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健康維持のための見直すべきこととは? 食習慣や社会環境が健康に与える影響

健康維持のための見直すべきこととは? 食習慣や社会環境が健康に与える影響
浦島 充佳 先生

東京慈恵会医科大学 教授

浦島 充佳 先生

この記事の最終更新は2017年07月12日です。

2016年にハーバード・メディカル・スクールで行われたセミナーでは、医療に頼りきるのではなく、個々の行動を変えることによって健康を維持する「ビヘイビアヘルス」という概念が提唱されました。ビヘイビアヘルスには記事1『健康のために運動は有効? 行動を変え健康維持を目指す「ビヘイビアヘルス」とは』でご紹介した運動のみならず、食習慣、社会環境を変えるといったアプローチも存在します。肥満を回避する食習慣、環境が健康に与える影響について、東京慈恵会医科大学附属病院の浦島充佳(うらしま みつよし)先生にお話を伺いました。

イギリスの医学雑誌『NEJM:(New England Journal of Medicine)』2016年のデータによると、世界で発症しているがんの9%は肥満を原因としています。記事1でお話ししたビヘイビアヘルスには、体重コントロールも含まれます。食習慣を見直し、運動を心がけることで、あらゆる疾患を予防できる可能性があります。

肥満は生活習慣による影響が大きいため、幼い頃から正しい習慣を身につける必要があります。食生活では実際にどのような点に注意すべきなのでしょうか。アメリカの医学雑誌『JAMA:The Journal of the American Medical Association』2017年のデータによれば、以下の条件が肥満につながるとしています。

<肥満につながる食習慣>

  • 食塩のとりすぎ
  • ナッツ、種子摂取不足
  • 加工肉(ハム、ソーセージなど)のとりすぎ
  • 魚の油(オメガ3)摂取不足
  • 野菜摂取不足
  • 果物摂取不足
  • ジュースのとりすぎ
  • 全粒粉摂取不足
  • 不飽和脂肪酸よりも炭水化物、飽和脂肪酸の摂取量が多い
  • 赤身肉(牛肉、豚肉、羊肉など)のとりすぎ

両親は、子どもの食習慣に介入できる数少ない存在です。長年にわたって継続した食習慣を大人になってから変えることは難しいので、子どものうちから健康的な食習慣を心がけることが大切です。

健康的な食事

社会環境・生活習慣が寿命に与える影響について調べたデータがあります。この実験では、以下のような条件変化がどのように寿命に影響するか、その度合いを調べました。

  • 禁煙する—1日に15本の煙草を吸い続ける
  • 禁酒する—過度なアルコール摂取(1日に6杯以上)
  • 痩せ—肥満(BMI値による分類)
  • 大気汚染の少ない環境—大気汚染の多い環境
  • 社会的なつながり(サポート)が強い—社会的なつながり(サポート)が弱い

この実験では、寿命にもっとも大きな影響を与える条件は、社会的なつながりの強さであるという結果が出ました。つまり、社会(家族・職場・学校・地域など)から孤立することが、人の健康にとって悪影響を及ぼすことがわかったのです。1日15本の煙草をやめるよりも、社会とのつながりを強く変化させることが寿命を伸ばすという結果には、驚かれる方も多いのではないでしょうか。

このような結果から、ビヘイビアヘルスによって健康を維持しようとしたとき、社会とのつながりを保つといった行動も非常に重要であるといえます。それはたとえば、家族と一緒に暮らす、地域の集まりに参加する、仕事をするなどが挙げられます。

健康維持のためにも積極的に社会とのつながりを持ち、相互に協力できる関係性を保つことが大切です。

私は以前、椎間板ヘルニアを患いました。医師に手術を勧められましたが、それを断って筋力トレーニングとストレッチによって完治した経験があります。椎間板ヘルニアになる前は生活習慣についてあまり注意したことがなく、体重・血圧ともに平均よりも高い数値でした。しかしそのとき始めた運動習慣によって体重・血圧・コレステロール値は正常に近くなったのです。

この経験を通して私自身、医者でありながらも、医療に頼りきりではなく行動を変えることによって健康を増進するビヘイビアヘルスに注目するようになりました。

浦島充佳(うらしま みつよし)先生

患者さん自身が自分で健康をつくるという概念は非常に大切です。一方で、医療従事者のなかでも無駄な検査・薬を用いることを極力避けるべきだという考え方が広まりつつあります。この動きを「Choosing wisely:賢く選択する」と私たちは呼んでいます。

これまで、病気になった患者さんは医師の指示を仰ぎ、医療行為による治療を受けることが一般的でした。しかしこれからは、薬に頼りきりではなく、患者さん自身が「自分が主治医」という気持ちで健康を維持していくことが重要になっていくと考えます。

記事1『健康のために運動は有効? 行動を変え健康維持を目指す「ビヘイビアヘルス」とは』でもご紹介したように、運動によってあらゆる疾患リスクを軽減することが可能であり、運動以外にも自ら行動を変えることで環境を変化させ、肉体的・精神的に健康な生活を維持できるのです。ビヘイビアヘルスの浸透によって、患者さんが一人でも多く健康を維持し、長生きできるようになれば理想的であると考えています。

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