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腎がんのステージ(病期)と原因について

腎がんのステージ(病期)と原因について
釜井 隆男 先生

獨協医科大学病院泌尿器科主任教授

釜井 隆男 先生

目次
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腎がんのステージ(病期)は、国際対がん連合が定めたTNM分類と、日本において癌取り扱い規約に基づいて定められたTNM分類によって分けられています。また、TNM分類には、画像検査で判断したclinical(臨床的)と、実際に手術で腫瘍を採取してから判断したpathological(病理学的)の2つが存在します。そして、腎がんを発症する大きな原因は、肥満高血圧喫煙といわれています。

今回は、獨協医科大学病院泌尿器科主任教授の釜井隆男先生に、腎がんのステージや原因についてお話しを伺いました。

国際対がん連合…1933年に設立した民間の対がん組織。2018年現在は世界155か国、800団体が参加しており、がんの抑制を課題として活動している。

このテーマを始めるにあたり、はじめに一般事項を述べさせていただきます。それは、「疾患、特にがん(今回のテーマは腎細胞がんですが)は、同じがんであっても、患者さんごとに病態が異なる」ということです。図1をご覧ください。それには幾つかの理由があります。大きく分けて、「がん側の要因」と「患者さん側の要因」とに大別されます。まず、「がん側の要因」ですが、がん細胞が仮に100億個あるとして、そのほとんどが異なる性格を持っていることです。これは、100億個のそれぞれのがん細胞の遺伝子のタイプが微妙に異なっていることに起因することが大きな原因です。このことは、それぞれのがん細胞が、治療(薬物療法や放射線治療)に異なる反応を示すことにつながってきます。一方、「患者さん側の要因」として、環境要因(衣食住や職業)が大きく影響しています。喫煙や糖尿病や高血圧はがんになるリスクを高めたり、がんの進行を早めることは広く知られていますし、特定の物質(例えば、アスベストや染料、等)に起因すると考えられている、いわゆる職業がんも有名です。本来であれば、自分の体型に合ったスーツや靴をオーダーできるように、それぞれの患者さんに最も適した治療法(オーダーメード治療)を選択できれば良いのですが、残念ながら、現在の医療環境はそこまで整ってはいません。

図1

腎臓がん治療の層別化

図2をご覧ください。上段は、これはある特定の「がん」の患者さんを1000名(腎臓がん患者さんを1000名でも、膀胱がん患者さんを1000名でも、前立腺癌患者さんを1000名でもかまいません)集めた場合の生存曲線と呼ばれるものです。この生存曲線では、時間の経過とともに、どのくらいの患者さんが生存できているかをグラフで示したものです。縦軸が患者さんの生存の割合を、横軸は月を表しています。最初は1000名の患者さん全員が生存されていらっしゃいますが、時間の経過に伴い、患者さんの中には残念ながら治療に奏功せずに亡くなられ方がいますので、生存されている患者さんの人数が減ってくる様子を表しています。次に、中段を見てみましょう。この1000名の患者さんを、比較的早期がんといわれるステージ1や2の患者さん(500名)と、進行がんといわれるステージ3や4の患者さん(500名)とに分けて比べてみると、ステージ1や2の患者さんの方が、長生きする「傾向(あくまで、傾向です)」にあることが見て取れると思います。では、ステージ3や4の患者さん(500名)に対して、薬物A(250名)と薬物B(250名)を投与してその結果を観察したものが下段です。この図では、統計学的な有意差を持って(p<0.05)、薬物Bと比べ、薬物Aの方が奏功することがわかります。現在の医療では、このような臨床試験での成績を基に標準治療というものが形作られています。

しかし、これは薬物Aが優れていることを表してはいません。薬物Bと比べ、薬物Aでは長生きする患者さんの割合が多いことを示してはいますが、薬物Aが奏功しない患者さんもいますし、薬物Bでも長生きする患者さんがいることも見て取れます。あくまでも、ある集団に対して数学的な統計という手法を用いると、薬物Bと比べ、薬物Aの方が長生きする患者さんの割合が多いことを示しているに過ぎません。ここで大きな問題が提起されます。「薬物Aと薬物Bのどちらが自分により合っているのか?」という問題です。残念ながら、答えは見つかってはいません。その理由のひとつが、冒頭に述べた「がん側の要因」と「患者さん側の要因」が複雑に絡み合って、上記の問いに答えを出せずにいるからです。医学と医療は日ごとに進歩はしており、遺伝子検査等での分子機序の解明も進んでおり、全体的に治療成績も向上はしてきていますが、オーダーメード治療には到っていないのが現状です。

図2

腎臓ガンのステージ別生存率

腎臓の構造
腎臓の構造

腎臓とは、背中側のみぞおちくらいの高さに存在し、長さが約12センチメートル、幅が約6センチメートル、厚さが約3センチメートルの臓器です。腎臓のもっとも重要なはたらきは、体内の老廃物や余計な水分を体外に排出することですが、血圧のコントロールや造血ホルモンの生成なども行っています。しかし、腎臓にがんが発生すると、そのようなはたらきをする機能が低下して、体内でさまざまな障害が起こります。

(腎がんの症状について詳しくは、記事2『腎がんの症状 初期は自覚症状がほとんど出ない』をご参照ください)

腎がんのステージ(病期)は、TNM分類を基準にして判断されます。国際的に有名なTNM分類は、国際対がん連合(UICC)によって定められたものです。しかし日本においては、癌取り扱い規約において定められたTNM分類も存在します。

また、がんのステージだけでなく、がん細胞のグレードも患者さんの予後に大きく関係することがわかっています。

国際対がん連合…1933年に設立した民間の対がん組織。2018年現在は世界155か国、800団体が参加しており、がんの抑制を課題として活動している。

TNM分類の表
TNM分類の表

上の表は、日本の腎癌取扱い規約第4版に記載されているTNM分類です。Tは、腫瘍の大きさと浸潤度のよってT1aからT4まで分けられています。Nはリンパ節転移で、リンパ節転移のないN0から2個以上のリンパ節転移があるN2まで分けられています。Mは遠隔転移で、遠隔転移のないM0と遠隔転移のあるM1に分けられています。なお、ゲロタ筋膜とは、腎臓をおおっている一番外側の膜のことです。

浸潤…がんがまわりに広がっていること

リンパ節…リンパ節とはリンパ管に存在する免疫器官の1つで、ウイルスや腫瘍細胞、細菌がないかを調べる働きをしている。

遠隔転移…腫瘍が発生した臓器から、遠い距離にある臓器へ転移すること。

がん細胞にはグレードが存在する

がん細胞には、グレードというものが存在します。グレードとは、がん細胞を顕微鏡で観察し、組織構造からどのくらいの悪性であるかを分類したものです。腎がんの場合はグレード1から4に分かれています。グレードが高くなるほど、がん細胞の悪性度も高くなり、予後が悪いといわれています。なお、乳がんなどでは、がん細胞のグレードは1から3までであり、がんの種類によりグレードの分類方法は異なります。

先に説明したTNM分類をステージ別に分けたものが下の表です。

腎臓がんのステージ
TNM分類別のステージ

リンパ節転移や遠隔転移がないT1の場合は、ステージ1となり、同じくリンパ節転移と遠隔転移のないT2はステージ2となります。リンパ節転移・遠隔転移がある場合は、T1やT2でもステージ3や4に分類されます。

TNM分類は、clinicalとpathologicalの2つが存在します。clinicalとは、臨床的という意味で、画像などの検査だけで腫瘍をみた時点での病期のことです。一方、pathologicalは病理学的という意味であり、実際に手術をして腫瘍を採取した時点での病期のことです。そのため、検査の段階ではcT1bでも、実際に腫瘍をみた際にpT2bに変わるというケースもあります。またその逆で、cT2bがpT1bに変わるというケースもあります。

腎がんは、がん細胞の性質によって大きく以下の5つの種類に分かれています。

淡明細胞型腎細胞がん

淡明細胞型腎細胞がん(提供:釜井先生)

淡明細胞型腎細胞がんは、腎がんのなかでもっとも患者数が多く、腎がん全体の約78%から85%を占めます。他の種類と比較すると悪性度が低く、予後がよいといわれています。また、VHL(Von Hippel-Lindau)病によって発症する腎がんは、淡明細胞型腎細胞がんが多いことがわかっています。VHL病について詳しくは、腎がんの原因でご説明します。

乳頭状腎細胞がんは、腎がん全体の約10%から15%を占め、タイプ1とタイプ2に分かれています。タイプ2よりも1の方が予後がよいといわれています。

多房のう胞性腎細胞がんは、多数の小さなのう胞(分泌物が袋状に溜まったもの)が集まって腫瘍をつくっている腎がんです。

嫌色素性腎細胞がんは、腎がん全体の約5%を占めます。

集合管がんは、発生頻度は低いものの、その他の種類と比較すると予後不良といわれています。

肥満体形の男性

腎がんの主な原因としては

などが挙げられます。発症しやすい年齢としては、50歳ごろから70歳ごろにかけてであり、年齢が高くなるほど患者数が多くなります。

腎がんの原因となる病気として、VHL(Von Hippel-Lindau)病が挙げられます。VHL病は、VHLというがん抑制遺伝子が傷つくことで発症する病気です。発症年齢は、3~4歳の若年から50歳代までと幅広く、腎がんのほかにも、脳や脊髄・網膜の血管腫、副腎褐色細胞腫、膵臓腫瘍、精巣上体腫瘍などを生じる原因となります。VHL病患者さんの場合、腎がんを発症するとそれ以外の病気も合併している方は多数です。そのため、早いうちから病院で検査受けることが多く、腎がんも早期に発見される傾向にあります。
 

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