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インタビュー

臨床試験とは何か-正しく臨床試験を行うために知っておくべきこと

臨床試験とは何か-正しく臨床試験を行うために知っておくべきこと
山崎 力 先生

国際医療福祉大学 大学院 医学研究科 医学専攻・公衆衛生学専攻 教授

山崎 力 先生

臨床研究とは、主に病気の診断や治療、予防法などを改善することを目的として、「人」を対象に行われる医学研究のことをいいます。GCPという省令(ルール)に則って実施される治験とは異なり、臨床試験は倫理指針というマナーのもとで行われています。臨床試験をどのような考え方で実施していくかという「デザイン」の部分に間違いがあると、思わぬ落とし穴におちいる可能性もあります。臨床試験の問題点や限界について、東京大学医学部附属病院臨床研究支援センター “CresCent” センター長の山崎力先生にお話をうかがいました。

臨床試験は多くの場合、治験後に行われます。臨床試験の主な目的は、医薬品や医療機器の「本当」の有効性と安全性を明らかにすることです。ですから、臨床試験を行うことにより将来国民にとって、あるいは患者さんにとって何らかのメリットがあるような仮説が成り立つものでなくてはなりません。2種類の薬のどちらがよいかまったくわからないまま、当てずっぽうに試験をするというのでは困ります。

これまでの基礎研究や観察研究等の結果、この新しい薬のほうが従来のものより生存期間を延ばす可能性がある、あるいは心筋梗塞を減らす可能性があるといった、仮説をたてる根拠となるデータが必要です。その上でその仮説が正しいかどうかを証明するために臨床試験を実施するという流れになります。この順番は基本的な考え方として理解しておくべきです。 

近年問題になった高血圧治療薬の臨床試験では、やはり仮説そのものが適正なものではなかったといえます。バルサルタン(商品名:ディオバン®)という薬を服用しているグループと、それ以外ならカルシウム拮抗薬など他のどんな降圧剤を使ってもよいというグループとの比較をしようとしたのですが、もともと勝てる見込みのない話であったにもかかわらず、圧倒的な差でディオバン優位の結果が示され、後にそれがデータの捏造によるものであったということが明らかになりました。

製薬企業側の事情などさまざまな背景があったとはいえ、やはり適正とは言いがたい仮説の立て方、臨床試験に対する考え方の甘さがあったために、このような結果を招いたのだともいえます。つまり、臨床試験のデザインに問題があったということです。この一件が臨床試験におけるデータの捏造として報道されたために、国民から「臨床試験とはこんなものか」と思われてしまった部分があります。

しかし、医薬品の製造承認はやはりあくまでも治験というもので評価しなければなりませんし、場合によってはすでに世の中に出た薬についても、本当に効果があるのかといったことを、正しい仮説のもとで臨床試験によって調べることが必要です。私たちも含め、臨床研究に携わるものは襟を正して、知識と理解を深めていかなければなりません。

治験にせよ臨床試験にせよ、参加していただいた患者さんには利益はありません。純粋なボランティア精神で参加していただいています。しかしながら、2種類の薬を比較する試験でその差が少ししかなかったとしても、臨床試験に参加することで、どちらの薬も少しずつ治療成績が良くなるという傾向があります。特に抗がん剤ではプラセボ(偽薬)を服用していても、標準的な治療を受けている方に比べて生存期間が延長することがよく知られています。

臨床試験や治験を行うことで正確にデータが取られているということもありますし、医師やメディカルスタッフの管理のもとで実施していますから、何かあってもすぐに対応できる環境があることも理由のひとつでしょう。また患者さん自身の治療に対するモチベーションが上がることも関係していると考えられます。

AとBという薬を比較する臨床試験で、Aのほうが少し良いだろうという仮説を持って実施するときに、臨床試験のことをよく知らない医師が何の悪気もなく「Aは新しく出たとても良い薬で、Bは標準的な薬です」といった情報を強調して患者さんに伝えてしまうと、Aの薬を服用することになった人は「当たりを引いた」と思うだけで病気が良くなり、逆にBの薬を服用することになった人はがっかりして悪くなってしまうということがあります。これは人間の性格として、どうしても起こりうることです。

二重盲検といって、AとBのうちどちらの薬を渡されているかわからないようにして行う試験でも、どちらの薬か気づいてしまう人がいます。ましてやオープン試験であれば、AとBのどちらを渡されているかが最初からわかっています。そうすると、2つの薬にほとんど差がなかったとしても、いい薬だと言われただけで元気になってしまい、そうでないほうは悪くなってしまう可能性があります。そういった臨床試験の限界というものを理解して、そうならないように患者さんへの説明には配慮する必要があります。

 

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  • 国際医療福祉大学 大学院 医学研究科 医学専攻・公衆衛生学専攻 教授

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