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こつずいいけいせいしょうこうぐん

骨髄異形成症候群

同義語
MDS
最終更新日:
2024年09月09日
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2024/09/09
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2023/12/25
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2021/04/22
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2017/04/25
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概要

骨髄異形成症候群(こつずいいけいせいしょうこうぐん)(MDS)とは、赤血球、白血球、血小板といった血液細胞の元となる造血幹細胞に異常が起こり、正常な血液細胞が作られなくなる病気です。正常な血液細胞が減ることで、貧血、感染に伴う発熱、出血傾向といった症状が見られるようになります。

骨髄異形成症候群はこのような特徴を示すいくつかの病気の集まりと捉えられており、影響を受ける血液細胞の種類、未熟な細胞(芽球)の割合、異形成(異常な形態)を示す細胞の数などからいくつかの種類に分けられます。また、骨髄異形成症候群の患者の一部は、病気が進行することで急性骨髄性白血病に移行することがあります。

骨髄異形成症候群は全ての年代に見られますが、特に中高年以上に多い病気であり、日本の患者数は高齢化の進行に伴い増加傾向にあります。また、抗がん薬などの薬物治療や放射線治療の副作用として骨髄異形成症候群を発症することもあり、このようなものは“治療関連骨髄異形成症候群”と呼ばれます。

治療においては、患者の状態を低リスク群と高リスク群に分類し、それぞれに適した方法が選択されます。低リスク群では、輸血や血液細胞の不足を補う薬剤の投与など、症状の緩和を目指した支持療法が中心となります。一方、高リスク群では、化学療法や造血幹細胞移植などのより積極的な治療が検討されます。これは、高リスク群では急性白血病への進行リスクが高いためです。治療法の選択は、患者の年齢、全身状態、病型、遺伝子異常の種類などを総合的に考慮して決定されます。

原因

骨髄異形成症候群は、全ての血液細胞の元となる“造血幹細胞”に異常が起こる病気です。赤血球、白血球、血小板といった血液細胞は全て造血幹細胞が増殖し、形を変えながら成熟していきますが、異常な造血幹細胞から血液細胞が作られることで、機能異常や異形成が認められるようになります。その結果、未熟な細胞(芽球)の増加や、成熟したように見えても細胞が壊れてしまう無効造血と呼ばれる特徴が見られるようになり、正常な血液細胞が減ってさまざまな症状を示すようになります。

造血幹細胞の異常がなぜ起こるかについては、ほとんどの場合で原因は分かっていません。一部の骨髄異形成症候群は、抗がん薬治療や放射線治療の副作用として現れることがあり、このような特徴から血液細胞に何らかの遺伝子の異常が生じて発症するのではないかと考えられています。しかし、このような遺伝子異常が発生する原因は、抗がん薬治療や放射線治療以外に明らかにされておらず、先天的な遺伝要因も認められていません。

症状

骨髄異形成症候群では正常な血液細胞(赤血球、白血球、血小板)が減少することで、さまざまな症状が認められます。具体的には、赤血球が減少することで動悸や倦怠感などの貧血症状が、白血球が減少することで感染しやすくなり、発熱や肺炎などの症状が、血小板が減少することで血が止まりにくくなり、あざや鼻血などの症状が見られるようになります。

ただし、骨髄異形成症候群は未熟な細胞の割合や血液細胞の形態異常の様子からいくつかの病気に分けられており、タイプによって症状の程度が異なります。また、骨髄異形成症候群に当てはまる場合でも芽球の割合が低い場合などは自覚症状がなく、血液検査で初めて異常を指摘される場合もあります。

検査・診断

骨髄異形成症候群の主な検査は、血液検査と骨髄検査です。

血液検査

血液検査では赤血球、白血球、血小板といった血液細胞の数、形態異常の有無、未熟な細胞(芽球)の有無を調べます。

骨髄検査

骨髄検査では骨髄の中の骨髄血と呼ばれる血液や骨髄組織を採取し、顕微鏡で観察します。これらの中の細胞の数、種類、形態異常の有無、芽球、染色体や遺伝子の異常を調べます。異常な血液細胞の形などだけでなく、染色体や遺伝子の異常の有無、種類によって、治療方法が変わることがあるためです。

骨髄異形成症候群の診断は、症状と上記の検査結果から行われます。症状として慢性貧血、出血傾向、発熱が認められ、血液検査で血球の減少と異形成異常が見られる、骨髄検査で血球の異形成が見られる場合に骨髄異形成症候群と診断されます。また、これらの特徴は再生不良性貧血など、ほかの病気でも見られる場合があるため、ほかに疑われる病気の検査を行い、除外できるか判断します。

治療

骨髄異形成症候群の治療には、造血幹細胞移植、薬物治療、支持療法などがあります。どの治療を選択するかは、骨髄異形成症候群の予後予測*を行ったうえで、高リスク群であるか低リスク群であるかによって判断します。

低リスク群の治療

低リスク群は、白血病へ移行する可能性が低いと判断された骨髄異形成症候群です。低リスク群でも血液成分の減少が軽度の場合は自覚症状がないこともあり、その場合は経過観察とし治療は行いません。血球減少が進行している場合や症状がある場合には、支持療法が中心に行われます。造血機能の回復を目指した免疫抑制薬の投与(保険適用外)や特定の遺伝子の異常(5番染色体の長腕部の欠失)を伴う場合はレナリドミドが治療選択肢になることもあります。

支持療法

血液細胞が減ることによる症状を和らげる治療です。貧血や出血の症状や感染症に対しての治療が行われます。

貧血

進行している貧血に対しては赤血球輸血を行います。貧血の予防には、不足した赤血球を補うために、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)や赤血球成熟促進薬など赤血球を増やす薬剤が投与されます。

出血

出血の症状には、不足した血小板を補充するために血小板輸血が行われます。

感染症

白血球が減少すると、病原体に対する免疫機能が低下して感染症にかかりやすくなります。そのため、白血球の産生を促す薬剤による治療を行います。感染症を起こした場合は抗菌薬などを用いた治療が行われます。

高リスク群の治療

高リスク群は、白血病への移行リスクが高い骨髄異形成症候群です。骨髄異形成症候群の治癒が期待できる唯一の治療法は造血幹細胞移植です。ただし、移植を受けるためにはいくつかの条件を満たす必要があること、移植による合併症の危険性があることなどから、高リスク群に当てはまり、造血幹細胞移植が可能な場合に限って移植が行われます。高リスク群であっても造血幹細胞移植ができない場合は化学療法や免疫療法といった薬物治療や、症状を緩和するための支持療法を中心とした治療が行われます。高齢者に多い病気であり、実際には造血幹細胞移植が行われる患者はあまりいないとされています。

造血幹細胞移植

造血幹細胞を点滴によって投与し、造血機能を回復させる治療です。骨髄異形成症候群の治療では、ドナーから提供された造血幹細胞を移植する同種造血幹細胞移植が行われます。

移植前には大量の抗がん薬や全身の放射線照射によって体内の異常細胞を含む血液細胞を破壊し、骨髄を空にしたうえでドナーから提供された正常な造血幹細胞を移植します。

薬物治療

年齢に伴い、遺伝子にメチル基と呼ばれるものが錆のように結合して、がんの悪性化をくい止めるための“がん抑制遺伝子”がはたらかなくなります。骨髄異形成症候群では、メチル化を阻害するアザシチジンでの治療が、現在一般的になっています。また未熟な細胞(芽球)を減少させるための化学療法(抗がん薬治療)を行うこともあります。高リスク群で造血幹細胞移植が難しい場合に行われます。

*予後予測:治療の今後の見通しや結果を予測すること。

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