耳鼻咽喉科麻生病院は北海道札幌市にある、耳鼻咽喉科と歯科口腔外科それぞれの診療に尽力する病院です。外来診療のみでなく手術や入院治療もできる病院として、地域にお住まいの方からの信頼も厚いです。
開院の経緯、診療科と特長、病院独自の取り組みなどについて、理事長の大橋 正實先生にお話を伺いました。
1980年代後半、日本は病院開設ラッシュを迎え、北海道でも総合病院などの開設が相次ぎました。特に札幌は飽和状態ともいえるレベルに達していたものの、そのなかに耳鼻咽喉科を専門に掲げる病院はありませんでした。
こうした実情を知り、外来から手術、アフターケアに至るまでの耳鼻咽喉科診療を一貫して実施できる病院を作ろうと考え、耳鼻咽喉科麻生病院を1987年に開院しました。
開院当初はマンパワー不足に悩んだこともありましたが、職員の待遇改善や理念の共有によるモチベーション向上といった職場づくりを進めた結果、一人、また一人と、当院の医療に対する思いや理念に共感してくださる医療人が集まり、仲間として活動してもらえるようになりました。
病院が成長するにしたがって、年中無休診療や平日19時までの夜間診療といった診療時間の拡大、補聴器や医療器具販売などを行う関連会社の設立、サテライトクリニック開院など、徐々に事業を拡大していきました。北見市内でも耳鼻咽喉科領域の診療を必要とする方が多いことを知り、1997年に麻生北見病院を開設しました。2015年には新病院移転と歯科口腔外科の開設により再スタートを切りました。
病気に休みはありません。私たちは耳鼻咽喉科領域・口腔領域診療を担う医療人として、可能な限り患者さんの要望を伺い、適切な治療方法をご提案できるよう日々努力しています。
耳鼻咽喉科では、かぜや中耳炎、副鼻腔炎など日常的にかかりやすい病気から突発性難聴や聴神経腫瘍まで耳・鼻・喉に生じる病気全般を、薬剤を使用した内科的治療と手術を含めた外科的治療の力で“治す”ことを目的に診療しています。
当院では1996年から人工内耳植込術を実施しています。人工内耳とは耳の奥にある蝸牛と呼ばれる感覚器官に設置する人工臓器のことで、人工内耳植込術では高度難聴など耳の聞こえが悪い方に人工内耳を設置して、聴力の回復をねらいます。当院では、難聴の程度や手術適応の有無など事前の検査のみでなく、術後のリハビリテーションや言語聴覚士によるアフターケアなども一貫して実施しています。
また、当院では甲状腺の診療も耳鼻咽喉科が担当しており、甲状腺疾患に対する内視鏡手術などを行っております。
一般的に、甲状腺疾患の手術は首の中央の辺りを切開して行うため、人の目につきやすい首に比較的大きな手術のあとが残ることが整容面で問題になっていました。そのため当院では、整容面の問題に対して有効性が高い内視鏡下甲状腺手術(VANS法)という術式を導入し、患者さんの身体的・精神的負担を軽減することに努めています。
当院では術式の適応があるか正確に判断するだけでなく、病気の種類や大きさ、患者さんの希望などを考慮したうえで患者さん一人ひとりに合った術式を選択していますので、ぜひお気軽にご相談ください。
歯科口腔外科では、口腔領域を構成する歯、歯肉、舌、顎、頬粘膜、口唇に生じた異常の原因を調べたり治療したりします。原因は歯の異常によるものから、嚢胞、腫瘍、外傷、かみ合わせ、唾液腺や顎下腺の異常、口腔粘膜疾患、神経性疾患まで多岐にわたります。
歯科口腔外科領域の病気は、機能のみでなく見た目の美しさにも悪影響を与えることがあります。そのため治療時には、原因の除去や機能回復のみでなく、見た目の美しさにも最大限配慮した方法をご提案しています。
口腔領域は耳鼻咽喉科領域の一部である副鼻腔と密接な関係にあるため、必要に応じて耳鼻咽喉科領域の医師と連携しながら診療することがあります。また、一般的な歯科医院では対応が難しい手術なども行っているため、地域の歯科医院から当院をご紹介していただく機会も多いです。
口腔領域には、食べものを噛んで飲み込んだり発音したりするはたらきもあります。口腔機能が低下する“オーラルフレイル”になると、ものを飲み込みにくくなって食事量が減ることで低栄養を起こしたり、むせやすくなることで誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)などの感染症を起こしやすくなったりするなど、健康に悪影響を及ぼします。口の異常から将来の健康が損なわれることがないよう、歯科口腔検診も受け付けています。
より多くの方に、スムーズに医療を提供できる環境を作ろうと考え、その後、隣接地取得の目途が立ったことにより、2011年に新病院建設計画がスタートします。
新病院を建設するにあたり「地域に根ざした、ランドマークになる建物をつくろう」と考え、“夢の新病院像”のデザイン案を職員から募集、集まったアイデアにプロの手を加えました。
そうして完成したのが、柔らかな曲線を描くガラス窓から入る外光が吹き抜けの待合ロビーへと注ぎ込む、明るさと開放感にあふれる新病院です。
地域に開かれたランドマーク的存在として、開放感、清潔感、落ち着きのある空間づくりを意識しました。
当院の玄関であり顔でもある待合ロビーは開放感にあふれ、フォトギャラリーには当院に在籍するカメラが趣味の医師が撮影した北海道の四季の写真を展示するなど、安らぎと癒しを提供しています。
また、入院中もリラックスして過ごしてもらえるよう、デイルームにはテレビや雑誌を置いたほか、浴槽は30分間貸し切りで使えるなど、病棟内設備にも力を入れました。また、病棟廊下と患者さん専用の食堂の廊下の2か所では、秋田県の画家の作品を展示しています。
当院は、一般社団法人 照明学会が選出する『平成27年度照明普及賞』を受賞し、北海道を代表する照明施設の1つとしても広く知られるようになりました。
組織が大きくなり職員も増えると、組織としての理念や意識共有が重要になります。時代が変わっても“決して変わることのない麻生の思いと価値観”を当院で働く全ての職員と共有するため、クレドを導入しました。
クレドとはアメリカの企業で始まった価値観共有方法の1つで、職員は価値観や行動規範を書きとめたカードを常に携帯して日々の行動規範とすることによって、サービスの質向上をねらいます。
自分たちで作った約束事という意識を持ってもらうため、あえて外部のアドバイザーは入れず、当院の総務課が中心となって病院全体の理念、日々の診療で気を付けることなどを明文化しました。
医師不足が続く北海道では医療過疎が進行、地域によっては休止する診療科もあるなど事態は年々深刻化しています。当院は公益性の高い社会医療法人として栗山赤十字病院、日高町立日高国民健康保険診療所、夕張市立診療所などに定期的に医師を派遣しています。
北海道に住む方が医療で困ることのないよう、今後も僻地医療を支援し続けます。
食べるのは生きていくのに欠かせないことであると同時に、楽しみも感じる機会でもあります。当院の栄養科では、入院されている患者さんのことを考え「病院食だからこれでよい」ではなく「病院食だからこそ美味しくて楽しいものを!」という思いで、心と体にやさしい食事を作っています。
栄養科で考案したレシピの中には、医療機関や介護老人保健施設に在籍する管理栄養士や調理師を対象に開催される病院食グランプリで、表彰されたものもあります。これらのレシピは当院のホームページやフリーペーパーで公開しています。
開院以来、当院を受診してくださった皆さんの信頼に応えるため、昨日よりも今日、今日よりも明日、という思いで一歩ずつ前進してきました。北海道の皆さんが医療で困ることのないよう、今後も職員一同励んでまいります。
「治療に対して不安や疑問がある」「もっとこうしてほしい」など気になることがあれば、いつでも職員にお伝えください。
毎日大勢の患者さんを診療して同僚の医師と切磋琢磨し合うことは、皆さんの経験値となり診療スキルの向上につながります。いま置かれている環境を最大限に生かして、医師としても、人としても、一流と呼ばれる存在に成長してください。
患者さんは、病気や症状のみでなく、健康に対する悩みや不安を抱えた状態で当院を受診されます。患者さんの体調だけでなく心の機微も察せられるよう、思いやりと誠意を持って接してください。
患者さんが笑顔になれるような優しい病院を目指して、職員一同力を合わせていきましょう。
社会医療法人 耳鼻咽喉科麻生 理事長
社会医療法人 耳鼻咽喉科麻生 理事長
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門医
北海道大学医学部後、道内で耳鼻咽喉科医としての技量研鑽に勤しむ。
日本全体が新病院建設ラッシュに沸くなか、「道内には耳鼻咽喉科診療を外来・手術・アフターケアまで一貫して手がけている病院がない。ならば自分がそういう病院を作って医療を届けたい」という思いが高じて、1987年1月に耳鼻咽喉科麻生病院を開院する。以来30年以上に渡り、診療・経営の第一線で活躍し続けてきた。
病院運営では患者さんと同じくらい職員を大切にすることが欠かせないと考え、職員が幸せに働ける職場づくりにも取り組む。患者さんにも職員にも正面から向き合い、ともに考え導く姿を「ミスター麻生」と慕う人も多い。
趣味は茶道(石州流)、ゴルフ、海外旅行と現地で撮った写真のアルバムづくり。
大橋 正實 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。