岐阜赤十字病院は、1923年に岐阜県金町にあった日本赤十字社岐阜支部に、木造平屋造りの常設救護所を開設したのがはじまりです。1927年には岐阜診療所、1943年には岐阜赤十字病院に名称を変更しました。岐阜市大空襲で診療所が消失した際には、すぐに再建に取り掛かり戦後復旧時の医療へ貢献しました。急造であったため、老朽化が早かった病棟の新築移転などを経て、病院の近代化と設備の拡充を続けながら現在に至ります。
2013年に設立90周年を迎えた同院は、救急医療を中心に地域に根差した医療を実践しながら、岐阜赤十字病院ならではの強みを持つことに注力しています。
同院の取り組みや現状について、院長である中村重徳先生にお話を伺いました。
※この記事は、2019年6月時点の事実に基づいて記載されています。現在とは状況が異なる場合があります。
当院の職員は、東海大学医学部付属病院が開発した入退院フローの統合管理を行うペイシェント・フロー・マネジメントの講義を受け、その後2012年に正式にペイシェント・フロー・マネジメントのシステムを導入しました。
このシステムでは、スタッフが患者さんの情報を入院前から把握しておき、入院から退院後のケアまでを一貫してマンツーマンで受け持ちます。そうすることで、患者さんの不安感の軽減などのメリットがあります。また、入院前にこれまでの病歴や栄養状態、手術に適さない薬を服用していないかどうかのチェックができるなど、導入前にはフォローできなかった部分もカバーできるようになり、非常にメリットを感じています。
地域の救急医療・急性期医療を担う病院のひとつとして、内科や外科、精神科、リハビリテーション科など、さまざまな診療科を設置しています。また、特徴ある診療科と外来を充実させることを目指し、日々診療に取り組んでいます。
当科では、目の打撲や外傷、網膜剥離に対する治療など、眼科の救急医療の提供を行っています。患者さんは、二次医療圏の枠を越えて岐阜市外からお越しいただくこともあります。
白内障の手術に関しては、全身麻酔が必要な場合など、地域の診療所では対応が困難と判断された患者さんの紹介も受けています。
そのほかにも、硝子体注射、網膜硝子体手術、角膜移植や角結膜・眼形成の手術などの実施にも積極的に取り組んでいます。
地域の眼科医療の拠点となれるよう、常に情報と設備のアップデートに努めています。
当科では、ウロネギ外来を開設しています。ウロギネというのは、ウロ(Urology:泌尿器科)、ギネ(Gynecology:婦人科)を組み合わせた造語で、骨盤臓器脱や尿もれなど、泌尿器科と産婦人科双方の領域に係る病気のことを意味します。
そうした疾患に対し、以前は泌尿器科で診療を行っていましたが、女性の患者さんから「どの診療科を受診したらよいかわからない」「泌尿器科を受診するのは勇気がいる」といった声を受けて、2013年からはウロギネ外来を開設して診療にあったっています。
待合室は女性専用であり、患者さんが安心して受診できるように配慮しています。
また、大学病院や各地域の中核病院に対して、ウロギネ外来の体制づくりや手術の指導などを行っています。ウロネギ外来を広めることで、日々の生活の質が向上し救われる患者さんが少しでも増えることを目指しています。
当科では、主に良性の甲状腺腫瘍と甲状腺機能亢進症(バセドウ病)に内視鏡手術(内視鏡補助下または完全内視鏡下)を導入しています。内視鏡手術は、従来の外科手術よりもメスを入れる範囲を小さく抑えた低侵襲治療であり、患者さんの負担軽減と早期回復を期待できます。甲状腺がんに対しても導入予定です。腫瘍の種類や大きさにより、内視鏡手術が適応対象とならない場合もあるため、患者さんと医師とがよく相談したうえで、可能な限り患者さんの希望に沿った、過不足ない治療の実施に尽力しています。
内視鏡検査を導入し、可能な限り患者さんの体の負担が少ない検査の実施に力を入れています。当科では、食道・胃・十二指腸などを検査する上部消化器内視鏡検査と、大腸を検査する下部消化器内視鏡検査を行っています。また、内視鏡科との連携のもと、患者さんの負担軽減に努めた細径内視鏡やカプセル内視鏡を使用した内視鏡検査にも対応可能です。
また、ピロリ菌外来を開設していて、ピロリ菌に感染しているかどうかの検査や治療、特に除菌治療では一次除菌、二次除菌でも除菌効果が見られなかったかった患者さんに対する診療を行っています。
当院には日本ヘリコバクター学会認定のピロリ菌感染認定医が在籍し、より専門的な診療の実施に尽力しています。
当院は、厚生労働省が推進する地域医療支援病院制度の地域医療支援病院に指定され、地域の開業医の先生と連携して機能分化を進めています。
患者さんにはお近くの医療機関にかかりつけ医を持つことを推奨しています。普段から医師に健康について相談するようにしていただき、急性期医療や入院治療が必要な場合には、かかりつけ医の先生と相談して、当院をご利用いただけたらと思います。
また、患者さんをご紹介いただき、当院で治療して症状が改善されたら、またご紹介元の病院にかかっていただく逆紹介も積極的に行っています。
かかりつけ医の先生方には、以前は電話や手紙で挨拶を行っていたのですが、やはり丁寧なコミュニケーションが大切だと考え、現在は直接お伺いして顔の見える連携に努めています。
当院では、「看護師のホスピタリティ」に誇りをもっています。看護師が親切で、ホスピタリティにあふれた頼れる存在だということです。知識や技術は看護の品質を決める重要な要素ですが、もっとも大切なのはやはりホスピタリティだと思っています。
当院の看護師には、ホスピタリティを第一にした看護実践はもちろん、地域医療連携事業を中心に経理面や病床の管理、救急車の管理など病院の運営にも関わってもらっています。各病棟の看護師長はとても頼もしい方々ばかりで、経営面でも非常に頼りにしています。
今後は、認知症に対する医療やサポートにも注力していこうと考えているため、日本看護学会認定の認知症認定看護認定看護師を増やしていきたいと考えてます。
医師として研究意識を持って勉強し続けると、それが長いあいだ積み重なって、自己研鑽につながります。当院の医師も、自身の専門分野に関して人の何倍も勉強し、常に研究マインドを持って診療にあたってほしいと思います。そして、自身の経験を形に残すべく、論文作成にも尽力してもらいたいと思っています。
私は、2018年と2019年に各1編、論文を発表しました。67歳にしてはじめて日本骨粗鬆学会の骨粗鬆症認定医の資格も取得しました。また、医師は経営に関して学ぶ機会がなかなかないため、院長になるにあたって、また今もなお勉強を続けています。
今後もスタッフ一同、日々研鑽を重ね、救急医療を中心とした地域医療を提供しながら、新しい医療にも挑戦し続けていけたらと考えています。地域の皆さんには、今後ともぜひ応援いただけますと幸いです。