インタビュー

視力回復のために―屈折矯正手術とはなにか

視力回復のために―屈折矯正手術とはなにか
鈴木 雅信 先生

鈴木 雅信 先生

この記事の最終更新は2015年12月03日です。

眼鏡やコンタクトレンズを使って目の屈折力を調節する方法は、かなり以前から行われてきました。近年では、手術を行って屈折力を調整し、眼鏡やコンタクトレンズを使わなくてもピントが合った像を網膜に結べるようになる治療法「屈折矯正手術」が進歩を続けています。この記事では、国際医療福祉大学三田病院眼科教授・鈴木雅信先生に、屈折矯正手術の詳細や屈折矯正手術の種類について解説していただきます。

目の健康に不安を感じる方のなかでよく見られるのが屈折異常です。屈折異常とは、何らかの原因によって網膜に映し出される像のピントが合わず、ぼやけてしまう状態のことを指します。

眼球の構造

眼の働きをカメラにたとえる場合、角膜と水晶体がレンズに、網膜はフィルムにあたる部分です。また水晶体には、厚さを調節してピントを合わせる仕組みが存在します。よくいわれる老眼とは、水晶体の厚さを調節してピントが合った像を網膜に結ぶことが行われにくくなる状態です。

 

遠視の患者さんは、正常な視力を持つ方に比べて網膜の位置が近い状態にあります。したがって、眼鏡やコンタクトレンズを使ってピントが合う位置を調整しなければ、目に映るものがぼやけて見えることになります。

ただし、軽度の遠視で年齢が若い方は、網膜にピントが合った像を結べるように水晶体がカバーしてくれるため、遠くも近くも見えることがあります。目に負担がかかるものの、水晶体は柔軟性に富んでいますので、厚さを調節して網膜にピントが合った像を結べるように調節してくれるためです。(ただし目が疲れやすくなります)

この場合、一般的には凸レンズ(プラスレンズ)を加えて屈折を調整して、網膜にピントが合った像を結ぶように矯正します。

 

これに対して近視は、近くは正常に見えるものの遠くはぼやけて見える状態です。近視の患者さんは、正常な屈折力がある方に比べて眼球が細長く変形しています。そのため、ピントが合った像を網膜に結びにくくなります。このような場合、従来の方法では凹レンズ(マイナスレンズ)を利用した眼鏡などを使って、網膜にピントが合った像が映るように矯正します。

また乱視の方は、近視や遠視の状態に加えて、角膜や水晶体の形がゆがんでいるため、視機能がうまく働かなくなってしまう状態にあります。角膜や水晶体の形が歪んでいると、同じ太さの線が書いてあっても縦と横で線の太さが違って見えたりします。

屈折力の調整としては、円柱レンズを使って縦と横の屈折力を調整した後、近視や遠視の矯正としてその上からマイナスレンズやプラスレンズを加えます。

前項でご説明したように、屈折異常とは角膜や眼球の形が変形することによってピントが合った像を網膜へ結びにくくなっている状態です。近年では、角膜を削ったり角膜の内部にレンズを入れたりすることによって、ピントが合った像を網膜に結ぶことができるようになっています。

近視の場合、エキシマレーザーを使って角膜を削り、網膜にピントが合った像を結べるようにする治療法が主流になっています。

これらの手術は、角膜を削ることによって角膜の厚さを調整し、網膜にピントが合った像を結べるようにする手術です。

LASIK

どちらの手術も角膜の厚さを調節する手術ですが、PRKは角膜の表面からレーザーを照射して角膜の厚さを調節するものです。

LASIK(レーシック)手術は、マイクロケラトームと呼ばれる機械で角膜にフラップ(ふた状の角膜の組織)を作り、角膜の内部からレーザーを照射して角膜を削った後、フラップを戻す方法です。フラップは、自然に角膜の組織と接合しますので、外科手術のように縫合する必要はありません。また、LASIK手術は、手術直後からはっきりピントが合って見えることが多く、早期回復が図れるというメリットがありますが、外傷が起きやすいスポーツや仕事をされている方、角膜が薄い方には向かない手術方法です。

LASIK手術が適応しない方で、近視や遠視が比較的軽い方に用いられる手術です。アルコールを使用して角膜上皮を剥離し、その後、角膜をレーザーで削って角膜の厚さを調整し、角膜上皮を戻す手術方法になっています。

Wavefront-guided LASIKとは、一言でいえばLASIKをさらに精密に行う技術です。

屈折異常が見られる患者さんは、近視、遠視、乱視以外にも、光学的に見て眼球に細かい歪み(高次収差)があります。LASIK手術の前に、専用の検査機器で眼球の高次収差を検査し、そのデータを元に、エキシマレーザーで角膜をより精密に削って屈折異常の治療を行う方法です。

ReLEx(リレックス)は、LASIK手術をさらに改良した手術方法です。LASIK手術がレーザーで角膜を削るのに対して、ReLEXはフラップ(ふた状の角膜の組織)を作る前に角膜の内部をレンズ状に切り出して、フラップを開けて抜去し、フラップを戻すことで網膜にピントがあった像を結ぶように調節します。

SMILE(スマイル)は、LASIKやReLExと違い、角膜を薄く削ったフラップ(ふた状の角膜)を作りません。角膜の周辺部を2~3ミリ切開し、そこからレンズ状に切り出した角膜の一部を除去し、網膜にピントがあった像を結ぶように調整する手術法です。LASIKやReLExと違って外傷に強く、術後にドライアイが起きにくいというメリットがあります。

眼内にソフトレンズを挿入する手術です。LASIK以上に鮮明で自然な視力を獲得できるメリットがあり、乱視も同時に治すことができます。「眼内コンタクトレンズ手術」「有水晶体眼内レンズ挿入術」などとも呼ばれます。軽度の近視から最強度の近視まで幅広く対応する手術です。

以前のICL手術は、術後に白内障を生じる可能性が指摘されていました。しかし北里大学が開発した穴あきICLは、術後の白内障のリスク軽減が期待されています。

穴あきICLは、従来のICLの中央に0.36㎜の小さな穴をあけることで自然に近い房水の流れを実現しています。また、従来のICLでは房水の流れに不可欠であった虹彩の切除が不要となっています(現時点では、術後の白内障発症例は報告されていません)。

またエキシマレーザー手術においては、患者さんに負担が少ないSMILEを採用するケースが増えています。

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