広島県福山市に位置する中国中央病院は、医師数50名※ほどの施設でありながら、国際的な治験に参加するなど、日本の医療をリードしていくための取り組みを行い続けています。
医師や看護師、助産師などが一丸となって画期的な活動に打ち込む根底には、近隣に同じ規模の病院が存在しておらず、「この地域の医療を支えていくのは自分たちしかいない」という強い使命感があるといいます。中国中央病院の役割と強み、改革について、病院長の上岡博先生にお話しいただきました。
※医師数について:2018年9月時点で常勤医師46名、非常勤医師(常勤換算数)4名が在籍しています。
中国中央病院は、福山市北部の急性期医療を担う病院として、時代の要請に応じた改革と、患者さん中心の診療を続けてきました。
当院が発足したきっかけは、1950年から60年代にかけて、学校に勤務する先生方の間で結核が流行したことです。ここ福山市にも結核診療を行える専門的な施設が求められるようになり、当院はその声にお応えする形で、教職員のための結核療養所※としてスタートしました。
※中国中央病院は、地方公務員等共済組合法に基づき設立された、公立学校共済組合という法人形態をとっています。
その後、結核の減少に伴い一般診療の枠を広げ、現在はより多様化する医療ニーズ応えるべく、既にある機能の強化と不足している機能の拡充に努めています。
現在の中国中央病院は、277床のベッドを有し、救急車受け入れ件数1,187件(2017年4月~2018年3月実績)の急性期病院として、多くの診療所と連携しながら、地域住民の皆さまの健康を守るという役割を担っています。
2018年3月には、「地域の医療を支援する設備や体制が整った病院」であるとして、広島県より地域医療支援病院の承認を受けました。
当院が地域医療を支える中核病院として認めていただいた背景には、得意分野の強化や、医療スタッフの新たな取り組みがあると考えています。
当院は呼吸器の病気と血液の病気の診療を得意分野としており、難しい病気を抱える患者さんにも安心して治療を受けていただけるような診療体制ができています。
たとえば、呼吸器の病気の中には肺がんや胸膜中皮腫といった悪性の病気もありますが、これらの病気を診断から治療、緩和ケアまで、一貫して提供できる体制が整っています。
呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科、腫瘍内科が垣根なく連携し、患者さん一人ひとりに適した治療を受けていただける環境づくりに力を入れているため、治療選択に迷ったときなどには、ぜひ何でもご相談ください。
もう1つの得意分野は、白血病を代表とする血液の病気の診療です。当院の血液内科病棟には52床のベッドがあり、そのうち10床は無菌室となっています。このような特殊な設備があるため、広島県東部地域では造血幹細胞移植を行うことができる唯一の施設として、地域の白血病患者さんを数多く受け入れることができています。
また、白血病をはじめとする造血器腫瘍の症例数が多いという強みを生かし、JALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)やJSCT(日本細胞移植研究会)など、全国規模の臨床研究や国際共同治験にも積極的に参加しています。
このように豊富な症例数を有し、多くの臨床研究に積極参加していることは、高い志を持つ医師が集まる理由のひとつにもなっています。
当院は決して大規模な施設ではありませんが、上記の強みを生かし、「ローカルからグローバルへ」という目標を掲げて、日本をリードするような医療提供に努めています。
福山市は広島県の保健医療計画では「福山・府中二次保健医療圏」に属しています。瀬戸内海側の福山市南部には、当院と同規模かそれ以上の施設が複数ありますが、当院の位置する福山市北部地域で一定のベッド数や設備を持つ施設は当院のみであり、私たちが福山・府中二次保健医療圏の北部を支える基幹病院であるという強い自覚を持っています。そのため、この地域で生じうる全ての病気、全てのトラブルに対応できる体制を持つことが、当院の目指すべき姿であると考えています。
しかしながら、現時点では循環器や神経の難しい病気に対応できる専門的な診療科が不足している状態にあります。今後は早急にこれらの病気を専門とする医師を増やし、言葉通り「どのような病気にも対応できる病院」へと成長していくことが、当院の課題であり使命であると考えています。
この数年で、当院に務める医療スタッフの意識と体制の改革が進んだ分野には救急医療があります。私が院長に就任した2016年以前には、救急車の受け入れ件数も地域医療支援病院の要件である年間1,000件を満たしておらず、救急医療への注力度合いはやや低迷状態にありました。
そこで、より積極的に地域の救急搬送患者さんを受け入れるべく、医師による救命措置の勉強会を始めるなど、院内における意識改革の機会を設けました。
当初は看護師のみを対象としていた勉強会には、いつしか管理栄養士や臨床検査技師、理学療法士などのコメディカルスタッフも参加するようになり、今では開催を告知するとすぐに定員に達するほど、意識や使命感に変化がみられています。
地域の救急隊と当院の医師との連携を図る研修会も、3~4か月に1度のペースで実施しています。この研修会では、実際に行われた救急搬送患者さんの受け渡しに関するフィードバックを1例1例振り返って行い、今後の受け渡しの質を高めるための検討を重ねています。
こういった機会を重ねるにつれ、中国中央病院で可能な限り多くの救急患者さんを受け入れていこうという一体感が高まり、救急車受け入れ件数が1,200件弱※にまで達するようになったものと感じています。
※2017年度の救急車受け入れ件数実績は1,187件
前項でも触れたように、当院の強みは医師や看護師だけでなく、医療の専門職であるコメディカルスタッフも勉強熱心で自発性を持っているところです。この項では、患者さんと実際に接することが多い看護師とコメディカルスタッフの取り組みについてご紹介します。
当院の看護部には、得意分野や高い専門性を持つ看護師が多く在籍しています。具体的には、公益社団法人日本看護師協会が認定するがん化学療法看護認定看護師、緩和ケア認定看護師、がん性疼痛看護認定看護師、感染管理認定看護師、糖尿病看護認定看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師が2018年9月時点で合計9名在籍しています。
また、当院では治験にも積極的に参加しているおり、薬剤師、看護師はもとより、臨床検査技師、診療放射線技師なども積極的に治験に参加しています。CRC(治験コーディネーター)看護師は、治験に参加される患者さんのケアを行い、精神的にも安心して治験に臨んでいただけるようサポートしています。
医師数50名の規模である当院で、日本をリードするような治験を順調に進められている背景には、看護師やコメディカルスタッフの前向きな姿勢も強く関係しているものと考えています。
当院は福山市北部地域で唯一のお産ができる総合病院としても知られています。そのため、助産師の意識も高く、妊娠されている方へのケアや分娩介助だけでなく、地域の学校への出前講座も積極的に行っています。
学校の生徒さんをはじめ、地域に住む全ての方に妊娠・出産を考えていただける環境を作っていくことも、この地域で子どもを生み、地域単位で子どもを育てることにつながっていくのではないかと感じています。
ここまで、院内体制やスタッフについてご紹介してきましたが、中国中央病院が何よりも大切にしていることは、「患者さんに対してやさしい医療を提供する」という基本理念です。
最近では、臨床研究への積極参加や救急車受け入れ件数の増加に伴い、当院で働くスタッフの忙しさや勉強すべきことも大いに増えました。このような多忙な時期であるからこそ、患者さんをこれまで以上に大切にしていこうと皆で呼びかけ合い、患者さんに対して「やさしい」医療提供や対応ができているか、互いに確認し合っています。
冒頭でも述べたように、中国中央病院は福山市北部地域の基幹病院として本来あるべき姿に近づくべく、あらゆる医療ニーズに対応できる体制づくりを進めています。医療に関することでお困りのことがあれば、いつでも、なんでも、お気軽にご相談ください。
公立学校共済組合 中国中央病院 院長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。