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骨髄異形成症候群(MDS)の検査と治療 年齢・予後予測を考慮した治療法とは
骨髄異形成症候群の治療法は、同種造血幹細胞移植、ビダーザ®という薬剤による治療、輸血や発症した症状に対する治療をする支持療法などがあります。どういった治療を実施するかは、患者さんの年齢や、予後予...
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骨髄異形成症候群(MDS)の検査と治療 年齢・予後予測を考慮した治療法とは

公開日 2017 年 08 月 29 日 | 更新日 2017 年 08 月 29 日

骨髄異形成症候群(MDS)の検査と治療 年齢・予後予測を考慮した治療法とは
千葉 滋 先生

筑波大学医学医療系血液内科 教授

千葉 滋 先生

骨髄異形成症候群の治療法は、同種造血幹細胞移植、ビダーザ®という薬剤による治療、輸血や発症した症状に対する治療をする支持療法などがあります。どういった治療を実施するかは、患者さんの年齢や、予後予測から決めていきます。

記事1『骨髄異形成症候群(MDS)の原因や症状とは? 高齢者に多い血液の病気』では、原因や症状、患者数などをご説明しました。今回も引き続き、筑波大学血液内科千葉滋先生に、骨髄異形成症候群の検査方法と治療法についてお話をうかがいました。

骨髄異形成症候群の検査方法-まずは血液検査

注射器

血液検査で血算を測定する

まず、血液内科に来た患者さんには、血液検査を行い血算*を測定します。骨髄異形成症候群の場合、血液細胞(白血球、赤血球、血小板)が減っているということが最初の所見です。血算の結果によって詳しく検査を行うかを決めます。また、最初から血液像(白血球分画)*などを詳しく検査する場合もあります。

血算…血液中の細胞の数や大きさ、ヘモグロビンの値などをみること。

血液像…白血球の各種類の割合を調べ、パーセンテージ(%)で表したもの。

現在では、血算はもちろん、血液像も器械により自動的に算出されることが一般的になっています。血算や血液像で異常が見つかった場合には、形態異常がないかを検査技師が目視で確認します。形態異常が発見された場合は、MDSを疑い、次の検査へと進みます。

骨髄の検査

血算や血液像で異常が見つかったり、形態異常が疑われたりする場合には、骨髄の検査を行います。骨髄検査には、穿刺吸引検査と、生検検査があります。穿刺吸引検査では、骨髄の中の造血細胞と、血液とが混ざった「骨髄液」を採取し、いろいろな検査を行います。生検検査では、主に病理検査を行います。

  • 顕微鏡検査

まず、骨髄液から標本を作成して細胞を染め、顕微鏡で観察します。骨髄には、流血中には通常流れていない、赤芽球や骨髄巨核球、あるいは顆粒系の未熟な細胞がいますので、こうした細胞の数や形態も観察できます。骨髄異形成症候群では、骨髄は通常、正形成(造血細胞の密度が正常の場合と同じくらい)または過形成(正常よりも多い)であり、赤芽球、骨髄巨核球、顆粒系の細胞の1〜3系統に異形成を認めます。

  • 染色体検査

骨髄異形成症候群の患者さんの約半数に染色体異常が見つかります。染色体異常の同定は、患者さんのその後の経過を予測するためにも有用なので、染色体検査は必ず行います。

  • 細胞表面抗原検査

蛍光色素で標識した抗体を使って、細胞表面抗原を蛍光染色した細胞をフローサイトメトリーという方法で観察します。骨髄異形成症候群では、正常では見られない細胞表面抗原の組み合わせがわかることがあり、診断に有用です。

  • 遺伝子検査

WT-1という遺伝子のメッセンジャーRNAの測定は、ルーチンで行われています。この他、最近では、直接DNAをシークエンスという方法で異常を探すことが行われつつあります(ゲノム解析の説明を参照)。ときに治療選択の参考になることもあるため、後々にでもDNAが調べられるように、検体保存が勧められます。

  • 病理検査

ホルマリンで固定した骨髄液あるいは骨髄生検検体を、HE染色という染色によって染めて、病理医が診断に用います。免疫染色と呼ばれる染色法も用いられ、診断の補助になることもあります。

同種造血幹細胞移植 骨髄異形成症候群の根治療法

骨髄異形成症候群を完治させる治療法は、同種造血幹細胞移植しかありません。「同種」というのは、自分以外の他のヒトの造血幹細胞をもらう、という意味です(ただし一卵性双生児は除く)。

同種造血幹細胞移植の種類

同種造血幹細胞移植は、造血幹細胞をどのようにしてもらうかによって、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血(さいたいけつ)移植があります。

  • 骨髄移植

血縁者(主に兄弟姉妹;最近は親子間も特殊な方法で行われることがあります)、あるいは骨髄バンク(日本には、1つだけの公的な骨髄バンク=ドナーを登録し、説明、同意、検査などを支援し、提供者と患者さんとの橋渡し役をする組織=があります)のドナーから大量の骨髄液を採取し、患者さんに移植(血管から輸注)します。

  • 末梢血幹細胞移植

ドナーに薬剤を注射し、造血幹細胞を骨髄から血液中に動員します。そして、血液を採取し、血液分離装置にかけ、造血幹細胞が多い部分だけを抽出し、患者さんに移植(血管から輸注)します。

  • 臍帯血移植

臍帯血*は、本来、胎盤とともに廃棄されるものですが、これを廃棄せず、「臍帯血バンク」と呼ばれる施設に集めて、凍結保存しています。移植施設では、患者さんに合う臍帯血を取り寄せて、直前に溶かして、これを移植(血管から輸注)します。これを臍帯血移植といいます。

臍帯血…胎児と母体を結ぶ臍帯(へその緒)と、胎盤のなかに入っている血液。造血幹細胞が多数含まれている。

抗がん剤治療と放射線治療で移植前処置

同種造血幹細胞移植をする場合、移植前処置として、患者さんには大量の抗がん剤治療や放射線治療を受けていただきます。前処置を行う理由は二つあります。一つは、患者さんの体の中に残っているがん細胞(骨髄異形成症候群の細胞)をできるだけ排除することです。もう一つは、患者さんの体の中の免疫細胞を排除して、移植した細胞が拒絶されないようにすることです。このように前処置を行ってから健康な状態のドナー由来の造血幹細胞(骨髄血、末梢血幹細胞、臍帯血に含まれる)を移植することで、ドナー由来の健康な造血が回復します。この際、免疫細胞もドナー由来のものに置き換わっていきます。

予後予測と年齢を考慮

移植の前に行う抗がん剤治療と放射線治療は、副作用が大きいため、同種造血幹細胞移植は患者さんへの負担が大変に大きな治療法です。そのため、患者さんの経過の見通しがよいのか悪いのか(予後予測)や、年齢などを考慮して、移植を実施するかどうかを判断します。

たとえば、50歳前後の比較的若い患者さんで、移植を行わなければあと1〜2年しか生きられないなど予後の見通しが悪い場合は、積極的に移植を薦めます。しかし、72歳の患者さんで、移植を行わない場合の余命を3年と予測する場合はどうか。移植の合併症による重度の後遺症や死亡の危険を考え、移植は行わない、という方針がとられるのが一般的です。

移植治療を行えるのは何歳までという明確な線引きはありません。施設によって65歳までや、70歳まで、などと、異なります。また、移植を行う際は、家族など周囲のサポートが必要になります。そのため、医師には、患者さんの意向も聞きながら、総合的な判断が求められます。

移植をしない患者さんにはビダーザ®(アザシチジン)を使用

注射器

年齢や本人の意思などで移植を行わない方、または、いずれ移植を行うが時間に猶予がある方などには、ビダーザ®という薬を使用しています。ビダーザ®とは、骨髄異形成症候群の細胞の中で、多数の遺伝子の働きを変化させると考えられる薬剤です。予後が悪いと予測される骨髄異形成症候群患者の生存を延長することが、臨床試験により証明されています。

1か月のなかで1週間毎日ビダーザ®の注射を打ちます。患者さんによって効き目が異なりますが、効果がみられる方にとっては非常に頼もしい薬です。よく熱を出したり、常に出血することを心配していた患者さんでも、山にハイキングへ行けるほどに回復された例もあります(骨髄異形成症候群の症状については記事1『骨髄異形成症候群(MDS)の原因や症状とは? 高齢者に多い血液の病気』をご参照ください)。

予後の見通しが比較的よい患者さんには支持療法だけを実施

輸血をしている患者さん

比較的予後の見通しがよく、ただちに移植を行ったり、ビダーザ®を投与したりする必要がない患者さんは、必要に応じて支持療法*だけを行うことが選択されます。支持療法には、貧血に対する薬剤の注射や赤血球輸血、細菌感染症にかかっている場合の抗菌薬の投与、血小板減少による出血傾向がある場合の血小板輸血、などがあります。

支持療法…もとの病気の治癒や病気そのものの状態を変える治療ではなく、症状を緩和したり、臓器の障害や合併症などから体を守ったりするための治療。

輸血は重要な支持療法ですが、長期的に繰り返し輸血を行うと、体内に鉄が溜まり、致死的な鉄過剰症をおこすことが大きな問題でした。鉄は一旦体に溜まると、体の外にでていく仕組みがないからです。しかし、現在は、鉄を尿の中に排出する飲み薬が開発されたため、この薬が飲めて効果がある患者さんの場合には、長期に渡り輸血をすることが可能です。

予後予測をするためのゲノム解析

ゲノム

近年、ゲノム*解析技術が大幅に発達しました。ただし、ゲノム解析は、現在はまだ研究として行われています。これを、検査として骨髄異形成症候群の患者さんに行えるようにするための努力が続けられています。ゲノム検査によって、予後の見通しを一人一人の患者さんごとに予想できるようになるのではないか、と期待されるからです。移植をしたほうがよいのか、支持療法がよいのかなど、患者さんにとって適切な治療を行うことができるようになってほしいものです。

ゲノム…細胞がもつDNAの1セット。

ビダーザ®に関しても、効果があるかないかはおよそ半々の確率とされています。ゲノム検査によって、治療前に有効かどうかを予測できるようになり、だれに使用すべきかがわかるようになると、無駄な治療を避けることもできます。ゲノム検査に保険が適応され、一般的な検査に早くなってほしいものです。

治療を支えてくれる仲間が大切

千葉先生

骨髄異形成症候群は高齢になるほど発症する確率が高くなります。もし、骨髄異形成症候群と診断された場合は、主治医と相談をしながら、治療法を選択してください。また、そうなったときにサポーターとなってくれる仲間を、今のうちから見つけておくことも大切です。

 

骨髄異形成症候群(千葉 滋先生)の連載記事

1984年に筑波大学医学専門学群を卒業後、筑波大学附属病院、虎の門病院で卒後内科臨床研修をおこなう。1991年に東京大学大学院医学系研究科の博士課程を修了。2001年 東京大学医学部講師(血液・腫瘍内科)、2003年同助教授(無菌治療部)を経て、2008年より筑波大学大学院人間総合科学研究科(後改組により医学医療系)血液内科 教授に就任。血液内科学を専門とし、熱心に後進の指導にあたっている。

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