2016年にハーバード・メディカル・スクールで行われたセミナーでは、医療に頼りきるのではなく、個々の行動を変えることによって健康を維持する「ビヘイビアヘルス」という概念が提唱されました。ビヘイビアヘルスには記事1『健康のために運動は有効? 行動を変え健康維持を目指す「ビヘイビアヘルス」とは』でご紹介した運動のみならず、食習慣、社会環境を変えるといったアプローチも存在します。肥満を回避する食習慣、環境が健康に与える影響について、東京慈恵会医科大学附属病院の浦島充佳(うらしま みつよし)先生にお話を伺いました。
イギリスの医学雑誌『NEJM:(New England Journal of Medicine)』2016年のデータによると、世界で発症しているがんの9%は肥満を原因としています。記事1でお話ししたビヘイビアヘルスには、体重コントロールも含まれます。食習慣を見直し、運動を心がけることで、あらゆる疾患を予防できる可能性があります。
肥満は生活習慣による影響が大きいため、幼い頃から正しい習慣を身につける必要があります。食生活では実際にどのような点に注意すべきなのでしょうか。アメリカの医学雑誌『JAMA:The Journal of the American Medical Association』2017年のデータによれば、以下の条件が肥満につながるとしています。
<肥満につながる食習慣>
両親は、子どもの食習慣に介入できる数少ない存在です。長年にわたって継続した食習慣を大人になってから変えることは難しいので、子どものうちから健康的な食習慣を心がけることが大切です。
社会環境・生活習慣が寿命に与える影響について調べたデータがあります。この実験では、以下のような条件変化がどのように寿命に影響するか、その度合いを調べました。
この実験では、寿命にもっとも大きな影響を与える条件は、社会的なつながりの強さであるという結果が出ました。つまり、社会(家族・職場・学校・地域など)から孤立することが、人の健康にとって悪影響を及ぼすことがわかったのです。1日15本の煙草をやめるよりも、社会とのつながりを強く変化させることが寿命を伸ばすという結果には、驚かれる方も多いのではないでしょうか。
このような結果から、ビヘイビアヘルスによって健康を維持しようとしたとき、社会とのつながりを保つといった行動も非常に重要であるといえます。それはたとえば、家族と一緒に暮らす、地域の集まりに参加する、仕事をするなどが挙げられます。
健康維持のためにも積極的に社会とのつながりを持ち、相互に協力できる関係性を保つことが大切です。
私は以前、椎間板ヘルニアを患いました。医師に手術を勧められましたが、それを断って筋力トレーニングとストレッチによって完治した経験があります。椎間板ヘルニアになる前は生活習慣についてあまり注意したことがなく、体重・血圧ともに平均よりも高い数値でした。しかしそのとき始めた運動習慣によって体重・血圧・コレステロール値は正常に近くなったのです。
この経験を通して私自身、医者でありながらも、医療に頼りきりではなく行動を変えることによって健康を増進するビヘイビアヘルスに注目するようになりました。
患者さん自身が自分で健康をつくるという概念は非常に大切です。一方で、医療従事者のなかでも無駄な検査・薬を用いることを極力避けるべきだという考え方が広まりつつあります。この動きを「Choosing wisely:賢く選択する」と私たちは呼んでいます。
これまで、病気になった患者さんは医師の指示を仰ぎ、医療行為による治療を受けることが一般的でした。しかしこれからは、薬に頼りきりではなく、患者さん自身が「自分が主治医」という気持ちで健康を維持していくことが重要になっていくと考えます。
記事1『健康のために運動は有効? 行動を変え健康維持を目指す「ビヘイビアヘルス」とは』でもご紹介したように、運動によってあらゆる疾患リスクを軽減することが可能であり、運動以外にも自ら行動を変えることで環境を変化させ、肉体的・精神的に健康な生活を維持できるのです。ビヘイビアヘルスの浸透によって、患者さんが一人でも多く健康を維持し、長生きできるようになれば理想的であると考えています。
東京慈恵会医科大学 教授
浦島 充佳 先生の所属医療機関
関連の医療相談が10件あります
右の股ぐらの辺りが、キンキンと痛みを感じる
昨日のお昼くらいから急に、お腹の下あたりの、右足のつなぎ目、いわゆる、またぐらの、おへその右下、Vラインあたりから、キーンやギューっといった痛み?違和感を座っていたり、少し動くと感じるようになり、寝ていても起こります。 普段私は運動しませんが、これは、単なる筋肉痛なのか、それとも神経系の症状で、放っておいてもよろしいでしょうか? また鎮痛剤でおすすめはありますでしょうか?ご回答よろしくお願いします。
風邪か熱中症かわかりません。
土曜日(12日)に寝るまでは何ともなかったのですが、エアコンの設定温度を冷房24℃にして寝ました。 日曜日の朝に起きた瞬間に強烈な吐き気を催し、トイレで吐きました。そこから身体全体(特に両足)の倦怠感が起き、熱も37.8℃ありました。咳、鼻づまりはありませんでした。 今はエアコンの温度を見直して、熱冷ましを飲んだら36.6〜36.8℃の体温です。 寒気、味覚や嗅覚障害などはありません。 若干の倦怠感と食欲不振、咳はほとんどありませんが僅かな喉の違和感があります。 近隣の病院は盆休みのままで外出する体力は回復しておらず、今は風邪薬を服用すべきでしょうか?
推算GFR値が数年前から低いです。どのようなことを気を付けたらよいでしょうか?
数年前からeGFRが良い時で53.6で今月は42.9でした。減塩には気を付けているつもりですが、どのようなことに気を付ければよいでしょうか。夜間には1回トイレに起きるぐらいで、昼間も頻尿には感じられません、浮腫も感じません。
発音出来ないし単語がわからず歩行出来ない
父のことで相談させて頂きます。最近思いついたことを発音することが難しいようで、頭で考えたことをなかなか言えず かんしゃくをおこしてしまうことがあります。また、五千円札、千円札がわからず 女の人、男の人としか、わからないようです。歩行も小刻みな動きで何かにつかまらないとなかなか進めず転倒してしまうことも多いです。このような症状だと何科を受診したらいいでしょうか教えて下さい。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「禁煙」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。