インタビュー

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の検査と診断

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の検査と診断
加藤 宏之 先生

介護老人保健施設恵仁ホーム 施設長

加藤 宏之 先生

この記事の最終更新は2016年04月24日です。

ALSは、最初の症状が現れてから2~5年で自発呼吸ができなくなるといわれているため、早期に正しい診断をすることが重要です。国際医療福祉大学 脳神経内科の加藤宏之先生にALSの検査と診断についてお話をうかがいます。

ですから、本当に最初に症状が現れてから診断がつくまでに1年程度を要するケースもあります。ALSは、人工呼吸器などのサポートを行わなければ5年以上の生存は非常に困難といわれていますから、はじめの症状が現れてからできる限り早く正しい診断を受けることが望ましいといえます。

ALSは手足に異常を感じる症状が現れることが多いため、最初に整形外科を訪れる方も少なくありません。ですから、もし手足が痩せてきた、あるいは手足に力が入らないといった症状がみられる場合は、神経内科を受診するのが望ましいということを多くの方に知っていただきたいと思います。ALSの症状は、出たり消えたりせず常にあって、それが徐々に進行していきます。具体的には、「ちょっと力が入らないな」という状態が治らず、それが1~2ヶ月経つともっと悪くなるというイメージです。

そのため、診察をしてALS以外の病気を除外して診断する「臨床診断」が用いられます。臨床診断は、ALSに精通した経験のある専門家でなければできないので、神経内科を受診することが望ましいのです。

下記の条件を満たす場合、ALSと診断します。

ALSの診断基準:上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方に症候があるのがALSの特徴で、(3)に当てはまるほかの病気ではないことで鑑別していく

(1)以下の①-④の全てを満たすものを、筋萎縮性側索硬化症と診断する。

①成人発症である。

②経過は進行性である。

③神経所見・検査所見で、下記の1か2のいずれかを満たす。

身体を、a.脳神経領域、b.頸部・上肢領域、c.体幹領域(胸髄領域)、d.腰部・下肢領域の4領域に分ける(領域の分け方は、2 参考事項を参照)。

下位運動ニューロン徴候は、(2)針筋電図所見(①または②)でも代用できる。

1. 1つ以上の領域に上位運動ニューロン徴候をみとめ、かつ2つ以上の領域に下位運動ニューロン症候がある。

2. SOD1遺伝子変異など既知の家族性筋萎縮性側索硬化症に関与する遺伝子異常があり、身体の1領域以上に上位及び下位運動ニューロン徴候がある。

 

④ 鑑別診断で挙げられた疾患のいずれでもない。

(2)針筋電図所見(神経が障害されているかどうか、進行性に起こっているかどうかがわかる

①進行性脱神経所見(ALSだけに見られる特徴):線維性収縮電位、陽性鋭波など。

② 慢性脱神経所見:長持続時間、多相性電位、高振幅の大運動単位電位など。

(3)鑑別診断(これらの中には治る可能性がある疾患が含まれるため見逃さないことが重要

①脳幹・脊髄疾患:腫瘍、多発性硬化症頸椎症、後縦靭帯骨化症など。

②末梢神経疾患:多巣性運動ニューロパチー、遺伝性ニューロパチーなど。

③筋疾患:筋ジストロフィー、多発筋炎など。

④下位運動ニューロン障害のみを示す変性疾患:脊髄性進行性筋萎縮症など。

⑤ 上位運動ニューロン障害のみを示す変性疾患:原発性側索硬化症など。

厚生労働省難病情報センターより引用

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000089881.pdf

  • 介護老人保健施設恵仁ホーム 施設長

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    加藤 宏之 先生
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    ALS(筋萎縮性側索硬化症)、多系統萎縮症、脊髄小脳変異症、パーキンソン病など神経難病医療のエキスパートとして広く知られる。現在は介護老人保健施設恵仁ホーム 施設長として学術、臨床の両面で後進の指導にも力を入れる。

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