骨髄異形成症候群(MDS)とは、骨髄で赤血球・白血球・血小板などの“血液細胞”が作られる過程で異常が生じ、正常な血液細胞が作られなくなったり、減少してしまったりする病気です。日本では年間6,000人の方が診断され、その一部は急性骨髄性白血病へと発展することで知られています。骨髄異形成症候群と白血病はよく似た病気ですが、その仕組みは若干異なります。
このページでは、骨髄異形成症候群と白血病の違いについてご紹介します。
赤血球・白血球・血小板などの血液細胞は、骨髄の中で産生される“造血幹細胞”が分化することによって作られます。骨髄異形成症候群も白血病も、この分化の過程でトラブルが生じることによって起こる病気です。骨髄異形成症候群と白血病は正常な血液細胞が減少してしまうという点では似ていますが、正常な血液細胞が作られなくなる仕組みが異なるほか、症状の現れ方や治療方法にも違いがあります。
以下ではまず、骨髄異形成症候群と白血病の概要についてご紹介します。
骨髄異形成症候群とは造血幹細胞が血液細胞へと分化する過程で、途中で成長が止まってしまったり、壊れた血液細胞を作ってしまったり、形や機能に異常が生じたりすることによって、正常な血液細胞が作れなくなってしまう病気の総称です。複数の病気が含まれるため、進行速度や治療方法などには個人差があります。
正常な血液細胞になりきれていないもっとも未熟な細胞のことを“芽球”といいますが、骨髄異形成症候群になると骨髄内や血管を流れる血液の中に芽球が増え、その割合が高くなればなるほど病気が進行していると判断されます。芽球の割合が20%以上まで増えた場合、“急性骨髄性白血病”へ移行したと判断されます。
白血病にはさまざまな種類がありますが、ここでは骨髄異形成症候群と関連深い“急性骨髄性白血病”についてご紹介します。
急性骨髄性白血病は造血幹細胞が分化する過程でがん化し、骨髄の中で増殖することで、正常な血液細胞を作れなくなる病気です。このがん化した細胞のことを“白血病細胞”といいます。白血病細胞は骨髄、血管を流れる血液内の両方で増加するほか、脳や肝臓などの臓器や歯肉、皮膚などにも広がることがあります。
骨髄異形成症候群も白血病も、主な症状は正常な血液細胞(赤血球・白血球・血小板)の減少による症状です。具体的には、貧血や感染症にかかりやすくなること、ぶつけた記憶のないあざ、歯肉や鼻からの出血などが挙げられます。骨髄異形成症候群はさまざまな病気の総称なので、進行速度は人それぞれです。進行の遅い方では無症状で経過し、健康診断の血液検査などで偶然発見されることも少なくありません。
一方で急性骨髄性白血病を含む“急性白血病”の場合は進行が早く、急激に症状が現れることが一般的です。また、進行の遅い“慢性白血病”は初期段階ではほとんど無症状で、病気の進行とともに症状も強くなることが一般的です。
骨髄異形成症候群と白血病では、治療内容も異なることがあります。骨髄異形成症候群の治療方法は急性骨髄性白血病に移行するリスクが高いか、低いかによって大きく異なります。血液の減少の程度が軽く自覚症状がない例では急性骨髄性白血病へ移行するリスクが低い場合は、特に治療を行わず経過観察となることもありますし、血液細胞の減少に伴って起こる症状への治療が中心になることもあります。一方、急性骨髄性白血病へ移行するリスクの高い例では、ドナーから正常な造血幹細胞を移植する“同種造血幹細胞移植”や化学療法をはじめとする薬物療法が検討されることもあります。
急性骨髄性白血病の場合は、診断後速やかな治療が必要となります。具体的な治療方法は年齢や患者さんの状況などによって異なりますが、まずは複数の抗がん剤を使用した化学療法を行うことが一般的です。化学療法のみでは治療が不十分な場合や再発してしまった場合などは同種造血幹細胞移植が検討されることもあります。
骨髄異形成症候群には、症状が軽い場合は治療を行わずに経過観察で済むものもあれば、急性骨髄性白血病に移行するリスクが高く積極的な治療が必要となるものもあります。白血病とは症状の経過や治療法などが異なることがあるため、骨髄異形成症候群と診断された際は、自身の病気の状態について医師の説明をよく聞き、理解したうえで治療方針などを検討するようにしましょう。
佐賀大学医学部附属病院 内科学講座 血液・呼吸器・腫瘍内科 教授
木村 晋也 先生の所属医療機関
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