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角膜移植とはー適応疾患と手術方法について
角膜の治療方法のひとつとして、角膜移植という方法があります。角膜はその特性から他の臓器とは異なり移植しやすい組織ということもわかっています。では実際に角膜移植はどのように行うのでしょうか。京都府...
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角膜移植とはー適応疾患と手術方法について

公開日 2016 年 04 月 03 日 | 更新日 2017 年 12 月 17 日

角膜移植とはー適応疾患と手術方法について
木下 茂 先生

京都府立医科大学特任講座感覚器未来医療学教授

木下 茂 先生

角膜の治療方法のひとつとして、角膜移植という方法があります。角膜はその特性から他の臓器とは異なり移植しやすい組織ということもわかっています。では実際に角膜移植はどのように行うのでしょうか。京都府立医科大学感覚器未来医療学教授の木下茂先生にお話をお伺いしました。

角膜移植とは?

角膜は正常であれば透明の組織ですが、外傷や感染症、遺伝的疾患などにより濁ってしまうことがあります。また、角膜が変形することによってピントが合わなくなることもあります。これらの症状により、光が網膜まで到達することができなくなると、視力低下をきたします。こういったケースで症状が改善しない場合に、角膜を入れ替える角膜移植を行います。現在アメリカでは年間約5万件、日本では約3000件の角膜移植が行われています。

角膜移植が適応となる疾患

角膜が濁ってしまっている、あるいは変形・変性してしまっている状態では、角膜移植が必要となります。

角膜移植の頻度が高い疾患としては、円錐角膜、角膜炎後の角膜混濁、角膜変性症、水疱性角膜症などがあげられます。円錐角膜は角膜が変形してしまっている状態で、角膜炎後の混濁や角膜変性症は角膜が濁ってしまっている状態です。

角膜移植と免疫反応。免疫特権について

移植といえば、「拒絶反応がおこるのではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし眼には臓器の機能を温存するために炎症反応を自動制御し、最小限に抑えようとする「免疫特権」とよばれるメカニズムが存在します。

とはいえ拒絶反応の可能性がゼロとはいえないため、角膜移植後には、ステロイド含有の目薬が処方されます。角膜移植後、急に視力が低下したり、異様にまぶしく感じたり、目が痛いといった症状がある場合はなるべく早急に受診をおすすめします。

角膜ドナーとは?

角膜移植を実行するためには、角膜を提供するドナーが必要になります。現在日本では年間3000件の角膜移植が行われていますが、そのうち2000件は国内ドナー、1000件は海外ドナーの角膜を使用しています。アメリカの角膜移植数に比べると日本は移植件数が少ない傾向にありますが、その一つの要因として、ドナーが少ないことが挙げられます。

そもそも日本では角膜ドナーという存在すら知らない方がほとんどでしょう。少なくとも医療関係者や医学生には、角膜ドナー登録ができることを知っていてほしいと私は考えています。

角膜ドナーの条件としては、角膜が透明であれば可能となります。例えば緑内障(緑内障の詳細は『緑内障とは―日本で最も多い失明の原因』を参照)などで失明された方でも、角膜が透明であればドナーになることができます。致死的な疾患であるプリオン病やウイルス性感染症等の除外をするために血清チェックを行ったうえで、移植を行います。

角膜移植の方法と種類

角膜移植は大きく、全層角膜移植術(PKP)と角膜内皮移植(DSAEK)、表層角膜移植(LKP)の3つに分けることができます。

角膜は5層に分かれていると記事1『角膜とは? 角膜に起こる様々な難治性の病気を紹介』でお伝えしましたが、このすべての層を丸ごと移植するのが全層角膜移植術(PKP)であり、従来から行われてきた標準的な術式になります。アメリカでは50000件の移植例のうち、約23000件がこの術式で行われています。具体的には角膜の全層を抜いて、ドナー角膜を同じサイズにカットし、はめ込んで縫い合わせます。

一方、ここ数年で急激に増えてきた方法が角膜内皮移植です。角膜内皮移植もアメリカでは年間約23000件ほど行われています。角膜内皮移植とは、5層に分かれている角膜の後ろの1/4層のみを移植するという方法です。

角膜は凸レンズとしての役割を担っているため、最も大切なのは最表層のカーブになります。この方法では最表層のカーブを触らないためひずみができにくく、視力が急激に改善され、乱視も少ないというメリットがあります。また最表層を残すために外傷にも強く、感染も少ないのが特徴です。

角膜の混濁が表層のみにある場合には、表層角膜移植(LKP)を行うこともあります。全症例のうち、残りの1000〜2000件はこの術式で行われています。この手術は、角膜の表面のみをメスで削り取り、そこにドナーから提供された角膜を縫い合わせる方法です。

表層角膜移植(LKP)は化学外傷など比較的重症例に対して行われることが多くなっています。表層のみを移植するため、拒絶反応のリスクが低く、安全性も高いといわれます。一方、角膜の濁りが残ってしまうというデメリットもあります。また視力改善に関しては他の2つの術式に比べると劣るともいわれています。

いずれの手術の場合でも、手術時間は20~60分程度で済み、入院の必要もなく日帰りで手術を受けることが可能です。

角膜移植の合併症と手術後に気をつけること

角膜移植をするにあたり、いくつか起こりうる合併症もあります。例えば、眼内や角膜への感染症、緑内障による眼圧の上昇、移植片に対する拒絶反応、傷口がうまくつかない移植不全などがみられます。また症状が再発することもあります。 

手術後に最も気をつけなければいけないのは外傷と感染です。角膜移植をした患者さんのうち、約1%は外傷によって失明しているという報告があります。白内障(はくないしょう:目の水晶体という部分が白く濁る病気)などに対する眼球内の手術と比べても、角膜は術後の外傷によって失明する確率が高いのです。

また高齢の白内障患者の手術をする機会も増えてきており、高齢者は感染リスクが高いのも特徴です。これは医療者側の問題かもしれませんが、抗菌薬の使い方にも医療者側の理解が必要だと感じています。

それ以外にはむしろ移植後に気をつけることは特にありません。日常生活を普通に送ることができますし、運動も自由にしていただいて構いません。

角膜移植を進歩させるにあたり木下茂先生が尽力されてきたこと

日本アイバンク協会の常任理事として、角膜移植のために提供眼を増やそうと努力をしてきました。しかし残念ながら、これに関して日本は長年提供眼が増えておらず、年間2000件程度で推移しているのが現状です。

そのほかにも学会活動としては、日本眼科学会、日本眼内レンズ屈折手術学会、日本角膜学会、日本再生医療学会、日本組織移植学会等の役員としても活動を重ねてきました。

私はなぜか研修医の頃から重症の眼疾患の患者さんを担当することが多く、治療しても治らないという患者さんをたくさん診てきました。その中で、もっと患者さんに優しく、効果的な治療法はないのか、ということを自分なりに考え続けてきています。

具体的には、難治性の角膜疾患に対する新しい外科的治療など、あくまで生理学、病理学に基づいたうえでの外科的治療などです。角膜移植に限らず、角膜再生医療もその延長線上の治療方法のひとつといえます。

 

大阪大学医学部卒業。1992年より、京都府立医科大学眼科学教室教授に就任。2012年には同大学副学長に就任し、2015年より同大学特任講座感覚器未来医療学教授として、眼科領域の再生医療に広く携わっている。角膜を専門領域とし、不治の病と言われていたモーレン潰瘍の新しい外科的治療を確立するなど、難治性眼疾患の新たな治療法の開発に尽力している。

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