院長インタビュー

患者さんの体への負担が少ない治療を実践─荒尾市民病院の取り組み

患者さんの体への負担が少ない治療を実践─荒尾市民病院の取り組み
勝守 高士 先生

荒尾市民病院 院長

勝守 高士 先生

目次
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荒尾市民病院は、熊本県荒尾市で急性期医療の提供を行っている病院です。外科手術の際は、患者さんの体への負担が少ない医療の提供に努め、患者さんに寄り添った医療を職員全員が心がけています。 同院の提供する医療や、2023年に予定している新病院の開院に向けた取り組みについて、同院院長の勝守 高士(かつもり たかし)先生にお話を伺いました。

当院は、東京第二造兵廠(ぞうへいしょう)荒尾製造所の診療所として、1941年に創設されました。1945年には、荒尾・大牟田両市共立病院として、荒尾市に隣接する福岡県大牟田市と共に病院の運営を開始しました。県をまたいだ共立病院は、当時でも珍しかったと思います。1949年には荒尾市立病院と機構を改め、1959年には荒尾市民病院と改称して地域医療の提供を始めました。大牟田市とは行政が異なりますが、共に三池炭鉱の街として発展してきた歴史があります。医療の面でも、互いに協力しながら地域医療の提供に尽力しています。

荒尾市民病院 外観
荒尾市民病院 外観

2019年現在、当院では新病院の設計が進んでいます。手術室や内視鏡室を増設し、急性期医療を提供する環境をいっそう充実させる予定です。たとえば、心臓カテーテル室は2部屋備えて、その内の1室は手術室内心臓脳血管カテーテル室にしたいと考えています。手術室内にカテーテル室を設けることで、虚血性心疾患などの患者さんに対し、迅速にカテーテル検査や治療を提供できる体制を築くことができます。

このほか、多くの患者さんに迅速な診療ができるよう、内視鏡室も増設する予定です。内視鏡室は、下血や吐血により救急搬送された患者さんへの迅速な対応が必要なため、救急外来の近くに設置することを考えています。さらに、緊急手術が必要な患者さんが素早く手術室に入室できるよう、内視鏡室の近くに手術室を設置する予定です。このように病院の各部署の配置を工夫することで、救命率のさらなる向上につなげたいと考えています。

当院は、地域の急性期医療を担い、365日24時間体制で救急患者さんの受け入れを行っています。入院治療が必要な二次救急の患者さんを受け入れることが多く、患者さんの状態や診療科によっては、集中治療室での治療が必要な三次救急の患者さんも受け入れています。また、救急科の専従の医師が在籍しているため、スムーズに各診療科へ診療を引き継ぐことができます。

手術の様子
手術の様子

外科では、消化器がん乳がん肺がん甲状腺がんなどの治療を実施しています。なかでも、消化器がんの食道がん胃がん大腸がんでは、内視鏡的切除や腹腔鏡下手術を導入し、患者さんの体の負担が少ない治療の提供に努めています。

当科で腹腔鏡下手術を行うようになったのは、私が外科医師として初めて腹腔鏡下手術を目の当たりにした際、感銘を受けたことがきっかけでした。開腹手術と比べて傷跡が小さく、患者さんの体の負担が減らせるということにも驚きましたが、特に、腹腔鏡の拡大視効果により精度の高いリンパ節郭清ができる点に感動しました。

当院では、腹腔鏡下手術を導入したことをはじめ、病院全体で患者さんの体の負担が少ない治療の提供に努めています。

放射線治療科では、2012年に放射線治療センターを開設しました。当院は、がん診療連携拠点病院に指定されており、がん治療において、外科手術や抗がん剤治療だけでなく、放射線治療も実施しています。放射線治療は、患者さんの体への負担が少ないといわれており、治療後もそれまでとあまり変わらない生活を送ることも可能な治療法です。当科では、がんの進行に合わせて、適切な治療方法を提案いたします。

地域医療構想の実現に向けた取り組みが進められるなかで、荒尾市は地域の医療機関と連携が取りやすい環境だと思います。当院は、地域の高度急性期と急性期の医療を担っており、急性期治療が一段落したあと、在宅復帰が可能な患者さんの普段の診療については、地域のほかの医療機関が担っています。また、在宅復帰に不安が残る患者さんには、当院で回復期リハビリテーションをできる限り行い、その後ご自宅に戻れるように調整しています。当院と地域の医療機関は以前から交流があり、長年にわたって培ってきた信頼関係が現在の医療連携につながっているのだと感じています。

今後も、地域の医療機関との連携を強化し、急性期医療から回復期リハビリテーション、慢性期医療まで、スムーズに医療を受けられる体制を整えていきます。

当院では、小児医療に力を入れていきます。そして、以前から出産にも対応していることもあり、妊婦さんと赤ちゃんに関わる周産期医療の充実につなげたいと考えています。荒尾市への移住を考えている子育て世代の方などは、荒尾市の教育や医療に関心を持っていらっしゃることと思います。若い世代が安心して生活することができる町づくりにも貢献していきますので、妊娠や出産のことをはじめ、気になることがあれば遠慮なくご相談ください。

荒尾市民病院の職員は、患者さんに寄り添った医療の提供、接遇を心がけています。また、当院は、地域の高度急性期医療、急性期医療を担う病院として、地域にお住まいの方々に必要とされ、信頼される病院づくりに励んでいます。医療は日々進歩しており、日本では、医療分野におけるロボットの活用や、人工知能(AI)の研究開発も進んでいます。そういった新しい技術や知識を常に取り入れることを心がけ、地域の方々が安心して生活していただけるよう充実した医療の提供に努めていきます。

カンファレンスの様子
カンファレンスの様子

若手医師には、患者さんの立場になって考える診療を大切にしてほしいと思っています。また、専門性を絞りたいと考えている若手医師も多くいらっしゃると思いますが、近年の高齢化の影響や、地域医療構想を踏まえて対応していくためには、自分の専門分野を持ちながら患者さんの全身を診療する力が求められます。医学に関する知識を常にアップデートしていける医師を目指して、医師になってからも勉強を続けていってください。

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