院長インタビュー

地域に寄り添う病院を目指して─長崎みなとメディカルセンターの取り組み

地域に寄り添う病院を目指して─長崎みなとメディカルセンターの取り組み
兼松 隆之 先生

おんが病院・おかがき病院 統括院長、長崎大学 名誉教授、地方独立行政法人 長崎市立病院機構 元...

兼松 隆之 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

この記事の最終更新は2018年11月19日です。

長崎県長崎市に位置する長崎みなとメディカルセンターは地域の急性期医療を担っています。救急患者さんの受け入れやがん診療などの急性期医療から、女性にやさしい医療の提供のための女性専用の外来(愛称:マーメイド外来)など多くの取り組みを実施しています。同院の取り組みについて、地方独立行政法人長崎市立病院機構 長崎みなとメディカルセンター 院長 兼松隆之先生にお話を伺いました。

2012年に長崎市から独立行政法人化し、病院の経営形態が変わり、同時に診療体制の強化を行ってきました。そのなかのひとつに、救急医療体制の強化があります。

二次救急医療体制 病院群輪番制病院として、軽症の1次救急から重症の3次救急まで受け入れています。病院群輪番制病院とは、休日や夜間等に対応できる地域の病院が、日を決めて順番に担当する輪番制に参加している病院のことを言います。

2012年から断らない救急医療を目指し、診療科の増設や人員の増加等などの体制の整備を行ってきた結果、現在は循環器疾患をはじめ、脳梗塞などの脳血管疾患、大腿骨頸部骨折などの整形外科疾患、消化器系の緊急内視鏡など多くの救急患者さんを受け入れています。今後も地域のニーズに応えるため、同じ輪番制病院と連携するとともに、どの分野の患者さんも受け入れることができるよう体制をさらに強化していきたいと考えています。

長崎みなとメディカルセンター外観(長崎みなとメディカルセンターよりご提供)

救急患者さんの断らない医療の実現とともにスタッフの健康も守るためには、スタッフの働き方改革は重要な課題です。救急患者さんは日中、夜間問わずに搬送されます。現在夜間は、内科の医師や外科の医師など、診療科を越えて連携し、必要に応じて各診療科の医師を呼び出すオンコール体制も整えていますが、今後さらに地域のニーズに合わせた救急医療体制を構築していくためには、引き続き院内体制の整備は重要な課題です。

外来待合スペース(長崎みなとメディカルセンターよりご提供)

当院は女性の患者さん、そして女性スタッフにやさしい病院でありたいと考えています。その考えから2014年6月より女性専用の外来(愛称:マーメイド外来)を開設しました。

女性の患者さんが少しでも受診しやすい外来を目指し、マーメイド外来では医師や看護師、検査技師、事務スタッフすべて女性スタッフが対応します。また、日中忙しく電話での予約が難しい方のために、マーメイド外来ではWEB予約を実施しています。

乳がん検診子宮がん検診などの婦人科検診をはじめ、泌尿器の症状や肛門科の症状は、女性から男性の医師に相談するのには恥ずかしさがあると思います。そのため、マーメイド外来では女性のための泌尿器科や女性のための肛門科を設置しています。

検査の結果、病気がみつかった場合は治療に男性医師も参加します。しかし、女性にとって最初に相談する相手を同じ女性にすることで、相談しやすい雰囲気をつくりたいと思っています。

実際にマーメイド外来での受診をきっかけに病気がみつかり、治療することになった患者さんもおられます。男性医師に相談しにくい症状などで受診をためらってしまい、治療が遅れてしまう患者さんをひとりでも減らしたいと願っています。

マーメイド外来は、毎週土曜日9時から12時(2018年5月現在)に完全予約制で実施していることも特徴の一つです。そのため、平日は仕事のため時間をつくることが難しい方や小さいお子さんがいるお母さんにも、待ち時間なく受診できるため、利用していただいています。

土曜日で普段の外来診療とは違った雰囲気のなか、診療までの待ち時間をリラックスして過ごすことができ、安心できる環境を提供するように努めています。

病棟でのカンファレンスの様子(長崎みなとメディカルセンターよりご提供)

当院は、地域の急性期医療を支えるためにさまざまな取り組みの強化をしています。そのひとつに、地域の医療機関との連携の強化があります。

地域の医療機関と連携を密接にすることで、急性期の治療が終わった患者さんを地域の医療機関に逆紹介することもスムーズになります。また、地域の先生方には急性期医療を提供する病院として、患者さんを紹介していただく際にもスムーズに行っていただけます。

地域の先生方と顔のみえる関係をつくるために、新任の医師がきた場合には地域の医療機関にご挨拶に伺っています。また、当院の広報担当が院内広報誌に地域の医療機関の取り組みなどをご紹介しています。

サイバーナイフ(長崎みなとメディカルセンターよりご提供)

当院では、2016年に放射線治療装置「サイバーナイフ」を導入し、がん診療における放射線治療の体制が充実しました。サイバーナイフを用いた治療は、地域や長崎県内の患者さんのみならず、県外からの患者さんも多く来院しています。

サイバーナイフは、ロボットアームの先に放射線治療装置が取り付けられており、腫瘍にピンポイントで放射線を照射することができます。ロボットアームが自由自在に動き、患者さんの呼吸により移動する腫瘍にも的確に照射することを可能にしています。

サイバーナイフは、頭蓋内病変(脳腫瘍、脳転移、AVM※1など)、頭頸部がん(鼻腔・咽頭・口腔の腫瘍、再発・転移)、肺がん肝がん前立腺がん腎細胞がん、脊髄動静脈奇形※2(せきずいどうじょうみゃくきけい)などを対象にしています。

※1……(脳動静脈奇形)脳のなかの動脈と静脈がナイダスと呼ばれる血管のかたまりで直接つながっている状態

※2……動脈と静脈の間が異常につながってしまった状態

2階ラウンジにあるステンドグラス(長崎みなとメディカルセンターよりご提供)

患者さんや地域のみなさまに親しみを持ってもらい、みなさまに信頼され愛される病院となることを目指し、スタッフが一丸となってより良い病院づくりに取り組んでいます。

その一つの取り組みとして、スタッフ全員の意識を高めるために、1年間をかけて、より良い病院づくりのためのワークショップを開催しました。このワークショップは、毎回40名のスタッフが参加し、8名ごとのグループに分かれ、グループディスカッションをした後、発表を行います。今病院の中にある課題・発展が必要な部分がテーマに設定され、病院が抱える課題について、スタッフ各自が自分の課題と認識し、さまざまな意見を出し合います。ワークショップで発表された意見は、より良い病院づくりに反映させ、すぐにでも実践できることは実践に移しています。このワークショップは、より良い病院づくりとしての取り組みだけでなく、スタッフが感じていたことや、積極的な意見を聞ける貴重な機会にもなりました。

ワークショップの様子(長崎みなとメディカルセンターよりご提供)

地域のみなさまに寄り添った医療を提供できるように、診療だけでなく、様々な取り組みを通して、地域のみなさまと交流し、当院を知ってもらえるよう努めています。

もちろん、地域の先生方との顔のみえる関係もさらに強化し、急性期治療が終了した患者さんが、安心して地域に戻れるよう、今後さらに仕組みを整備していきたいと思っています。

当院は、「7つの階段を登ろう!」を合言葉に、より良い医療の提供を目指し7つの目標を設定しています。当院にとってあまりにも高すぎる目標かもしれませんが、スタッフ一同が、7つの目標に向かって、今後も力を尽くしていく所存です。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

受診について相談する
  • おんが病院・おかがき病院 統括院長、長崎大学 名誉教授、地方独立行政法人 長崎市立病院機構 元理事長、長崎みなとメディカルセンター 元院長

    兼松 隆之 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。