院長インタビュー

医療・介護・福祉を総合的に提供し地域に信頼される病院を目指す岡山協立病院

医療・介護・福祉を総合的に提供し地域に信頼される病院を目指す岡山協立病院
高橋 淳 先生

岡山協立病院 院長

高橋 淳 先生

この記事の最終更新は2018年02月16日です。

岡山医療生活協同組合 総合病院岡山協立病院は、急性期医療から慢性期医療、回復期リハビリテーション医療までを地域に提供する総合病院です。同院の最大の特徴は、「医療生活協同組合」が運営母体であり、医療・介護・福祉の連携に基づいた医療を提供していることです。同院の成り立ちや診療体制、注力するプライマリ・ケアについて岡山協立病院の院長である高橋淳先生にお話を伺いました。

当院の運営母体となる「岡山医療生活協同組合」は、1952年に約300名の組合員により設立されました。2018年2月現在は、約67,500名の組合員で構成されています。

同組合の設立は、サンフランシスコ講和条約が締決され、日本国民が連合国から主権を回復した翌年です。激動の時代のなかで組合員が知恵を出し合い「お金がなくても、安心して受診できる診療所を作ろう」としたことが原点です。

当院は、1960年に開院しました。

1983年には岡山市内で8番目となる総合病院となり、岡山市東部の中核病院として現在に至っています。

当院は、HCU8床と一般病棟156床、地域包括ケア病棟41床、回復期リハビリテーション病棟46床、緩和ケア病棟17床、障害者病棟50床の合計318床(2018年2月現在)を有しています。療養型病棟は設置していませんが、当院から約3㎞南に同じ岡山医療生活協同組合が運営する、128床の療養型病棟を有した「岡山東中央病院」があります。

2017年には救急科と総合診療科、加えて35床の人工透析室を新設しました。救急搬送受け入れ数は月間約110件、時間外救急患者数は月間約500名(2018年2月現在)です。

当院の急性期医療における特徴は、診療科を細かな臓器別に分けない点が挙げられます。

たとえば内科には循環器内科、消化器内科、呼吸器内科など、各診療科分野の担当医師は在籍していますが、表示は「内科」のみとなっています。そうすることで、1つの診療科で多領域に対応できるチーム医療を構築しています。

2017年の診療実績は、外来者数が1日平均約430名、入院患者数は1日平均約300名となっています。

また、手術実施数は年間約680件、内視鏡診療は上部消化管が年間約4,700件であり、下部消化管は年間約1,400件です。

急性期疾患では、急性心筋梗塞の治療や消化管出血の緊急内視鏡治療、胆石症の緊急内視鏡手術などの実績があります。また、外科においても消化管や肝胆膵のがん手術、肺がん手術、乳がん手術などの実績があります。外科と内科が連携して治療にあたっているのも特徴です。

循環器疾患では、経皮的冠動脈インターベーション(PCI)などの治療を実施しています。

消化器疾患では、内視鏡を用いた腫瘍切除や胆管結石・胆のう結石の治療を実施しており、呼吸器疾患に対しては、気管支鏡による診断なども行っています。

整形外科においてはご高齢の患者さんの大腿骨頚部骨折の治療が多く、こうした外科的手術が必要な外傷の診療は、内科と整形外科が協力して診療しています。整形外科は手術と創部の管理を集中して行い、肺炎を患っている場合や、リハビリテーションが必要な場合の対応はすべて内科が行います。

私たちは、「地域から信頼される病院」を目標にしています。

住民のみなさまに当院の診療を信用していただくことはもちろん、困ったときに「岡山協立病院に相談したら、何とかしてくれる」と暮らしのなかで頼りにしていただけるような病院を目指しています。また、急性期医療と慢性期医療を結ぶ、ネットワークの中心に位置する「ハブ」のような存在を目指しています。

当院の所属する岡山医療生活協同組合では、組合員のなかの約5,000〜6,000名の方が組合活動を行なっています。その活動実績をひとつ、紹介いたします。

ある坂の上の地域で、組合員が主体となり近隣の施設やお店などを掲載した地図を作っていたときの話です。組合員は、活動のなかでその地域にはご高齢の方が多く住んでおり、買い物した荷物を持って、坂の下のお店から登った先にある自宅へ帰るのが困難なのではないかと思い至ったそうです。

そこで「もっと多くの困っている家庭があるのではないか?」と、1軒1軒に話を聞いて回ると、買い物のほかにも介護などに関して、多くの方が問題をかかえていることがわかったのです。

その後、解決策のひとつとして、坂の上にも移動販売業者の方に来てもらったところ、ご高齢の方も気軽に買い物ができるようになり、そこで小さなコミュニティが生まれたそうです。

この組合員の活動を受けて、当院においても外来の患者さん一人ひとりの生活状況を知る必要性を再認識し、2か月で約3,000名の方を対象にアンケートを実施しました。すると、その内2割ほどの方は病気になっても看病してくれる人がいないことがわかりました。また通院の交通手段で困っている方がいることも把握できました。

当院は患者さんのかかえる問題と向き合い、患者さんのよりよい生活のためのサポートに努めています。

地域支援の一環として、福島第一原発事故の被災者の方への健康診断を実施しています。岡山は気候が穏やかで地震が少ないという土地柄もあり、被災者の方が多く避難されています。

福島県の被災者の方は公的な健診がありますが、ほかの県から避難された方には健診制度がありません。その状況を踏まえて、当院は甲状腺のエコーなどの健診を通常の半額で受けていただく形で支援を実施しています。特定の疾患が見つからなくても、50~60年経過しないと判断できない病気もあるため、エコーの画像はCD-ROMに入れてお渡ししています。

健康なからだを長く維持するためには、日々の生活から見直す必要があります。当院では、栄養士やトレーナーによる食生活や運動面で健康づくりのお手伝いもできますので、お気軽にご相談いただければと思います。

また、当院の「なんでも相談室」では、医療にかかわらず生活のなかで困ったことをご相談いただいています。なんでも相談室の目的は、お困りの方に手を差し伸べる「アウトリーチ」でもあります。

当院は、地域の患者さんが安心して何でもお話いただける場所となり、いつでも頼っていただける病院となれるように、今後も岡山医療生活協同組合の病院としての使命を果たして参ります。