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インタビュー

東京ベイ・浦安市川医療センター、ハートチームの挑戦

東京ベイ・浦安市川医療センター、ハートチームの挑戦
渡辺 弘之 先生

東京ベイ・浦安市川医療センター 副センター長 循環器内科/ハートセンター長

渡辺 弘之 先生

田端 実 先生

東京ベイ・浦安市川医療センター 心臓血管外科部長、虎の門病院 循環器センター外科特任部長

田端 実 先生

小船井 光太郎 先生

東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器内科部長

小船井 光太郎 先生

皆さんは「ハートチーム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

循環器疾患(心臓や血管の病気)を持つ患者さんにとって、内科的治療が最適なこともあれば外科的治療が最適なこともあります。つまり、内科的治療を担当する循環器内科と外科的治療を担当する心臓血管外科が協力しながら一人の患者さんを診療していくことが必要です。

東京ベイ浦安市川医療センターでは2年前に「ハートチーム」を結成し、診療に当たってきました。東京ベイ浦安市川医療センターが目指したハートチームは循環器内科、心臓血管外科が関わるだけでなく、さらにその先を目指したものでした。

東京ベイ浦安市川医療センターのハートチームを牽引されるハートセンター長の渡辺弘之先生と、心臓血管外科部長の田端実先生にお話をお聞きしました。

最近ではハートチームの試みは世間に広まりつつあります。多くの場合は、すでに確立した循環器内科というチームと心臓血管外科というチームをどうジョイント(連携)していくのかという発想がもとになっています。しかし、私達のハートチームは文字通りゼロからのスタートでした。何の文化も体制もない、それこそ患者さんもゼロの状態から始まりました。

しかし、この状況は私達にとって必ずしも悪いことばかりではありませんでした。なぜなら、縦割りや横割りが確立していない、まっさらの状態からスタートできたからです。そのため、最初から「個人ではなく全体で、チームで医療を行うことこそが自然である」という文化を作り上げることができました。

これにより多くの人がハートチームに関わる体制が整いました。循環器内科・心臓血管外科・救急科・集中治療科・総合内科・腎臓内科……という各科だけでなく、看護師・臨床工学技士・理学療法士・検査技師など多くのスタッフがハートチームに関わります。このように、病院全体が一つの複合体になりつつあるのです。

関わる人々が多いと、様々なことができる可能性や幅が広がる一方で、意識を統一することが難しくなります。ときには、少ない人数で個人プレーをするほうが簡単なのではないかと考えてしまうこともありました。しかし私達が実際に学んだのは、疾患が重篤になり治療の難易度が上がるほど、チームの力が必要になることです。そしてそんな時にこそ『共通目的』がチームをまとめるコネクターになります。私たちはチームで戦う価値に気づいています。

チーム作りは、全くロールモデルがない中で挑戦の日々です。私達は個人同士や他職種同士での衝突は避けません。あえて「仕方のないことだ」と考えるようにしています。プロフェッショナル同士がお互いの懐に踏み込む勇気はチームビルディングになくてはならない鍵やコツかもしれません。

衝突を避けていても他所の方が助けてくれるわけではありません。当事者同士で解決する必要がありました。その際、嫌なことは本人の前で言うなど、ごく基本的なコミュニケーションにも気をつけるようにしました。

たとえば心臓手術をした後の管理について、心臓外科医と集中治療医とで考え方が大きく違うことがあります。そんな時には、その事実に対してしっかりと向き合い、本音で話し合います。お互いのバックグラウンドや診療に対する姿勢の違いは、うわべだけ一緒に仕事をしていても解決しない部分です。

違いを表面化させ、事実をテーブルに並べ、共通目的に根ざして話し合い、互いにリスペクトする。このようなプロセスが、診療のレベルをさらに向上させています。 

臨床の治療方針は毎朝の循環器内科・心臓血管外科のカンファレンスで決めます。よくある週に1回というものではなく、毎朝開催します。参加メンバーはリハビリ科や麻酔科も含めて15人程度です。

 

一方、緊急の患者さんに関しては毎朝のカンファレンスすら待つことができません。たとえば、バイパス手術とカテーテル治療のどちらも選択肢となるような「不安定狭心症」の患者さんに緊急治療が必要な場合、多くの施設では緊急性を理由に循環器内科医だけの判断でカテーテル治療が選択されることがよくあります。

私たちのチームでは、そのような場合はすぐに心臓血管外科医がカテーテル室に駆けつけて、循環器内科と心臓血管外科によるごく短い緊急ミーティングを行い、最適な治療方針を決定します。こうして、常に最速の決断とチームによる最適な決断を両立しています。

また、他院の医師から心臓手術目的で患者さんをご紹介いただいた場合や、カテーテル治療目的でご紹介いただいた場合も、改めてハートチームで最適な治療が何かを検討します。万が一紹介医師の意向と異なる場合は、紹介医師と直接話し合って、治療方針を決定していきます。ごく短い時間でも必ず情報交換をし、コンセンサスを得る。この原則を大切にすることで、チーム全体の風通しが徐々に良くなっていきました。

振り返りも大切にしています。とくに合併症があった患者さんについては、関係部署から多くの人が集まり、その原因と今後の改善点を深く追究します。これは医療用語では「M&Mカンファレンス」(Morbidity & Mortality・合併症および死亡)といわれます。

さらにチームの仕組み作りや運営にも注目しています。誰かがシステムの非効率性や問題点に気づけば、その都度改善するために話し合いをします。たとえば、「システムを変更しよう」となればその都度話し合いを行います。このように、私たちは常に何か行動を起こすための話し合いを行っているのです。

ここまでコミュニケーションの大切さについてお話ししてきました。コミュニケーションと同様に大切なのはひとりひとりのスキル向上です。最高のチーム医療には、チームワークだけでなく個々の高いスキルが欠かせません。あえて上級医が一方的に指導する形での教育はそれほど行っていません。定期的な勉強会をセッティングすることも行いませんでした。しかし、それでもビジョンが共有され、全体として成長していくチームは強力です。個人だけの向上心やモチベーションには限界がありますが、ビジョンが共有されると皆が切磋琢磨し、知らず知らずのうちに優秀になっていきます。

今では100人以上が参加する勉強会から数人単位の勉強会までさまざまな勉強会が開催されています。これは一切強制をしておらず、スキル向上のためにぜひ行いたいと自発的に作られた会です。東京ベイ・浦安市川医療センターは教育病院として有名になりつつありますが、「教えてもらって当然」という状況でありません。皆が自発的に学び、研鑽をしているのです。

その結果、今はチームだけでなく個人も際立ってきました。一人ひとりがスタープレイヤーになろうとしています。これはもちろん医師だけの話ではなくコメディカルスタッフにもいえることで、個々のレベルが上がるとともに全体のレベルもどんどん上がってきています。コミュニケーションや個人のスキル向上が、結果として、チームのクオリティ向上に繋がっています。

ハートチームが立ち上がって2年が経ちました。循環器内科医が7名、心臓血管外科医が4名、診療看護師1名で、心臓カテーテル治療は年間400〜450件、心臓・大動脈の手術は年間300件を行えるようになりました。

続々と患者さんが増えていくなかで「待たせない」ことが必要だと考えています。患者さんが増えすぎてあまりに待ち時間が増えてしまうと、適切な治療を適切なタイミングで受けられなくなってしまうからです。特に循環器疾患では、内科的治療でも外科的治療でも治療に至適時期があります。限られた時間で最適な治療を見つけること、それを限られたスタッフで実現することが求められています。こうした問題を解決するのがチームの「質」の向上であると考えています。

現在、私たちが心臓や血管の病気に対して治療を行うとき、チームとしてさまざまな選択肢を持つことができます。さらに、さまざまなエキスパートがいる総合病院であることから、心臓・血管以外の併存疾患に対しても適切な治療選択を行うことが可能です。他科のエキスパートとの連携も、ハートチーム内の連携と同じ考え方で行っています。

しかし、どうしても当院で最適な治療ができず、他の病院の方が望ましいという場合もあります。その場合には、患者さんに適切な病院を紹介し、その病院に適切な情報を提供しています。自分たちの病院だけで抱え込んで最適な医療を提供できないことは、患者さんのためになりません。

近年、医療関係者の受診が増えてきました。プロが勧める病院になっているのはとても喜ばしいことだと考えています。

最後に、これからの東京ベイ・浦安市川医療センターハートチームが目指すことをお話しします。

まずは最適な医療を最高レベルでかつ最適なタイミングで提供できるチームになることが第一です。さらに臨床研究に積極的に取り組み、何が最適な医療なのかということを明らかにしていき、それを世界に発信していきます。教育面では、世界に通用する循環器エキスパート(医師、コメディカルスタッフ)を育てられる施設を作り上げます。

医療における柱はこの臨床・研究・教育ですが、加えて他にはないマネジメントやシステム作りに挑戦していきます。これにより、多くの患者さんのお役に立ち、また社会全体にも貢献できることを目指していきたいと考えています。

東京ベイ・浦安市川医療センターハートチーム ウェブサイト

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