院長インタビュー

医療・介護・福祉を総合的に提供し地域に信頼される病院を目指す岡山協立病院

医療・介護・福祉を総合的に提供し地域に信頼される病院を目指す岡山協立病院
髙橋 淳 先生

岡山協立病院 院長

髙橋 淳 先生

目次
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岡山医療生活協同組合 総合病院岡山協立病院は、急性期医療から慢性期医療、回復期リハビリテーション医療まで幅広く地域に提供する総合病院です。同院の最大の特徴は、「医療生活協同組合」が運営母体であり、地域とのつながりを大切にしていることです。同院の成り立ちや診療体制、注力するプライマリ・ケアについて岡山協立病院の院長である髙橋 淳(たかはし じゅん)先生にお話を伺いました。

当院の運営母体となる「岡山医療生活協同組合」は、1952年に約300名の組合員により設立されました。現在は、約61,600名の組合員で構成されています(2024年2月時点)。

当組合の設立は、サンフランシスコ講和条約が締決され、日本が主権を回復した翌年です。激動の時代のなかで組合員が知恵を出し合い「お金がなくても、安心して受診できる診療所を作ろう」としたことが原点です。

当院は1960年に開院しました。その後、1983年には岡山市内で8番目となる総合病院となり、岡山市東部の中核病院として現在に至っています。

当院は318床、急性期、回復期、慢性期の病棟をもつ地域密着ケアミックス型病院です。また、当院から約3km南に同じ岡山医療生活協同組合が運営する、128床の医療療養型病棟を有した「岡山東中央病院」があります。

2022年には救急科と総合診療科を新設しました。救急搬送受け入れ数は月間約140件、時間外救急患者数は月間約460名(2023年時点)です。

学習風景

当院の急性期医療は、診療科を細かな臓器別に分けない点が特徴です。

たとえば内科には循環器内科、消化器内科、呼吸器内科など、各診療科分野の担当医師は在籍していますが、表示は「内科」のみとなっています。医師だけでなく、看護師、薬剤師、リハビリスタッフ、相談員、栄養士など多職種が協働して診療にあたっています。そうすることで、多様な健康問題をかかえた患者さん一人一人に適した医療を提供しています。

2022年に開設された総合診療科には、現在12名の医師が所属しています。総合診療科は、特定の臓器を診る科ではなく、複数の病気や健康問題に対し、患者さんが抱える社会的背景などにも向き合いながら診療を行っています。内科(総合内科)と重なる部分がありますが、内科以外の病気にも対応が可能で、患者さんだけでなく、そのご家族の健康問題にも対応しています。地域の皆さんの病気の予防や健康増進に取り組んでいます。

2023年の診療実績は、外来者数が1日平均約400名、入院患者数は1日平均約300名となっています。

また、手術実施数は年間約550件、内視鏡検査は上部消化管が年間約4,066件であり、下部消化管は年間約785件です。

救急医療では、急性心筋梗塞(きゅうせいしんきんこうそく)の治療や消化管出血の緊急内視鏡治療、胆石症の緊急手術などの実績があります。外科では消化管や肝胆膵のがん手術、肺がん手術、乳がん手術などの実績があります。外科と内科が連携して治療にあたっているのも特徴です。

循環器疾患では、経皮的冠動脈インターベーション(PCI)などの治療を実施しています。

消化器疾患では、内視鏡を用いた腫瘍切除(しゅようせつじょ)や胆管結石・胆嚢結石の治療を実施しており、呼吸器疾患に対しては、気管支鏡による診断なども行っています。

整形外科ではご高齢の患者さんの大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)の治療が多く、こうした外科的手術が必要な外傷の診療は、内科と整形外科が協力しています。整形外科は手術と創部の管理を集中して行い、肺炎を患っている場合や、リハビリテーションが必要な場合の対応は内科が行います。

私たちは、「地域から信頼される病院」を目標にしています。

住民のみなさまに当院の診療を信用していただくことはもちろん、困ったときに「岡山協立病院に相談したら、何とかしてくれる」と暮らしのなかで頼りにしていただけるような病院を目指しています。また、急性期医療と慢性期医療を結ぶ、ネットワークを大切にしています。

当院の所属する岡山医療生活協同組合では、約60,000人が加入しており、約5,000~6,000人の方が組合活動を行なっています。その活動実績を1つ、紹介いたします。

ある坂の上の地域で、組合員が主体となり近隣の施設やお店などを掲載した地図を作っていたときの話です。その地域にはご高齢の方が多く住んでおり、坂の下のお店から買い物した荷物を持って坂を登って自宅へ帰るのが困難でした。

そこで「もっと多くの家庭が困っているのではないか?」と、1軒1軒に話を聞いて回ると、買い物のほかにも介護など、多くの方が問題をかかえていることが分かったのです。

解決策の1つとして、坂の上にも移動販売業者の方に来てもらったところ、ご高齢の方も気軽に買い物ができるようになり、そこで小さなコミュニティが生まれたそうです。

この組合員の活動を受けて、当院においても外来の患者さん一人ひとりの生活状況を知る必要性を再認識し、2か月で約3,000名の方を対象にアンケートを実施しました。すると、その内2割ほどの方は病気になっても看病してくれる人がいないことが分かりました。また通院の交通手段で困っている方がいることも把握できました。

当院は患者さんのかかえる問題と向き合い、患者さんのよりよい生活のためのサポートに努めています。

当院では、患者さんからの相談を受けたり、地域との連携を図るため “地域連携室”、“医療福祉相談室”、“入退院支援室”、“患者なんでも相談窓口”という4つの窓口を設けています。福祉施設や地域包括ケアセンターなどからの相談も多く、そこから受診へとつながるケースもあります。

また、岡山医療生活協同組合では、“地域なんでも相談窓口”として医療や介護に関することをはじめ、地域のさまざまな相談を受けています。

日常的なストレスや就労状況、所得、教育、成育歴、食事、交通の問題といった社会的な背景が生涯にわたる健康に大きく影響を及ぼすということがWHOで提唱されており、当院では単に病気と向き合うだけでなく、この健康の社会的決定要因についてカンファレンスを行うなどの取り組みをしています。

たとえば、就労状況が芳しくない糖尿病患者さんに対して「健康的な食事をしてください」とアドバイスしたとしても、食事にお金をかけられない状況であれば、アドバイスを守るのは難しく、病気も進行しやすくなるでしょう。こうした患者さんの社会的背景を含め病気を診ることは、当院の理念でもあります。

当院では医療安全向上のため、ミスが起こりづらい組織をつくることを大切にしています。そのために、具体的にはまず職員の心理的安全性を保てる環境を整えることを意識しています。ミスが起こる原因の多くは、思い込みやコミュニケーションの不足によるヒューマンエラーであるといわれており、意見を述べやすい風通しのよい組織であれば、そうしたエラーは起こりづらくなります。

当院では、ミスが起こった際に“なぜ間違えたのか”という視点と“間違いが起きたけれど致命的なミスにならなかったのはなぜか”という2つの視点から問題と向き合うようにしており、これを“グッドジョブ報告書”という形で報告をしてもらっています。いわゆるヒヤリハット事例ですが、これは裏を返せば、誰か他の職員がミスに至らぬようカバーしてくれたという“グッドジョブ”とも言えます。これができるのはやはり、心理的安全性が保たれており、誰もが発言しやすい環境があるからだと考えます。

また、風通しのよさは職員が自主的に動ける組織になるためにも必要だと考えています。新型コロナウイルスの流行時に職員が自発的にマニュアルつくったり、所属する科に関係なく発熱外来を担当するなど、病院で一丸となってコロナに立ち向かうことができました。この組織力は、安全な医療を提供するうえで欠かせないものです。

健康なからだを長く維持するためには、日々の生活から見直す必要があります。当院では、栄養士やトレーナーによる食生活や運動面で健康づくりのお手伝いもできますので、お気軽にご相談いただければと思います。

また、当院の「なんでも相談室」では、医療にかかわらず生活のなかで困ったことをご相談いただいています。お困りの方に手を差し伸べる「アウトリーチ」でもあります。

地域の患者さんが安心して何でもお話いただけて、いつでも頼っていただける病院となれるように、今後も岡山医療生活協同組合の病院として使命を果たして参ります。

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