院長インタビュー

慈仁の心で地域を支え地域に支えられる病院へ−京都岡本記念病院の歩み

慈仁の心で地域を支え地域に支えられる病院へ−京都岡本記念病院の歩み
佐野 統 先生

京都岡本記念病院 院長

佐野 統 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

この記事の最終更新は2018年10月04日です。

京都岡本記念病院は、親やきょうだいに向ける慈仁(じじん)の心で患者さんを受け入れ続け、地域を支え、そして地域に支え続けられてきた病院です。

2018年に開業112年目を迎えた同院では、重症の患者さんの治療も地域で完結させられる体制の構築を目標に、救急医療、がん診療、地域医療、災害医療、リハビリテーションの強化を進めてきました。

同院のあゆみ、診療体制とその特徴、地域にむけた活動、医師の採用教育体制などについて、病院長の佐野統先生にお話を伺いました。

北西面からみた病院外観(京都岡本記念病院よりご提供)

当院の前身となる診療所は、岡本豊蔵氏が京都伏見区に1906年に開業しました。岡本隆一氏が診療所を引き継ぎ、内科と小児科を標榜する診療所を1934年に開設。その後、診療所から病院への変更、法人化、第二岡本病院(宇治市)の開院、そして現在地の久御山への移転、機能分離などを行いました。途中、岡本隆一氏が会長、岡本豊洋氏が理事長にそれぞれ就任しました。

2018年現在、本院である「京都岡本記念病院」を筆頭に、開業の地にある「伏見岡本病院」、宇治で外来診療と透析治療を行う「おかもと総合クリニック」が中心となり、法人関連施設とともに、地域の皆さんに医療を提供しています。

病院ロビー(京都岡本記念病院よりご提供)

京都岡本記念病院の開設を機に、元理事長の岡本隆一氏が定めた病院憲章「この人はわが子、わが親、わが兄妹」を受け継いで、新たに「慈仁」を法人の理念に定めました。

慈仁とは相手のことを慈しむ心のことです。病気を抱える患者さんやご家族に他人行儀に接するのではなく、家族など自分にとって大切な人のように親身に接してまごころを込めた対応をしようという気持ちを表しました。

一次・二次救急医療を担う病院として、救急科が中心となり救急車などによる搬送者の受け入れと処置をしています。交通事故による多発外傷心筋梗塞脳卒中など、日常的な不調などを扱う医療機関では対応が難しい患者さんも24時間態勢で受け入れており、後遺症を残さず社会復帰を果たせるよう、他診療科と連携しながら適切な治療をしています。三次救急を担う救命救急センター承認を目指して、スタッフ一同尽力しおります。

MRI_3T(京都岡本記念病院よりご提供)

厚生労働大臣により、地域がん診療病院として2015年に指定されました。京都府のがん診療拠点病院と緊密に連携しながら、がん診療を行っています。

治療では手術、抗がん剤による化学療法、放射線治療を行っており、特に放射線治療では「リニアック」と呼ばれる装置を使用した高エネルギー放射線治療も実施しています。

また、病気に伴う心身の苦痛を低減する緩和ケア、病病連携や病診連携と呼ばれる近隣の病院や診療所との連携協力体制の強化や在宅ケアへの支援、セカンドオピニオンの導入、がん診療に関する意見交換などを行うキャンサーボードの実施など、治療以外のサポートにも力を入れています。

院内のスタッフステーションの様子(京都岡本記念病院よりご提供)

転院や通院などの負担を軽減するため、可能な限りこの地域で治療を完結できる体制を作ろうと考え、各診療科の診療機能を強化しました。

救急医療で扱うことも多い循環器内科では虚血性心疾患心不全など、心臓血管外科では大動脈解離動脈瘤破裂といった、緊急かつ重症度の高い病気を迅速に治療し、両診療科が連携することも可能な体制を整備しました。

脳神経領域では、脳神経外科と脳神経内科がそれぞれの強みをいかして、脳、脳血管、脳神経、脊髄に生じた異常を調べたり治療したりします。当院はリハビリテーションにも力を入れており、診断から社会復帰に向けたトレーニングまで一貫した対応が可能です。

地域医療支援病院の承認を2012年に受けました。

地域医療支援病院とは、風邪をはじめとする日常的な不調の診療をするかかりつけ医では対応が難しい症例を受け入れたり、必要に応じて大学病院などへ紹介したりする病院のことです。病気などが落ち着いてきた患者さんが地域に戻れるよう手助けするのも大切な役割のひとつであり、患者さんの状態に適した治療を提供できる地域の医療機関を紹介するハブのような機能を担っています。

屋上ヘリポート(京都岡本記念病院よりご提供)

当院は京都府の災害拠点病院の指定を受けており、屋上ヘリポートや自家発電装置を備えています。また、当院では専門的な訓練を受けた職員による災害派遣医療チームDMATを結成、災害や大事故発生時に被災地に派遣して、急性期治療などの医療支援や被災地への広域医療搬送などの病院支援を行っています。

入院された患者さんがもとの生活に戻ってその人らしさを取り戻すためには、心身へのダメージの回復と、「できる」ことを「している」ようにするためのトレーニングが欠かせません。当院では、リハビリテーション科のスタッフと多職種連携によるチーム医療でリハビリテーションを実施しています。

2005年には、京都府より「京都府地域リハビリテーション支援センター」の指定と委託を受けました。地域におけるリハビリテーションの発展と充実を進める中核的存在として、府内各地の拠点である協力病院、保健所、行政、地域包括ケアセンター、介護保険施設などの垣根を超えて、連携システムの構築、生活期リハビリテーション支援の向上、難渋事例への対応など、情報共有をしています。

医療を知っていただくきっかけや健康管理に役立てていただくため、健康講座や地域に向けた情報発信にも力を入れております。

健康講座では、各診療科の医師による病気の話、栄養士による栄養と食事の話、コメディカルによる転倒や誤嚥など日常起こしやすいトラブルとその予防方法など、なるべく専門用語を使わず、わかりやすく解説しています。

より多くの方に役立てていただくため、ご希望の場所での出張健康講座も開催しています。

カンファレンスの様子(京都岡本記念病院よりご提供)

地域全体で患者さんを治して支えていくため、病院と病院が協力しあう病病連携や、クリニックや診療所など開業医の先生と連係する病診連携など、顔の見える関係づくりを大切にしています。

日頃から情報交換などを積極的に行うほか、近隣医療機関の医師やスタッフを当院に招待して多職種カンファレンスや研修会なども精力的に開催しており、地域全体の診療レベル向上にも貢献しています。

医学生の実習、医師・看護師・コメディカルの臨床研修、初期臨床研修医、後期臨床研修医をそれぞれ受け入れています。救急医療からリハビリテーションまで多様な医療実習を手がけており、また多くの診療科で系統立てて学べることから、毎年大勢の方が当院での研修を志望しています。

日々の業務以外に院内で勉強会や講習会を積極的に開催して、各診療科の垣根が低いため、医療従事者同士が相談や質問をしやすい職場です。

また、学会や研究会への参加費用や資格取得のための費用負担なども行っています。

24時間対応可能な院内保育園があることに加え、女性医師が多く在籍しており、仕事と生活の悩みを相談しやすい環境も整っていることから、女性に優しい病院としても知られています。

結婚、妊娠、出産などのライフイベントにより、キャリア変更を余儀なくされる女性医師は多いです。当院では、仕事と家庭の両立を目指す女性医師の活躍を応援しています。

当院には、医師としての自身を磨き上げるための環境が整っていると思います。しかし、現状に満足せず、さらなる高みを目指し、勇気と野心をもって若いうちに海外へ研究・臨床留学してください。海外での経験は、皆さんを一回りも二回りも大きく成長させてくれます。日本を代表するような立派な医師になって、多くの患者さんを救ってください。

開業以来、患者さんやご家族のことを家族のように考え、「この病院になら自分や家族の命を預けられる」と思っていただけるような診療を続けてまいりました。

医療技術は日々進化しており医療制度も大きな転換期を迎えていますが、開業当時の精神を忘れることなく「地域を支え、地域に支えられる病院」として皆さんの役に立ちたい。それが当院の職員全ての願いであり目標です。