院長インタビュー

医療を求める全ての方のため国際的に活躍する、国立国際医療研究センター病院

医療を求める全ての方のため国際的に活躍する、国立国際医療研究センター病院
宮嵜 英世 先生

国立国際医療研究センター病院 病院長/泌尿器科 診療科長/第一泌尿器科 医長

宮嵜 英世 先生

目次
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国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院(以下、国立国際医療研究センター病院)は東京都新宿区に位置する病院です。同院は、総合医療の提供により病気の克服と健康増進を通じた社会貢献を実現するため、あらゆる病気に対応できる総合病院として機能するほか、各種感染症に対する診療、医療分野における国際協力、医師をはじめとする医療従事者の育成に力を入れています。

病院長の宮嵜 英世(みやざき ひでよ)先生に、同院の変遷、診療体制、国際医療協力、医療従事者への教育体制などについて、お話を伺いました。

病院外観
病院外観

当院の歴史は、1868年に東京都日比谷に開設された兵隊仮病院からはじまります。陸軍のための病院として誕生した当院は、時代の流れに沿う形で後進の育成にも力を注いでおります。

戦後は、1945年に厚生省(当時)へ移管したことを機に、一般国民を診療する病院として新たなスタートを切ります。1974年には国立病院医療センターに改称、1993年には国立病院医療センターと国立療養所中野病院を統合して国立国際医療センターになり、国立高度専門医療研究センターの1つとして新たな役割を担うようになります。2010年には独立行政法人 国立国際医療研究センターに組織改編と国立国際医療研究センター病院への改称を行いました。そして、2015年4月に国立研究開発法人に移行して、現在の姿となりました。

当院は、がん脳卒中心疾患など予防と治療が国民的課題とされている病気を扱う国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)の1つです。さまざまな病気に対する総合的な診療、医療分野における研究開発、医療従事者の育成の3点を主な業務としています。

同時に、当院は医療分野において国際貢献にも取り組んでいます。開発途上国から医療従事者を研修生として当院に招待するほか、当院のスタッフが海外に出向き現地スタッフを教育するなど、国際的な医療活動を実施しています。

また、当院は外国人の患者さんを診療する機会が多く、受け入れ体制が整備されていることが評価され、2015年に日本医療教育財団よりJMIP (Japan Medical Service Accreditation for International Patients:外国人患者受入れ医療機関認証制度)認証を受けています*。さらに2017年には渡航受診者を積極的に受け入れている病院として「日本国際病院(ジャパンインターナショナルホスピタルズ)」にも推奨されています*

*2024年10月時点

カンファレンスの様子
カンファレンスの様子

当院はナショナルセンターで唯一の総合病院として医療を提供しています*。当院では特に、感染症、糖尿病や代謝性疾患などの慢性疾患、の診療に注力しています。

各診療科では、医師をはじめとするスタッフがそれぞれ専門性を発揮しています。また、診療科間の垣根が低く、交流も盛んで多職種連携が円滑に行われていることから、合併症を発症しているなど単独の診療科では対応に難渋する症例にもスムーズに対応しています。このように、総合病院でありながら複数の領域で一定以上の専門性を有していることと医療に携わるスタッフの関係が良好なことは、当院の診療体制をご紹介するうえで特筆すべきことです。

*2024年10月時点

 
カンファレンスの様子
カンファレンスの様子

当院では、国際感染症センターとエイズ治療・研究開発センターが中心となり、国際規模での調査研究と対策が必要な国際感染症に対する診療、予防、教育、研究を行っています。

国際感染症センターは2012年5月に設置された部門です。同センター内の国際感染症対策室では国内外で生じた感染症の情報収集、同じく同センター内にあるトラベルクリニックでは健康相談とワクチン接種、同じく総合感染症科では国際感染症が疑われる患者さんに対する診療が主な業務です。当院は特定感染症指定医療機関の指定を受けており*、新型感染症が疑われる患者さんの入院治療が可能な設備を有しています。

エイズ治療・研究開発センターは、HIVおよびエイズ診療のシステム均てん化と診療レベル向上を目的として1997年4月に開設されました。HIV感染およびエイズ発症件数の増加は世界的に深刻な問題として認識されています。同センターは、新しい治療方法の研究開発とアジア諸国との共同研究により、エイズ診療でも国際的に貢献しています。

*2024年10月時点

糖尿病1型糖尿病2型糖尿病で発症原因が異なることから、適切な治療とコントロールが必要です。特に2型糖尿病は生活習慣が発症や病気の進行に影響します。糖尿尿病内分泌代謝科と糖尿病・肥満外来が連携して、外来診療、教育入院、治療入院を行っています。栄養指導などのアドバイスも可能です。

糖尿病治療では食事療法や運動療法が効果的とされています。しかし、生活習慣の見直しや内服薬による治療を行ったものの改善がみられない患者さんや一定条件を満たす患者さんに、肥満治療の一環で肥満外科手術による減量をご案内する場合があります。

また、国立国際医療研究センター内に設置される糖尿病情報センターでは、糖尿病について詳しく知りたい方に向けて情報発信をしています。

世界に目を向けると、誰もが十分な医療を受けられない国や、予防や治療が可能な病気で亡くなる方が多い国が、多数あります。国際医療協力局が中心となり、医療面での国際協力を進めています。

国際医療協力局は1986年に設置された部門で、日本における医療を通じた国際協力の拠点として活躍しています。国際医療協力局では、国際医療協力を行ううえで重点的に取り組むテーマを母子保健、疾病対策、保健医療人材の育成、医療の質向上、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ*の5分野に定めました。それぞれに対して30年以上にわたって蓄積してきたノウハウを活用することで、効率と効果を念頭に置いた支援活動を行っています。

全ての方が必要な医療を受けられ健康に暮らせる世界にするため、グローバルヘルスケアの専門機関として、厚生労働省をはじめとする関係機関と連携しながら、開発途上国への国際医療協力に努めていきます。

*「持続可能な開発目標(SDGs)」のターゲットの1つ。全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられること。

当院は国際感染症、HIVおよびエイズ診療、糖尿病治療を担う病院として知られていますが、ほかの診療科にも各領域で活躍する医師が在籍し、臨床研修医・研修歯科医を受け入れています。臨床研修指導医をはじめ先輩医師は後進育成や手技向上に熱心な人が多く、診療技術や患者さんとのコミュニケーション方法など医師の基礎を学べる環境が整っています。診療科間やスタッフ間の関係性も良好で、診療科の壁を越えた連携やさまざまな医療のあり方を経験することも可能です。

また、臨床研究、国際医療協力、医療行政にも深く関わっていることから、診療分野以外でのキャリアパスも形成可能です。多くの若手医師に、医師人生のスタートを当院で迎え、多くを学んで、将来の可能性を広げていただきたいと考えています。

当院は6拠点あるナショナルセンターで唯一の総合病院として、43の充実した診療科     を備えています*。2025年4月には国立感染症研究所と合併し、国立健康危機管理研究機構という新機構になります。新機構JIHS(Japan Institute for Health Security)は国内の“感染症総合サイエンスセンター”となる予定です。当院はその一部門として、平時は専門性の高い総合医療を提供し、有事には感染症対応や救急医療、集中医療、災害医療などに取り組みます。

一方で、当院は東京都区西部医療圏の新宿区、中野区、杉並区の方を中心に広く患者さんを受け入れています。救命救急センターには年間1万台以上の救急車搬送(2010年4月~2024年3月の救急搬送件数)があり、地域医療に貢献しています。地域にはさまざまな合併症を抱えた高齢の患者さんも多くいらっしゃいます。こうした地域のニーズに応え、質の高い総合診療を提供できるように引き続き努めてまいります。

*2024年10月時点

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