院長インタビュー

慈仁の心で地域を支え地域に支えられる病院へ――京都岡本記念病院の歩み

慈仁の心で地域を支え地域に支えられる病院へ――京都岡本記念病院の歩み
髙木 敏貴 先生

京都岡本記念病院 院長

髙木 敏貴 先生

目次
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京都岡本記念病院は、親やきょうだいに向ける慈仁(じじん)の心で患者さんを受け入れ続け、地域を支え、そして地域に支え続けられてきた病院です。

2024年で開業118年、法人化70年を迎える同院では、重症の患者さんの治療も地域で完結させられる体制の構築を目標に、救急医療、がん診療、地域医療、災害医療、リハビリテーションの強化を進めてきました。

同院のあゆみ、診療体制とその特徴、地域にむけた活動、医師の採用教育体制などについて、病院長の髙木 敏貴(たかぎ としたか)先生にお話を伺いました。

北西面からみた病院外観
北西面からみた病院外観(京都岡本記念病院よりご提供)

当院の前身となる診療所は、岡本豊蔵氏が京都伏見区に1906年に開業しました。岡本隆一氏が診療所を引き継ぎ、内科と小児科を標榜する診療所を1934年に開設。その後、診療所から病院への変更、法人化、第二岡本病院(宇治市)の開院、そして現在地の久御山への移転、機能分離などを行いました。2018年には、岡本豊洋氏が会長、藤井信吾氏が理事長、岡本洋平氏が副理事長にそれぞれ就任しました。

2024年現在、久御山町にある“京都岡本記念病院”、開業の地にある“伏見岡本病院”、宇治市にある“おかもとクリニック”、法人関連施設で地域の皆さんに医療と介護を提供しています。

また、2025年には、京都岡本記念病院の南隣に回復機能を持つ“くみやま岡本病院”を新たに開院予定です。

くみやま岡本病院の完成予想図
くみやま岡本病院の完成予想図(京都岡本記念病院よりご提供)
病院ロビー
病院ロビー(京都岡本記念病院よりご提供)

京都岡本記念病院の開設を機に、元理事長の岡本隆一氏が定めた病院憲章『この人はわが子、わが親、わが兄妹』を受け継いで、新たに『慈仁』を法人の理念に定めました。

慈仁とは相手のことを慈しむ心のことです。病気を抱える患者さんやご家族に他人行儀に接するのではなく、家族など自分にとって大切な人のように親身に接してまごころを込めた対応をしようという気持ちを表しました。

一次・二次救急医療を担う病院として、救急科が中心となり救急車などによる搬送者の受け入れと処置をしています。交通事故による多発外傷心筋梗塞脳卒中など、日常的な不調などを扱う医療機関では対応が難しい患者さんも24時間体制で受け入れており、後遺症を残さず社会復帰を果たせるよう、他診療科と連携しながら適切な治療をしています。

2023年1~12月の救急車・ドクターヘリの搬入件数は6,734件と多くの患者さんを受け入れ、三次救急を担う救命救急センター承認を目指してスタッフ一同尽力しております。

MRI_3T
MRI_3T(京都岡本記念病院よりご提供)

厚生労働大臣により、地域がん診療連携拠点病院として2020年に指定されました。京都府のがん診療拠点病院と緊密に連携しながら、がん診療を行っています。

治療では手術、抗がん薬による化学療法、放射線治療を行っており、特に放射線治療では“リニアック”と呼ばれる装置を使用した高エネルギー放射線治療も実施しています。

そのほか、2021年12月には手術支援ロボット“da Vinci Xi”を導入しました。泌尿器科では前立腺がん、消化器外科では胃がん直腸がん、呼吸器外科では肺がんなど、順次手術対象を広げており、低侵襲な治療を心がけています。

リニアック
リニアック(京都岡本記念病院よりご提供)
da Vinci
da Vinci(京都岡本記念病院よりご提供)

また、病気に伴う心身の苦痛を低減する緩和ケア、病病連携や病診連携と呼ばれる近隣の病院や診療所との連携協力体制の強化や在宅ケアへの支援、セカンドオピニオンの導入、がん診療に関する意見交換などを行うキャンサーボードの実施など、治療以外のサポートにも力を入れています。

2024年には、可能な限り早い段階からチームで介入して継続的な治療が行えるよう、専任の医師を迎えて“緩和ケア科”を新設しました。さらに、同年2月にがん相談支援センターをリノベーションし、広くゆったりとした“がん情報コーナー”で患者さん・ご家族のさまざまな相談に対応しています。

がん相談支援センター
がん相談支援センター(京都岡本記念病院よりご提供)
院内のスタッフステーションの様子
院内のスタッフステーションの様子(京都岡本記念病院よりご提供)

地域の皆さんへ必要な医療を届けるために、各診療科の診療機能を強化しました。

 

特に当院の泌尿器科は、新しい技術を取り入れて前立腺がんや膀胱がんの診断や治療に取り組んでいるため、大学病院と同じレベルの医療を提供していると自負しています。

また、2024年4月からは循環器内科と心臓血管外科がワン・チームで急性期を中心とした幅広い心血管疾患に対応する“循環器センター”を開設しました。ハイブリッド手術室も備え、外科手術と血管造影カテーテル治療がシームレスに行える環境も整っています。

ハイブリッド手術室
ハイブリッド手術室(京都岡本記念病院よりご提供)

脳神経領域では、脳神経外科と脳神経内科がそれぞれの強みを生かして、脳、脳血管、脳神経、脊髄に生じた異常を調べたり治療したりします。当院はリハビリテーションにも力を入れており、診断から社会復帰に向けたトレーニングまで一貫した対応が可能です。

また、専門スタッフの充実やSCU(脳卒中専門の集中治療室)を有していること、24時間MRI検査・CT検査が可能なことなどが認められ、2019年より日本脳卒中学会から“一次脳卒中センター(Primary Stroke Center:PSC)”に認定されています。

地域医療支援病院の承認を2012年に受けました。

地域医療支援病院とは、風邪をはじめとする日常的な不調の診療をするかかりつけ医では対応が難しい症例を受け入れたり、必要に応じて大学病院などへ紹介したりする病院のことです。病気などが落ち着いてきた患者さんが地域に戻れるよう手助けするのも大切な役割のひとつであり、患者さんの状態に適した治療を提供できる地域の医療機関を紹介するハブのような機能を担っています。

地域医療支援病院として、当院では病診連携登録医制度や地域の先生方と顔の見える勉強会を開くなど地域の先生方との連携に注力しています。こういった取り組みを通じて、今後も地域の先生方としっかりと連携を図れるような環境づくりに努めていきたいと考えています。

屋上ヘリポート
​屋上ヘリポート(京都岡本記念病院よりご提供)

当院は京都府の災害拠点病院の指定を受けており、屋上ヘリポートや自家発電装置を備えています。また、当院では専門的な訓練を受けた職員による災害派遣医療チームDMATを結成、災害や大事故発生時に被災地に派遣して、急性期治療などの医療支援や被災地への広域医療搬送などの病院支援を行っています。

2024年1月に起こった能登半島地震の際には、順次3隊のDMAT隊を派遣しました。

入院された患者さんがもとの生活に戻ってその人らしさを取り戻すためには、心身へのダメージの回復と、“できる”ことを“している”ようにするためのトレーニングが欠かせません。当院では、リハビリテーションのスタッフと多職種連携によるチーム医療でリハビリテーションを実施しています。

2005年には、京都府より“山城北圏域地域リハビリテーション支援センター”の指定と委託を受けました。地域におけるリハビリテーションの発展と充実を進める中核的存在として、府内各地の拠点である協力病院、保健所、行政、地域包括ケアセンター、介護保険施設などの垣根を超えて、連携システムの構築、生活期リハビリテーション支援の向上、難渋事例への対応など、情報共有をしています。

また当院の隣には、在宅医療に取り組んでいらっしゃる先生方とシームレスな連携に力を入れていくことを目指して、“くみやま岡本病院”を新設中です(2024年4月時点)。地域包括ケア病床50床と回復期リハビリテーション50床の計100床を有する予定で、今後は患者さんの回復期への移行、さらに在宅までをスムーズに行うことが可能になると期待しています。

医療を知っていただくきっかけや健康管理に役立てていただくため、健康講座や地域に向けた情報発信にも力を入れております。一時は、新型コロナウイルス感染症のまん延により休止していましたが、2024年から院内健康講座や出張健康講座を再開しました。

院内健康講座では、各診療科の医師による病気の話、栄養士による栄養と食事の話、コメディカルによる転倒や誤嚥など日常起こしやすいトラブルとその予防方法など、なるべく専門用語を使わず、分かりやすく解説しています。

より多くの方に役立てていただくため、ご希望の場所での出張健康講座も開催しています。 2024年1月には久御山町生涯学習応援課が主催する“久御山いきがい大学”へ出張し、実演を交えて約100人の参加者へ講演を行いました。

地域医療機関とのカンファレンスの様子
地域医療機関とのカンファレンスの様子(京都岡本記念病院よりご提供)

地域全体で患者さんを治して支えていくため、病院と病院が協力しあう病病連携や、クリニックや診療所など開業医の先生と連係する病診連携など、顔の見える関係づくりを大切にしています。

日頃から情報交換などを積極的に行うほか、近隣医療機関の医師やスタッフを当院に招待して多職種カンファレンスや研修会なども精力的に開催しており、地域全体の診療レベル向上にも貢献しています。

医学生の実習、医師・看護師・コメディカルの臨床研修、初期臨床研修医、専攻医をそれぞれ受け入れています。救急医療からリハビリテーションまで多様な医療実習を手がけており、また多くの診療科で系統立てて学べることから、毎年大勢の方が当院での研修を志望しています。

日々の業務以外に院内で勉強会や講習会を積極的に開催して、各診療科の垣根が低いため、医療従事者同士が相談や質問をしやすい職場です。

また、学会や研究会への参加費用や資格取得のための費用負担なども行っています。

そのほか、職員の研究成果の発表の場として発行していた“岡本医学雑誌(OMJ:Okamoto Medical Journal)”を2022年度からオンラインジャーナル化しました。教育担当顧問の下で全世界に出せる論文作成ができるなど、研究に力を入れたい医師をサポートする体制も整っています。

当院では職員全体の満足度を上げられるよう、さまざまな工夫をして職員にやさしい環境づくりにも努めています。

また、24時間対応可能な院内保育園があることに加え、女性医師が多く在籍しており、仕事と生活の悩みを相談しやすい環境も整っていることから、女性に優しい病院としても知られています。

結婚、妊娠、出産などのライフイベントにより、キャリア変更を余儀なくされる女性医師は多いです。当院では、仕事と家庭の両立を目指す女性医師の活躍を応援しています。

当院には、医師としての自身を磨き上げるための環境が整っていると思います。

自身を向上させるという意味では若手医師の皆さんの役に立てる病院ですので、ぜひ自身の医師としての能力を上げていくという目的で、情熱を持って当院へ来ていただければと思います。

当院は、病院憲章の『この人はわが子、わが親、わが兄妹』といった気持ちを大切に、患者さんやご家族のことを家族のように考え、心を寄り添って精一杯患者さんへ医療を提供しています。

開院当時の精神を忘れることなく、『地域を支え、地域に支えられる病院』として、安心・安全・納得の医療を提供することが当院の職員全ての目標です。今後もこの基本方針を忘れることなく、地域の皆さんへよりよい医療を提供することに努めてまいります。

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