
人間は古来、体を十分に動かして生活をしていました。ところが文明の発展により私たちは移動手段やインターネットなどを得たため、現代の生活では運動不足に陥りがちです。2016年にハーバード・メディカル・スクールで行われたセミナーでは、医療に頼りきるのではなく、日々の行動を変えることによって健康を維持する「ビヘイビアヘルス」の重要性が示されました。ビヘイビアヘルスのなかでも特に、運動がもたらす健康への効果について、東京慈恵会医科大学附属病院の浦島充佳(うらしま みつよし)先生にお話を伺います。
人間の生活スタイルは文明発展に合わせて変化してきました。屋外での活動が多かったかつてに比べて、現代は屋内でインターネットを使って過ごす時間が格段に増えました。また車や鉄道など楽に移動できる手段が登場し、パソコンとインターネットを使って仕事が完結するようになり、以前よりも座っている時間が長い生活へと移行しています。このような生活スタイルの変化によって、私たちは運動不足に陥りやすい環境に生きているといえます。
イギリスの医学雑誌『ランセット』で発表された2012年のデータをご紹介します。これは運動不足がどれほど病気のリスクを高め、平均余命を短縮させているかを調べたものです。
上記のように運動不足はあらゆる疾患のリスクを高め、余命短縮(平均寿命よりも早期に死亡する)に影響を与えていることがわかります。裏を返せば、きちんと運動をすれば、日本人の約16%が平均寿命より長く生きられる可能性があるのです。
「運動不足で病気になったとしても、医療で余命短縮は防げるのでは?」と思われる方もいるかもしれません。しかしイギリスの医学雑誌『NEJM:(New England Journal of Medicine)』で2007年に発表されたデータによると、余命短縮を防ぐ因子について意外な結果が示されました。
下記はアメリカ人を対象に、早死(何らかの要因で50代までに死亡する)を防ぐ因子について調査したデータです。意外にも医療が早死を防いでいる割合は10%にとどまり、最大の因子は行動変容で40%となっています。行動変容とは、禁煙する・アルコールを控える・運動をする・体重をコントロールするなどを含めた、日々の行動改善です。
<早死を防ぐ因子>
2016年にハーバード・メディカル・スクールで行われたセミナーで「ビヘイビアヘルス」という概念が提唱されました。ビヘイビアヘルス(Behavior=行動 Health=健康)とは、行動変容によって健康をつくることを推奨する考え方です。
前述のように、寿命を延ばすためには医療よりも行動変容が重要といえます。医療に頼りきりでは、健康を維持するのに限界があるのです。日々の行動を見直すことで、健康をつくる「ビヘイビアヘルス」の考え方が、世界中で注目され始めています。
<行動変容とは>
ビヘイビアヘルスを実現するための行動変容にはさまざまなものが挙げられますが、なかでも運動に着目してご説明します。
では、実際にどのくらいの運動をすれば私たちは健康を維持できるのでしょうか。WHO(世界保健機関)では、成人なら中等度の有酸素運動(早足のウォーキング・時速6〜7kmのジョギング)を週に少なくとも150分、強度の有酸素運動(30分持続して軽く汗をかくようなエクササイズなど)を週に少なくとも75分行うことを推奨しています。
上記のグラフは、中等度〜強度の運動による死亡リスク低下への影響を表したものです。全く運動をしない方の死亡リスクを1としたとき、中等度〜強度の運動を週に7時間行う方の死亡リスクはおよそ0.7になります。つまり、適度な強度の運動によって死亡リスクが30%低下するのです。
このグラフには、疾患ごとの死亡リスクも示されています。たとえば中等度〜強度の運動を週に5時間行うことで、乳がんによる死亡リスクは約20%低下し、大腸がんによる死亡リスクは30%低下します。
運動は、あらゆる疾患に対する画期的な治療薬といえるのです。
股関節骨折は、実はあらゆるがんよりも注意すべき疾患といえます。なぜなら股関節を骨折すると日常的な動作(歩く・立つなど)が困難になり、急激な筋力低下やQOL(人生の質に関する満足度)の低下に直結するからです。
上記グラフから、中等度〜強度の運動を週に2.5時間(1日におよそ20分)行うことで、股関節骨折による死亡リスクを約40%軽減できることがわかります。
上記のグラフには、運動がうつ病・認知症の死亡リスクを約25%軽減する効果が示されています。
運動がうつ病を予防するメカニズムについては諸説ありますが、今回はそのうち、キヌレン酸(必須アミノ酸の一種であるトリプトファンの代謝によって生成される代謝物)との関係性についてご説明します。脳内にキヌレン酸が蓄積するとうつ病などの精神疾患が起こるといわれているのですが、運動による筋肉の動きが、キヌレン酸の生成酵素を阻害する働きを持つことが近年判明しました。
しかしながらこれは動物実験の段階であるため、今後の研究によってメカニズムのさらなる解明が期待されています。
上記のグラフは、耐糖能異常(糖尿病予備軍とされる病態)の方45,000人を対象に6年間かけて行った実験の結果です。この実験では、耐糖能異常の方(心血管疾患にかかったことがある、もしくはハイリスクである)が1日2,000歩多くごとに、心血管疾患の発症リスクは10%ずつ低下することがわかりました。つまり日々の歩行量を増やすだけでも、心血管疾患の発症リスクを軽減し、健康を維持できるのです。
これまでも、生活習慣を変え健康を維持するという考え方は存在していました。しかし行動変容のもたらす効果として注目すべきは、一次予防(病気になる前からの予防)のみならず、二次予防(病気の診断を受けたあとの死亡・再発・転移のリスク軽減)にも効果を発揮するという点です。たとえば、がんの診断を受けたあとでも行動変容(このケースでは運動)によって、死亡・再発のリスクを37%減少させられるのです。
もし病気の診断を受けても、主治医の指示を仰ぎ投薬などの治療と並行して行動変容を行うことで、病気の転移・再発・死亡のリスクを下げられるのです。
薬に頼りきりではなく、生活を変えることで健康を維持するという考え方はこれからますます大切になっていくと考えています。
記事2『健康維持のための見直すべきこととは? 食習慣や社会環境が健康に与える影響』では、ビヘイビアヘルスの考えに基づき生活習慣・環境がもたらす健康への影響についてご紹介します。
東京慈恵会医科大学 教授
浦島 充佳 先生の所属医療機関
周辺で糖尿病の実績がある医師
朝日生命成人病研究所 所長
内科、腎臓内科、皮膚科、眼科、循環器内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、甲状腺内科
東京都中央区日本橋馬喰町2丁目2-6 朝日生命須長ビル2・3・4F
JR中央・総武線「浅草橋」西口 徒歩5分、都営浅草線「浅草橋」A3出口 徒歩7分、JR総武本線「馬喰町」C4出口から徒歩2分 徒歩7分、都営新宿線「馬喰横山」C4出口から徒歩2分 徒歩8分
医療法人社団平永会 日下診療所 理事長、八丁堀3丁目クリニック 院長
コミュニケーションを大切に、地域に根差したかかりつけ医として
医療法人社団平永会 日下診療所(東京都荒川区南千住5丁目21-7 1F:JR常磐線(上野~取手) 南千住 西口 徒歩5分)の病院ページ。
東京逓信病院 内分泌・代謝内科 部長
内科、血液内科、外科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、感染症内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、総合診療科、病理診断科
東京都千代田区富士見2丁目14-23
JR中央・総武線「飯田橋」西口 徒歩5分、東京メトロ有楽町線「飯田橋」B2a出口(東京メトロ南北線も同様) 徒歩6分、都営大江戸線「飯田橋」A4出口(東京メトロ東西線も同様) 徒歩9分
武蔵野赤十字病院 内分泌代謝科部長
内科、血液内科、リウマチ科、外科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器科、呼吸器外科、消化器科、腎臓内科、循環器科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、内分泌科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、緩和ケア内科、腫瘍内科、感染症内科、代謝内科、膠原病内科、頭頸部外科、総合診療科、病理診断科
東京都武蔵野市境南町1丁目26-1
JR中央線(快速)「武蔵境」南口 小田急バス、ムーバス(境南東循環):武蔵野赤十字病院下車 徒歩10分
朝日生命成人病研究所附属医院 糖尿病内科 診療部長・糖尿病内科部長 兼 治験部長
内科、腎臓内科、皮膚科、眼科、循環器内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、甲状腺内科
東京都中央区日本橋馬喰町2丁目2-6 朝日生命須長ビル2・3・4F
JR中央・総武線「浅草橋」西口 徒歩5分、都営浅草線「浅草橋」A3出口 徒歩7分、JR総武本線「馬喰町」C4出口から徒歩2分 徒歩7分、都営新宿線「馬喰横山」C4出口から徒歩2分 徒歩8分
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