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スポーツ障害とスポーツ外傷-応急処置「POLICE」や予防について

スポーツ障害とスポーツ外傷-応急処置「POLICE」や予防について
齋田 良知 先生

順天堂大学医学部整形外科学講座 講師

齋田 良知 先生

目次
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スポーツによって起こる怪我にはあらゆる種類のものがありますが、大きく「スポーツ障害」と「スポーツ外傷」に分けられます。今回はスポーツ障害とスポーツ外傷の違いや、怪我の予防法、応急処置「POLICE(ポリス)」の方法などについて、順天堂大学医学部整形外科講座の講師であり、サッカークラブいわきFCのチームドクターを務める齋田良知先生にお話を伺いました。

スポーツ障害とスポーツ外傷の違いは?

ランニングをしている人

スポーツによって発生する怪我は、発生状況によって「スポーツ障害」と「スポーツ外傷」に大別されます。

<スポーツによる怪我>

  • スポーツ障害…オーバーユース(使いすぎ)や持続的な負荷によって発症
  • スポーツ外傷…一度の大きな外力によって発症

次章からは、スポーツ障害とスポーツ外傷に該当する具体的な疾患について解説します。

スポーツ障害の種類

代表的なスポーツ障害には以下のようなものが挙げられます。

<主なスポーツ障害>

  • オスグッド病
  • テニス肘
  • ジャンパーズニー(ジャンパー膝)
  • アキレス腱炎
  • 野球肘
  • 疲労骨折

など

オスグッド病

オスグッド病の原因

オスグッド病とは、スポーツを活発に行う成長期に発症することの多い障害で、膝の前下部に痛みが生じます。膝の曲げ伸ばしによって大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)が収縮する際に、膝蓋腱(しつがいけん)と脛骨(けいこつ)が付着している脛骨粗面(けいこつそめん)を引っ張る力が生じます。この力によって、脛骨粗面が剥離してしまうことで発症します。

テニス肘

テニス肘の原因

テニス肘とは、肘の外側の筋肉が膨らむ部分に痛みが生じるスポーツ障害で、上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)ともよばれます。テニスによって発症する方が多いことからテニス肘という名称がついていますが、同じ日常生活動作の繰り返し(フライパンで料理をする、雑巾を絞るなど)でも発症することがあります。若年層での発症率は低く、30〜50代の方によくみられる疾患です。

ジャンパーズニー(ジャンパー膝)

ジャンパーズニーとは、膝の伸展を繰り返すことで膝に痛みが生じます。バレーボールやバスケットボールのようにジャンプを繰り返すスポーツや、サッカーやランニングなど走る動作の多いスポーツなどで発症します。膝への体重のかけ方や大腿四頭筋の硬さなどが影響して発症しやすい障害です。

アキレス腱炎

アキレス腱を抑えている人

アキレス腱炎は足首を酷使することでアキレス腱が炎症を起こし痛みが生じる障害です。ジャンパーズニーと同じく、足首への体重のかけ方や足首の使い方が発症に大きな影響を与えます。

野球肘

野球肘は投球動作の繰り返しなど、肘を酷使することで起こります。肘の骨や軟骨、靭帯などに痛みが生じます。

疲労骨折

疲労骨折は通常の骨折(一度の外力による骨折)とは違い、同じ場所に小さな外力が繰り返し加わることで、骨にひびが入り、その後完全に骨折してしまうことをいいます。疲労骨折の発生部位は原因となる動作やスポーツによりますが、発症率が高い部位は脛骨(けいこつ:すねの骨)と中足骨(ちゅうそくこつ:足の指の付け根の骨)です。

スポーツ障害の予防

スポーツ障害は一度発症すると治りにくいものも多いため、しっかりと予防を行うことが大切です。

自分の体をよく知る

ウォーミングアップをしている人

スポーツ障害を予防するためにまず大切なことは、自分の体をよく知るためのモニタリングを行うことです。スポーツをする前には、筋肉の硬さや関節の広がりを確認して、いつもとどう違うのかを把握することが非常に重要です。

たとえば、足首が普段よりも硬くなっていることに気付かず走り出してしまうと、普段のイメージで動かしている指令に対して足首は動くことができません。すると、足首に大きな負担がかかるため、足首をかばうような動作になります。結果的に、繰り返し足首にばかり負荷がかかってしまいスポーツ障害のような慢性的な損傷を起こしてしまいます。

体に起きている小さな変化を見逃さないようにするためには、日々自分の体と向き合い、自分の体をよく知ることが大切です。そして、いつもと違うと感じたら無理をしないことがとても大切です。

やりすぎない

スポーツ障害はオーバーユース(使いすぎ)によって起こります。ですから、決してやりすぎることなく、休息日を作るなどしてスポーツ障害の予防に努めましょう。

痛みを感じたら続けない

また、痛みがある場合には運動を続けないようにしましょう。少々の痛みがあっても我慢して続けてしまう方が多く、とても簡単なようで簡単にできない予防法です。

痛みの原因がわからないまま痛みを我慢してスポーツを続けていると、あるとき我慢できないくらい痛くなり、治療を行っても治りにくい状態となってしまいます。

そのため、痛みを感じたときには決して無理せず、スポーツを中断することは非常に重要です。

スポーツ外傷の種類

ラグビー

それでは、引き続きスポーツ外傷についてお話しします。代表的なスポーツ外傷は以下の通りです。

<主なスポーツ外傷>

  • 脱臼
  • 骨折
  • 捻挫
  • 靭帯損傷
  • 肉離れ
  • 脳震盪(のうしんとう)

など

冒頭でもお伝えしましたが、スポーツ外傷は外から加わった一度の強い衝撃で発症する疾患です。ただし、肉離れについては自家筋力によって発症することが多いため、ほかのスポーツ外傷とはメカニズムが多少異なります。

(肉離れの詳細は記事3『肉離れとは-症状や肉離れと見分けが難しいものは?』をご覧ください)

また、スポーツ外傷はコンタクトスポーツ(ラグビーやアメリカンフットボール、サッカーなど)や格闘技(柔道など)で起こることが多いです。

スポーツ外傷の応急処置「POLICE」

捻挫や肉離れなどのスポーツ外傷を起こした際には、初期治療として応急処置を行うことが重要です。これまで応急処置の方法としてはRICE(ライス)が基本であるといわれてきました。RICEはRest(安静)Ice(冷却)Compression(圧迫)Elevation(挙上)の略です。

しかし、近年「Rest」つまり患部を必要以上に安静に保つのではなく、患部を保護したうえで復帰に向けてきちんと使った方がよいのではないかといわれています。

そのため、従来のRICEから「POLICE(ポリス)」という応急処置を行うべきではないかという意見がでています。

新しい応急処置「POLICE」とは?

POLICE(ポリス)はProtection(保護)Optimal Loading(適切な負荷)Ice(冷却)Compression(圧迫)Elevation(挙上)を応急処置として行うことです。

RICEのR(Rest:安静)が、P(Protection:保護)O・L(Optimal Loading:適切な負荷)に置き換わっています。

負傷した部分をまったく使わない状態が続くと、怪我からの回復が遅くなってしまうことがあります。たとえば、足首の捻挫の場合、足首の安静を保ちすぎると患部のむくみが進行していき完治に時間を要することがあります。そのため、患部を保護しながら少しずつ負荷をかけることで、怪我からの早期回復が期待できます。

<POLICEの方法>

Protection(保護)

添え木や装具などを使用して患部を保護します。このとき、患部を固定できるものであればダンボールなど身近にあるもので代用できます。

Optimal Loading(適切な負荷)

組織の修復を促し怪我からの回復を早めるために患部に適切な負荷をかけます。スポーツドクターやトレーナーなど専門家の判断のもとで行うようにしましょう。

Ice(冷却)

アイスバッグやビニール袋などにいれた氷で患部を冷やします。このとき必要以上の冷却は避け、15〜20分間冷やしたらいったん冷却を中断し、痛みがでてきたら再度冷却を行うようにしましょう。

Compression(圧迫)

内出血や腫れを防ぐために、患部を弾性包帯などで圧迫します。

Elevation(挙上)

患部を心臓より上に挙げるようにします。患部の腫れやむくみを抑えることが目的です。

スポーツ外傷は予防できる?

スポーツ外傷は事故的に発症するため予防が難しいことが多いです。しかし、捻挫や肉離れは日頃のトレーニングなどを工夫することで予防につなげることができる怪我です。

ここでは、足関節捻挫と肉離れの予防についてご説明します。

足関節捻挫の予防

足関節捻挫は、足首を不自然にひねってしまうことで足首の靭帯などが損傷してしまう怪我です。予防法としては、足を捻らないようにするためのバランス力の強化を行うことが大切です。

まずは、足首のバランス力や癖を知るために30秒間ほど目を閉じたまま直立するテストを行います。このとき直立が維持できない方は、足首のバランス力が弱いことを表しているため、足首まわりの筋力を鍛える必要があります。

また、足の外側に重心を置く癖がある方は、内反捻挫(足を内側にひねることで起こる捻挫)を起こしやすい状態です。そのため、足を外側に引っ張る筋肉を鍛えてあげることで捻挫の予防に努めます。

肉離れの予防

肉離れの予防

肉離れとは、筋肉が引っ張られながら収縮したときに起こる筋肉の断裂です。たとえば、ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)がぎゅっと収縮している状態で、急に膝を伸ばす動きをして筋肉が無理やり引っ張られることなどで発症します。

このような肉離れの際に起こる筋肉への負荷を「エキセントリックな負荷」といい、肉離れを予防するために、このエキセントリックな負荷に対する筋力を鍛えるトレーニングを行います。

引き続き記事3『肉離れとは-症状や肉離れと見分けが難しいものは?』では肉離れについて詳しくお話しします。

順天堂大学医学部付属順天堂医院 整形外科・スポーツ診療科
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/seikei/