冠動脈カテーテル治療(PCI)とは、狭くなった心臓の冠動脈にカテーテルを挿入し、バルーンやステントで拡張する治療です。バイパス手術に比べて低侵襲(患者さんの負担が少ない治療法)な治療として確立しています。東京都立多摩総合医療センター 副院長(前循環器内科部長)の田中博之先生に、冠動脈カテーテル治療後の経過とフォローについてお話をうかがいました。
『冠動脈治療の最新法 冠動脈カテーテル治療とは』でお話ししたように、冠動脈カテーテル治療(PCI)の最大のメリットは開胸手術よりも低侵襲であることです。具体的には局所麻酔で行う治療であり、治療時間も短時間で入院日数も短期間で済みます。ただし、ステントを留置したところに血栓ができないよう、血液を固まりにくくする薬を服用し、再発がないか定期的にチェックすることが必要となります。
もうひとつ注意すべき点は、病気の原因が動脈硬化によっておこるので、そのリスクファクターである高血圧・糖尿病・脂質異常症などの管理をきちんと行っていただく必要があることです。そうしなければ、また別のところに同じような狭窄が起こってしまいますので、実はこれが一番重要なことといえます。
冠動脈カテーテル治療(PCI)を行った後に服薬が必要な薬剤は大きく3種類に分かれます。ステント血栓症を予防するための薬・抗狭心症薬・そして再発予防のための薬です。
●ステント血栓症の予防:血栓予防薬(抗血小板薬2剤併用)
●抗狭心症薬:長時間作用型Ca拮抗薬、β遮断薬、長時間作用型硝酸薬
●再発予防:高脂血症薬(スタチン)、ACE阻害薬、ARB等
われわれが常日頃感じているのは、動脈硬化の管理がなかなか行き届かないということです。医師の指示を守ってくださる患者さんもいれば、それが難しい方もいらっしゃいます。これは医師だけの力ではなかなか難しく、栄養士さんや薬剤師さんなど、いろいろな専門職スタッフに入っていただいてサポートをしていかなければ、再発を完全に防ぐことはできないと考えています。
しかし実際にこれを実行するのは難しいところです。多摩総合医療センターでは、退院後、開業医の先生方をご紹介して、そちらで高血圧・糖尿病・脂質異常症などのリスク要因となる疾患の管理を中心に行っていただき、治療後のメンテナンスはわれわれが担当するというように分担しています。開業医の先生方のほうが生活改善や指導などに時間をかけられますので、そういった意味でも分業を推奨しています。
多摩総合医療センターでは、カテーテル治療で入院した方には食事指導と薬剤指導が入ることになっていますので、この2つについては入院中に集中して行うようにしています。
体内にステントが入っているからといって、そのことで何か生活上の制限や不都合が生じるということはありません。退院後は通常どおりの生活をしていただくことができます。
東京都立多摩総合医療センター 副院長(前循環器内科部長)
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