鼻水が出ると、「ひどくならないように」「重症化しないうちに」とごく軽い症状で病院を受診する親御さんがおられます。しかし、鼻水は体が本来持っている防御機能によって出るため、多くは治療の必要がありません。かたおか小児科クリニック院長の片岡正先生にお話をうかがいます。
たとえば鼻水に「咳」が加わると親御さんは「風邪をひいている」とイメージし、さらに「放っておいたら中耳炎や肺炎に発展するのではないか」と心配になります。これは親御さんに共通した気持ちでしょう。
大事に至らないうちに対処したい気持ちは理解できますが、軽い症状ならば放っておいても大丈夫であるというのが私の考えです。実際に、診察してみると必ずしも受診の必要はない場合が多く、本来治療の必要がないにもかかわらず、過剰に医療が介入してしまっている現状を問題だと感じています。
・水のようにずるずると出続ける鼻水、ひどい鼻づまり:アレルギー性鼻炎
・水のようにずるずると出続ける鼻水、色のついた鼻水、どろどろした鼻水:風邪
・滝のように出る鼻水、とにかく鼻水が多い、発熱、喘鳴、中耳炎:RSウイルス感染症
*副鼻腔(ふくびくう):顔面の内側の骨の中にある空洞。鼻腔に隣接している。
受診の必要がない鼻水を見分けるためにも、まずは鼻水がどんな状態であるか・症状がどのくらい続いているかをよくみることが大切です。また、子どもがよく眠れているか、おっぱいを飲めているか・食事が摂れているかも確認しましょう。つまり、鼻の症状によって息苦しくて眠れない、おっぱいが飲めないという状態になっていたら受診をしたほうがよい状態といえます。受診の目安は、子どもが「つらそうにしていて日常生活に影響しているかどうか」です。
たとえば、黄色い鼻水が出ている場合、抗菌薬を処方されることがあります。これは、黄色い鼻水が細菌感染(副鼻腔炎など)によるものと診断されるためです。
しかし、鼻水が黄色くなるのは、細菌感染を起こしているときだけではありません。風邪(よくあるウイルスの感染症)などが治りかけているときにも鼻水が黄色くなります。
そもそも鼻水が黄色く見えるのは、白血球が混じっているからです。白血球は体に悪いものが入ってきたときにそれらを排除するために働きます。ですから、細菌と闘っている最中にも鼻水に混じることがありますし、闘い終わった後も死骸として鼻水に交じることがあるのです。つまり、「鼻水が黄色い=細菌感染」ではありません。ほかに細菌感染症を疑うような症状がない場合は、むやみに抗菌薬を使うことは避けるべきでしょう。
「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。
【先生方の記事が本になりました】
かたおか小児科クリニック 院長
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