院長インタビュー

地域住民のための公立病院を目指して―市立奈良病院の取り組み

地域住民のための公立病院を目指して―市立奈良病院の取り組み
矢島 弘嗣 先生

市立奈良病院 名誉院長

矢島 弘嗣 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年10月09日です。

市立奈良病院は、2004年に国立病院を奈良市に移管する形で開設された病院であり、急性期を中心とした幅広い医療を展開しています。2014年には新病院がグランドオープンし、手術室の増室やICU・CCU、緩和ケア病棟の新設など病院機能の拡充を進めました。

同院の医療の特徴や理想の病院像について、院長である矢島 弘嗣先生にお話を伺いました。

病院外観 市立奈良病院ご提供

市立奈良病院は、公立病院でありながら公益社団法人 地域医療振興協会が運営を担う珍しい体制の病院です。幅広い診療科とチーム医療の質向上を目指したセンターを構え、「公的な使命を持った民間運営の病院」として、市民の皆さまに必要な医療をより効率的に提供できる体制の構築を目指しています。

診療風景 市立奈良病院ご提供

奈良県は中規模病院が多いことが特徴であり、救急患者さんを受け入れる体制が十分に整っているとは言えません。そうした中で、当院は地域の中核病院として他医療機関と連携し、市内の救急医療体制の構築に努めてます。

搬送された患者さんの初期対応は、小児科・産科領域を除き総合診療科で行い、必要時には速やかに各診療科の担当医の治療が受けられる体制をとっています。集中的な全身管理が必要と判断された重症患者さんは、ICU・CCUを設備した集中治療部で受け入れています。

ドクターカーも運用し、市内の救急患者さんを積極的に受け入れています。

2009年には、地域がん診療連携拠点病院に認定されました。乳腺センターが中心となって行う乳がん治療では、がんを切除するだけでなく日本形成外科学会認定の形成外科専門医による乳房再建術も行っていることが特徴です。

消化器外科でも消化器がんの症例数が増えており、近年では腹腔鏡下手術を積極的に行っています。腹腔鏡下手術は、臍部(おへそ)の周りを数センチ切開して内視鏡を腹腔内へ挿入し、モニターの映像を見ながら行います。メスを入れる範囲を小さく抑えることができるため、術後の早期回復が期待できます。

また、緩和ケアにも力を入れていきたいと思っています。緩和ケアの担当医師は在籍していますが(2018年5月時点)、それだけでは充実した緩和ケアは提供できません。看護師やコメディカルの存在も重要です。今後は、日本看護協会に認定されるがん化学療法看護師など、専門的な知識・技術を持った看護師の育成にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

整形外科では関節リウマチに対する人工関節置換術の実施や、頚椎症性脊髄症や頭椎椎間板ヘルニアなど脊椎(背骨)に生じる病気などに対する外科的、保存的療法を含めた対応を行っています。

2010年4月には、四肢外傷センターを設立し交通事故や転倒による骨折や靭帯、神経などの損傷から、偽関節や変形治癒といった外傷治療後の合併症にまで幅広く対応しています。手のしびれや腱鞘炎、指の関節炎など手や肘に関する一般的な病気に対しても治療を行うことが可能です。

市民病院では、患者さん目線で医療を行うことが大切です。患者さんが安心して受診でき、より適切な医療を受けられるようにしなければなりません。

そしてもうひとつ、当院は奈良県立医科大学と京都府立医科大学の関連病院であり、基幹型臨床研修病院となっています。つまり、若手の医師が学びに来る病院ということです。また、医師だけでなく、看護師や薬剤師、リハビリテーションスタッフ、臨床検査技師などを教育することも、地域のチーム医療の質向上を図るうえでは大切です。若手の医療従事者が学びやすい環境をつくることも当院の使命のだと考えています。

地域の皆さまのための市民病院であること、そしてスタッフを育てることのできる病院であること、それが市立奈良病院のあるべき姿だと考えています。

院内講習会 市立奈良病院ご提供

若いうちは、自身の技術を高めていくことが非常に大切です。海外留学や専門医資格の取得に積極的に取り組んでほしいと思います。

また、一点に特化した専門性を極めることももちろん大事ですが、当院には総合診療科があるため総合診療と、地域医療振興会に属する病院であるため僻地医療も学ぶことができます。

特に、患者さんの高齢化が進めば、受診のきっかけとなった病気のほかに糖尿病高血圧症などの基礎疾患を持つ方も多くなるため、超高齢化社会に突入した日本にとって総合的な診療ができる医師を育てることは、必要不可欠なことだと言えます。地域のための医療を学びたいという方は、ぜひ当院に来ていただきたいです。

地域の方々にお願いしたいことは、信頼できるかかりつけ医の先生を見つけてほしいということです。まずはかかりつけ医の先生にご相談いただき、必要があれば当院の紹介を受けてください。それにより、1人でも多くの本当に当院の医療を必要としている方に貢献できるようになると考えています。

もちろん、当院にいらした患者さんには職員全員が一丸となり、充実した医療の提供に精一杯努めます。ぜひ、ご協力をお願いいたします。

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