院長インタビュー

救急医療を担い、がん治療や専門医療でも地域に貢献する神鋼記念病院

救急医療を担い、がん治療や専門医療でも地域に貢献する神鋼記念病院
東山 洋 先生

神鋼記念病院 病院長

東山 洋 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

社会医療法人神鋼記念会 神鋼記念病院はその名の通り、株式会社 神戸製鋼所の診療所として、1915年に開設されました。1998年に神戸製鋼所から独立し、2015年には社会医療法人化に伴い神鋼病院から現在の“神鋼記念病院”へと名称変更されました。

現在、病院が建つのは神戸市の中央区であり、神戸製鋼所発祥の地です。交通アクセスはJR灘駅・阪急春日野道駅のどちらの駅からも徒歩で7分ほどです。29診療科・333病床を有し、DPC特定病院群(旧・DPCⅡ群)に2014年、2016年、2018年、2020年、2022年、2024年と6回連続認定されている同院は、どのような特色のある医療を提供しているのでしょうか。院長の東山 洋(ひがしやま ひろし)先生に詳しくお話を伺いました。

神鋼記念病院の外観

当院は、急性期病院として積極的に救急医療に取り組んでいます。2007年には新救急センターがオープンし、重症の患者さんも含め救急搬送された患者さんの受け入れを行っています。また、2008年には集中治療室(ICU)と心疾患集中治療室(CCU)を開設しました。これにより、高度急性期医療を24時間提供できる体制となっています。

特徴的なのは、24時間体制で救急患者さん受け入れていることに加えて、外来患者さんの診療にもあたっている点です。当院は昔からこの地域の住民の皆さまと深く信頼を築いており、“どうしても当院で受診したい”という患者さんが後を絶ちません。

現在は病診連携を推進すべく、2013年に地域医療連携センターを立ち上げ、業務にあたっています。今後は、スタッフをもう少し増員する必要があると考えています。

神鋼記念病院の石碑

当院は、2011年に兵庫県指定がん診療連携拠点病院の認定を受けており、さらに2021年4月より国指定のがん診療連携拠点病院に認定されています。神戸医療圏では4か所目の指定となります。

また、2023年1月よりがんゲノム医療連携病院としても認定を受けており、がん診療センターを中心に、各診療科が診断から治療、緩和ケアまで一貫した包括的ながん医療の提供に尽力しています。

当院では2007年より“乳腺センター”を開設しており、兵庫県下はもちろん全国的にみても乳がんの手術件数が多い病院となっています。現在、乳腺センターには11名の医師が所属しており、さらに乳がん専門の放射線科医、病理医、超音波検査技師、乳がん看護認定看護師(日本看護協会認定)などが在籍しています。

乳がんでは多くの場合、がん細胞の有無を確かめる病理検査が手術中に必要となります。その結果をみて、その後の手術の範囲をその場で決めています(術中迅速病理検査)。これを支えているのが病理診断センターです。当院には、常勤の日本病理学会認定の病理専門医が2名おり、非常に恵まれた環境だと考えています。

また、乳がんの手術では乳房を切除するため美容的配慮も大きな課題となりますが、当院では形成外科との連携による乳房再建を行っており、自家組織乳房再建を中心にインプラント(人工物)による再建、乳輪乳頭の再建などさまざまなバリエーションをそろえ取り組んでいます。

当院は、“乳がん治療が全て可能な病院”として、さまざまな診療科や専門職がチームとなり一丸となって診療にあったっています。

がん診療のなかでは、白血病などの血液がんも得意としています。患者さんに常により適切な治療を提供すべく、2010年に血液疾患移植センターを立ち上げました。血液内科と血液疾患移植センター、細胞治療室が一体となり診療にあたっています。

特筆すべきは無菌室の数であり、19床あります。血液関係のがんは、治療により免疫力が低下する場合があるため、無菌室が必要不可欠です。当院では血液疾患移植センター全体を無菌化しました。そのため、患者さんは病室だけでなく、面会コーナーなどにも立ち寄れます。ストレス軽減の観点から大きな意味があると思っています。

無菌病棟からの写真

当院の泌尿器科は、以前から前立腺がん治療で知られた存在です。2015年には手術支援ロボットである“ダヴィンチ”を導入し、現在では前立腺がんに対する標準的な治療としています。

同科は、膀胱がん手術も行っています。膀胱を全て摘出した患者さんに、小腸を使った新たな膀胱を造設する手術を目的に、兵庫県一帯から患者さんがお越しになります。

直腸がんの治療にも、特徴があります。肛門に近い直腸がんは通常、人工肛門の増設を余儀なくされます。しかし当院の外科では、肛門を温存する手術を積極的に行っています。一方で治療後、便の失禁や慢性の便秘に悩まされる患者さんも存在します。そのため2014年より、排便機能障害外来を始めました。大腸や肛門の機能を科学的に評価して治療しています。また、2018年11月より直腸がんの手術支援ロボット手術が認定基準を満たし、保険診療にて治療を開始しています。

前述のとおり、当院では2015年より手術支援ロボット“ダヴィンチ” を導入しており、2023年12月には、機器の更新も行いました。現在、前立腺がんをはじめ直腸がんや結腸がん、腎がんの部分切除、また肺がんに対してもロボット支援手術を行っています。今後は、手術支援ロボット2台目の導入も検討しており、適応の拡大とともに広く活用していければと考えています。

当院では、2023年4月よりがんゲノム医療を担当するがんゲノム診療科、がんゲノム外来を開設しています。がんゲノム医療とは、がんに関連する遺伝子を調べ診断や治療に役立てることです。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群に対するBRCA遺伝学的検査をはじめ、遺伝性腫瘍の原因遺伝子を調べる検査も行っています。また、当院はがんゲノム医療連携病院の指定を受けており、遺伝子パネル検査も実施可能となっています。

がん患者さんへの緩和ケアにも、当院は早期から取り組んでいます。2005年には“緩和ケアチーム”が活動を開始し、2011年には“がん療養サポートチーム”と名称を変更しています。そして2014年に緩和治療科がオープンしました。対象疾患は現在、進行肺がんと肝・胆道系、すい臓がんに限られていますが、将来的には全てのがんに対して行いたいと思っています。

また自由参加の“健康教室”では、抗がん剤治療を受けている患者さん向けのケア・メイク指導も行っています。皮膚などに出た副作用の隠し方、あるいは頭髪脱毛に対する対策などを提供しQOL(生活の質)の向上を促すという取り組みです(※新型コロナウイルスの流行により一時休止中)。

2016年には、循環器内科が腫瘍循環器外来を始めました。抗がん剤による心臓や血管への悪影響を早期に発見し、適切に対処します。

昨今、がん患者さんおける、抗がん剤が原因と考えられる心臓病が注目されるようになりました。これは腫瘍循環器学に基づいた了見です。診療だけでなく、学会にも積極的に症例を報告し、この学問領域をけん引できるよう努めています。

当院は急性期病院でありながら、救急の患者さんや高度な医療を必要とする患者さんに限らず、日々来院される外来患者さんの診療も行っています。これを可能にするため、常に十分な数の医師の確保に尽力しており現在、医師数は132名に達しました。この強みをいかして、膠原病やその中でも代表的な関節リウマチ、または神経内科の分野の難病や、それによる症状に対する医療にも力を入れています。

膠原病リウマチセンターの設立はその1例です。2010年4月に設立され、膠原病・リウマチ治療の専門施設として他診療科や近隣の医療機関と連携を取りながら、地域の膠原病・リウマチ治療に貢献しています。患者さんは近畿圏からもいらっしゃいます。

神経内科でも、治療の難しい不随意運動を幅広く診療しています。目が開かなくなる眼瞼痙攣(がんけんけいれん)、顔が半分だけひきつる片側顔面痙攣(へいそくがんめんけいれん)、首をまっすぐに保てない痙性斜頚(けいせいしゃけい)脳卒中の後遺症で手や足が拘縮してしまう上下肢痙縮(じょうかしけいしゅく)などを診療しています。

院内カンファレンスの様子

当院は、2024年4月より兵庫県からへき地医療拠点病院の認可を受け、へき地医療にも力を入れて取り組んでいます。現在、宍粟市と協定を結び宍粟市国民健康保険波賀診療所へ週に2回の医師派遣を行っています。へき地医療には、医師不足の地域への医療提供と、その地域の住民の健康を守るという大きな目的があります。それと同時に次世代を担う医師が、総合診療の能力を養い、病気ではなく患者さん自身をみる“心”を育てるうえでも重要な取り組みだと考えています。

当院は2011年に地域医療支援病院の指定を受けています。

地域医療連携センターでは、地域医療講演会や地域医療連携交流会などを開催しています。珍しい点としては、訪問看護師とケアマネジャーさんの交流会もあることが挙げられます。この交流会には、病棟看護師も参加が可能です。

当院の目指すところは、“困ったときに頼りにされる病院”です。かかりつけ医の先生や地域の皆さま、いずれにとってもそのような存在でありたいと願っています。そのために、かかりつけ医の先生から対応を依頼された患者さんは可能な限り断りません。まず当院に搬送いただき診断します。そのうえで転院が必要ならば、当院が責任をもって手配します。患者さんが直接電話をくださり、ご相談を受けた場合も同様です。もちろん前提として、一定レベル以上の医療を提供できる能力は必須です。このような理念のもと、当院は日々研鑽を積んでおります。

*診療科、医師数、病床数、提供する医療の内容等についての情報は全て、2024年6月時点のものです。

受診について相談する
「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。
    実績のある医師をチェック

    Icon unfold more