骨髄異形成症候群は、白血球・赤血球・血小板といった血液細胞(血球)の元となる“造血幹細胞”に異常をきたすことで、血球が正常に造られなくなり、不十分な機能の血球が造られる病気です(無効造血)。40歳以降から発症者が増え、高齢になるにしたがって発症率が上昇するといわれています。血液検査では、白血球・赤血球・血小板の1~3系統の血球の減少が見られます。異常を認める血球の種類や程度によっていくつかのタイプに分類され、治療の必要がない軽度なものから急性白血病に移行するような重度なものまでさまざまです。では、骨髄異形成症候群はどのような症状が現れるのでしょうか。また、早期発見のためにできることには何があるのでしょうか。
骨髄異形成症候群は、赤血球、血小板、白血球のそれぞれが減少することによってさまざまな症状が現れます。
まず、体の臓器に酸素を運搬する赤血球が減少すると、貧血が進行するため、動悸、息切れ、めまい、立ち眩み、倦怠感、食欲不振などの症状が現れるようになります。次に、出血を止めるための血小板が減少すると、ささいなきっかけで出血しやすく、さらに出血が止まりにくくなります。その結果、鼻血、皮膚や粘膜の点状出血、あざなどが生じやすくなるのです。さらに、細菌などの感染から体を守るための白血球が減少すると、風邪から繰り返す肺炎や、皮膚が腫れる蜂窩織炎のなどの症状が見られることもあります。
これらは、骨髄異形成症候群にかぎらず、高齢者を中心に免疫力の低下した人によく見られる症状です。そのため、骨髄異形成症候群は見逃されがちな病気の1つともいえます。しかし、血球が減少するタイプ(不応性貧血)のほかに、骨髄での骨髄芽球の増加を認め急性白血病に移行しやすいタイプ(前白血病)があるため注意が必要です。
骨髄異形成症候群はタイプによって予後が大きく異なりますが、いずれも早期に発見して治療方針を立てておくことが大切です。以下では、検査の種類やタイミングについて解説します。
骨髄異形成症候群の診断には次のような検査が必要です。
各血球数を調べるために行う検査です。減少している血球の系統、血球減少の程度を調べるほか、採取した血液を顕微鏡で観察し、血球の形態異常を確認します。また、白血球機能検査を行う施設もあります。
主に腰骨(腸骨)から骨髄液を採取して、骨髄造血細胞を顕微鏡で観察する検査です。針を骨髄に刺すことでの体への負担があるため、血液検査で異常が見られた際に精密検査として行われます。細胞数は正常、あるいは増加を示すことが一般的です。若い血球成分である骨髄芽球、赤芽球、巨核球から、成熟・分化した好中球、赤血球、血小板などの数と形態の異常を確認します。なかでも、骨髄芽球の割合が予後に相関します。
骨髄異形成症候群の約半数は染色体異常があるとされています。診断時に染色体異常があると生命予後に影響があると分かっており、染色体異常によっては優先すべき治療方法が決まっているものもあります。このため、骨髄検査で採取した検体を用いて染色体異常の有無を調べます。またフローサイトメーターを用いた骨髄芽球の表面マーカーの検索は、異常な腫瘍性増殖(白血病の前段階)の進行解析に有用です。
骨髄異形成症候群を発見する第一のポイントは血液検査です。しかし、骨髄異形成症候群は発症早期の段階では自覚症状がまったくないことも少なくありません。また、骨髄異形成症候群で生じる症状は日常的に起こりうるものです。さらに、認知症などを患っている方は症状に気付かないまま過ごしていることもあります。
そのため、自覚症状がない場合でも半年から一年に一度は検診を受けて自身の健康状態をチェックすることが大切です。
骨髄異形成症候群が疑われて検査が行われるのは、検診を受けた際に異常を指摘されたことがきっかけとなることが一般的です。ただし、検診で異常があることを指摘されても軽く考えられてしまい受診が遅れるケースも少なくありません。先述したような症状は、体のどこかに異常があるサインでもあります。検診結果を軽く考えず、まずは病院を受診して医師に相談することが大切です。
初診時に受診する診療科は血液内科が理想的ですが、近くに血液内科がない場合はかかりつけの一般的な内科で問題ありません。内科で血液検査をして精密検査の必要があると判断された場合は、血液内科に紹介されるでしょう。
骨髄異形成症候群は聞きなれない病気と思う方も多いのが現状です。しかし、近年患者数は増加しており、進行すると急性白血病に移行するケースもあるため決して看過することはできない病気です。骨髄異形成症候群では、貧血、出血、感染の症状が現れますが、気になる症状があるときはできるだけ早く病院を受診して血液検査を受けるようにしましょう。検査を受けることが病気の発見に必要であり、早期治療につながります。
元 東京都立多摩総合医療センター 血液内科 医長
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