院長

菅野 一男 先生

貴田岡 正史 先生

医療法人社団 明芳会 イムス三芳総合病院 内分泌(甲状腺)・代謝(糖尿病)センター センター長

貴田岡 正史 先生

この記事の最終更新は2015年04月03日です。

高血糖低血糖は、糖尿病のいかなる時期にも起こりえます。低血糖のみでなく、高血糖の場合も意識障害をきたす場合があり、糖尿病昏睡と言われることもあります。主な病態としては、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)と高浸透圧高血糖症候群(HHS)があります。

糖尿病では、インスリンの高度の不足が原因で、高血糖が生じることに加え、脂肪の分解が高まりケトン体という酸性物質が体内に蓄積します。このケトン体が蓄積した状態をケトーシスといいます。

糖尿病ケトアシドーシスが起こる仕組み
糖尿病ケトアシドーシスが起こる仕組み

糖尿病ケトアシドーシスは1型の糖尿病患者さんに多く、糖尿病を発症した時やインスリン注射を中断した時、感染症や外傷などにより極端にインスリンが不足した時に起こります。

また、2型糖尿病患者さんでも、感染症や外傷などの強いストレスがあった時や、ソフトドリンクを大量に飲んだ時に起こることもあります。

糖尿病ケトアシドーシスでは、のどが乾く、多飲、多尿、体重が減る、全身がだるいなどの症状が急激に起こります。さらに悪化すると、呼吸困難、速くて深い呼吸、吐き気、嘔吐、腹痛、意識障害などが起こります。

糖尿病ケトアシドーシスは早期に発見すれば予後は良いのですが、その発症を予防することが何より大切です。

糖尿病ケトアシドーシスは、のどが乾く、多飲、多尿、体重が減る、全身がだるいといった典型的な症状に続いて起こります。こういった症状をよく覚えておき、症状があったときに血糖自己測定、尿ケトン体の測定を行い、予防・早期発見することが大切です。

また、高血糖をきたしやすい薬として、一部の抗精神病薬があります。糖尿病患者が精神科にかかる時は、必ず自分が糖尿病であることを医師に伝えるようにしましょう。

高浸透圧高血糖症候群では、高血糖と飲水量不足による脱水で、血液が濃縮されてしまい高浸透圧となります。ただし、インスリンは最低限分泌されているので、ケトーシスを伴うこともありますが、著しいアシドーシスにはならないのが特徴です。

高浸透圧高血糖症候群は2型糖尿病の高齢者に多くみられます。感染症、脳卒中、副腎皮質ステロイド薬や利尿薬の頻用、高カロリー輸液などが原因となります。

様々な程度の意識障害やけいれんなどをきたします。脱水にともなう多飲、多尿、全身倦怠感などの症状をきたします。糖尿病ケトアシドーシスよりゆっくり発症します。

2型糖尿病の高齢者は、高血糖に気づかれないうちに脱水がひどくなり、高浸透圧高血糖症候群を起こすことがあります。
感染症やほかの疾患を合併したときは、高浸透圧高血糖症候群を起こすことがあることに注意します。

高血糖の症状が出た場合には、水分を補給して早めに病院を受診するようにして下さい。このことを、家族も知っておくことが大切です。

糖尿病昏睡あるいはそれに近い状態では、一刻も早く入院して、大量の輸液とインスリンの投与が必要です。疑わしい場合はすぐに主治医に連絡して、できるだけ早く診察を受けましょう。

  • 糖尿病ケトアシドーシスの治療では、輸液によって脱水とショック状態を治すこと、インスリンの投与によって高血糖とケトアシドーシスを治すことが重要となります。
  • 高血糖高浸透圧昏睡の治療では、糖尿病ケトアシドーシスの治療と基本的には同じですが、輸液による脱水の改善が最も大切です。
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