院長インタビュー

質の高い循環器治療を三重から全国に発信する三重ハートセンター

質の高い循環器治療を三重から全国に発信する三重ハートセンター
西川 英郎 先生

三重ハートセンター 理事長

西川 英郎 先生

三重県多気郡明和町にある医療法人 三重ハートセンターは、24時間体制で365日患者さんを受け入れる循環器疾患専門病院です。循環器内科や心臓血管外科という診療科の垣根を越え、ハートチームとして安全で確実な治療を速やかに行っています。専門的な3次医療の拠点として、県内外からいらっしゃる患者さんの診療にあたっています。

循環器治療に関して、高度な医療を提供する同院では、どのような取り組みを行っているのでしょうか。理事長である西川英郎先生にお話を伺いました。

狭心症心筋梗塞に代表される循環器疾患は、放っておくと命にかかわる重大な疾患であり、速やかに診断・治療を行う必要があります。同院は、循環器疾患専門病院であり、24時間体制で患者さんを受け入れています。2022年は、カテーテル検査1,295件、カテーテル治療370件、カテーテルアブレーション310件、体内式ペースメーカー植込術58件、ICD植込術11件、CRTD植込術9件、心臓血管外科手術78件を施行しました。

蓄積した経験を基に、高度で安全性の高い医療の提供に努めております。カテーテル検査の場合、ほとんどの患者さんが日帰りで、外科手術の場合でも約10日で退院できます。長期入院をともなう検査や治療は、患者さんの負担が大きいため、当院ではできるだけ短い日数で行うようにしています。その結果、当院の病床数は45床と多くはありませんが、緊急搬送されてくる患者さんを受け入れるため、ベッドを空けておくことができています。病院に隣接してヘリポートを設けており、当院から離れた地域からの救急搬送にも対応しています。

当院は、伊勢神宮で有名な三重県伊勢市に隣接する明和町にあります。松阪市と伊勢市の中間に位置しており、交通の便も良好です。宇治山田駅や伊勢市駅からは無料シャトルバスも出ています。

三重県は歴史的・文化的な資源が豊かな土地であり、国宝や重要文化財が数多くあります。私は三重県で育ち、医師としてのスタートを切ったのもこの三重です。これまで学んだものを地域貢献にいかしたい、そういう思いで循環器疾患の高度先進医療を提供できる専門病院をこの地につくることを思い立ち、2004年に当院を立ち上げました。

開院して19年、おかげさまで地域のみなさまに親しまれ、近隣のクリニックの先生方からも信頼をいただき、数多くの患者さんをご紹介いただいております。
また高齢化の進行とともに循環器疾患の治療を必要とされる方は増えており、当院がある南勢志摩地域だけでなく、東紀州地域をはじめとした三重県、さらには愛知県や岐阜県、和歌山県や滋賀県からも患者さんがいらっしゃっています。

2004年の開設当初から徹底したIT化を図り、Web版電子カルテを導入し、データ管理システムを構築しました。合理的な内部システムと反対に、施設内装は木目調とし、十分な採光を施し、癒しと安らぎの空間を持つ、「病院らしくない」建築にしました。待合室や診察室も明るくゆったりとしたつくりになっており、病棟廊下では歩行訓練、リハビリテーションもできるほどの広さと導線を確保しています。

120名を収容可能なパールシアターでは、一般患者さんを対象にした心臓病セミナーを2か月に1回、医療関係者の方々を対象にした心臓病講演会を1〜2か月に1回と、定期的に行っています。
パールシアターには手術室やカテーテル室と接続された、ライブ画像を映し出す大きなスクリーンを備えており、これまでに数多くの患者さんやご家族のみなさま、医療従事者に手術の様子を公開してきました。2023年にはインドや韓国、イタリアなどの学会、研究会に日本を代表してライブ放映を実施しています。
当院では「開かれた医療」をスローガンのひとつに挙げています。これからも患者さんやご家族に徹底した情報公開を行い、みなさまの信頼に応えてまいります。

当院の循環器内科では、狭心症心筋梗塞に代表される虚血性心疾患に対して、経皮的冠動脈形成術、ステント、ロータブレータやダイヤモンドバックやショックウェーブ(いずれも血管内で石灰化した病変部を破砕する機器)、エキシマレーザー冠動脈形成術(ELCA)などの非開胸的根治療法を積極的に導入しています。また、心臓弁膜症に対するMICS大動脈瘤に対するTEVARやEVARといった開胸開腹をしない低侵襲手術も積極的に取り入れています。

不整脈治療においても、安全で確実な技術により、患者さんに負担の少ないカテーテル検査・治療を行っております。当院のカテーテルアブレーション治療は、3つのチームを構成して行い、いずれも高い成功率を誇っております。カテーテルアブレーション治療は、血管から心臓のなかに細い管(カテーテル)を入れ、その先端から高周波を流すことによって心臓の筋肉の一部を軽いやけどの状態にさせて不整脈の原因を取り払う治療法です。これが成功すると不整脈の根本的治療がかないます。

カテーテル検査は日帰り入院で行っています。午前中に検査を行い、安静室で休んでいただき、夜までには退院となります。

検査・治療中のカテーテル室の様子は、面談室でご家族に見ていただくことができます。患者さんとご家族に納得していただける医療の提供に努めています。

当院では、ペースメーカー、埋込型除細動器(ICD)および両心室ペーシング機能付埋込型除細動器(CRTD)の植込みを積極的に行っており、2008年に埋込型除細動器(ICD)、両心室ペーシング機能付埋込型除細動器(CRTD)、ロータブレーター(Rot ablator)の実施施設として認可を受けています。

患者さんの高齢化にともない当院でも植込み術施行件数は増加しておりますが、これら植込み型デバイス治療の増加にから、術後に発症する合併症の頻度も増えてきています。術後合併症のなかでもっとも危惧されるものが、デバイスへの感染です。感染した場合、デバイス本体のみならずリードの抜去が必要になることがあります。心臓内あるいは血管内に長く留置されていたリードは組織との癒着が起きており単純に牽引するだけでは抜去できません。過度の牽引は、血管損傷や穿孔(せんこう)といった致死的合併症を引き起こす場合もあります。

そこで、できるだけ患者さんの負担が少なく、低侵襲にリードを抜去できる手段として開発されたのが、「エキシマレーザー」を使用した心内リード抜去術です。エキシマレーザーによるリード抜去は、欧米にて急速に普及し高い成功率と安全性が報告されており、日本においても2008年厚生労働省の認可を受け使用可能となり、2010年7月より保険適応となりました。2023年現在、三重県内でもエキシマレーザーを導入している病院は数えるほどしかありませんが、当院は植込み型デバイス治療を受けていらっしゃる地域のみなさまが安心して暮らせるよういち早く導入しており、多くの症例を積み重ねています。

当院の心臓血管外科では、虚血性心疾患弁膜症大動脈瘤・末梢血管病をはじめとする成人心臓血管外科の疾患、および先天性心疾患を対象として、心拍動下冠動脈バイパス手術・僧帽弁形成術および僧帽弁置換術(MICS)、TEVAR、EVARなどの治療・手術を行っています。安全で無理のない治療方針を第一目標とし、心臓血管外科チームは日々研鑽・努力しております。

当院では、心臓血管外科や循環器内科という診療科を越え、ハートチームとして循環器疾患に対する専門治療に取り組んでおります。特に手術治療の可能性がある患者さんに関しては、すべて循環器内科チームと心臓血管外科チームとが週に2回、入念なハートチームカンファレンスを行っています。患者さんのQOL(生活の質)を優先した手術治療を心がけており、手術前・手術後も十分に情報提供・対話を行い、患者さんにはしっかりと納得をしていただいたうえで治療を進めてまいります。

手術に関してほかの医療機関からのセカンドオピニオンも行っております。循環器疾患の治療は、外科的治療がよい、あるいは、カテーテル治療がよい、と一概には判断できません。患者さんのいまの状況や未来の状況・ご希望をお聞きし、そのうえで患者さんに一人ひとりに適した治療を選んでいただきます。患者さんがしっかり納得して治療を受けていただけるよう、真摯に向き合い、納得いただくまで一緒に考えます。

すべての患者さんに良質で高度な医療を提供できるように、2005年に伊勢志摩ライブ研究会を立ち上げました。伊勢志摩ライブ研究会では、カテーテルアブレーション領域とインターベンション領域の2領域において、ライブデモンストレーションを通じた医療従事者の研究会を定期的に開催しております。

当院の手術室やカテーテル室の様子をパールシアターのスクリーンに映し出し、県内外から集まった勤務医や研修医、検査技師の方に見学してもらうライブデモンストレーションを実施しています。また、近年はWebでのライブデモンストレーションを主体に行なっております。その際には、ディスカッションタイムを十分に設けるなどして、お互いの技術と知識の向上に努めております。専門の医師を講師にお招きし、毎回300名を超える医療関係者の方にご参加いただいております。

これからも、新しい治療に触れる機会を提供し、幅広く医療技術と知識の普及に努めてまいります。

当院には非常に技術力のある医師が集まっており、高度な技術を要する手術も、安全に実施することができています。開院当初はたった3名ではじめた当院ですが、2023年12月現在では8名の非常に信頼のおける医師たちが集まってくれています。より多くの患者さんを救いたいと思っておりますが、その一方で医療の質を落とすわけにはいきません。当院が大切にしていることは、より安全で、より良質な医療の提供をめざすことです。バランスを保ちながら、これからも努力してまいります。

そのうえで、「不可能とは決して言わない、いかにすれば可能となるか考え続ける」ことをモットーに、開院前に、内科学をはじめ幅広い専門領域を持っていらっしゃった、故・日野原重明先生から頂いた「Vision, Venture, Victoryの3つのV」を忘れることなく、挑戦し続けてまいります。

私たちのめざす医療は、心をこめた循環器・心臓病の最新治療を通じて地域社会に貢献すること、そして理念でもある“act globally for the medicine, live locally for the patients”(医療の質の向上のために世界に向けて行動し、地域の患者さんのために尽くす)です。当院にしかできないような循環器高度専門医療の提供をめざします。そして、将来的に、より多くの患者さんを救うことができるよう、良質な医療の提供を維持しながら、高度急性期病院になることを目標に、努力してまいります。

また、当院は働く人に優しい病院を目指しています。スタッフの働き方改革にも以前から取り組んでおり、時短での勤務や細かく休みを取るといった勤務が可能です。

当院は地域医療構想に従い、2025年からは病床がすべて高度急性期病床になる予定です。これからも近隣の診療所や各病院との連携を図りながら、地域のみなさまに信頼され、愛され続ける病院となることを願っています。

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